- シリーズ発刊に寄せて
- はじめに
- 第1章 学級経営の基礎・基本と高学年の学級経営
- 1 学級経営の鉄則
- 1 授業成立の十分条件
- 2 学びの3要素
- 3 学級の機能を高める手順
- 2 高学年という発達段階
- 1 難しいお年頃
- 2 高学年担任のリーダーシップ
- 3 高学年の学級経営のポイント
- 第2章 4~5月 高学年が動き出す! 環境・かかわり・システムの仕掛け
- 1 どんな教室にしたらいいの?
- 1 子どもが落ち着く教室環境とは ―居場所をつくる―
- 2 子どもが動く教室環境にするには,動線が重要!
- 3 掲示板づくりは短時間で効果的に!
- 4 子どもを迎える黒板で,期待と安心感を演出!
- 2 反発されずなめられず高学年とつながるには?
- 1 自己紹介で何を話す ―担任となった喜びを話す―
- 2 学級開きで何をする ―担任の価値観を伝える―
- 3 朝の会で何を育てる ―子ども同士のつながり・主体性―
- 4 授業態度をどう指導する ―ほめる叱るの効果的な使い方
- 5 帰りの会で何を伝える ―児童理解で信頼を得る―
- 3 リーダー性を育てたい!と思ったら
- 1 めんどくさがる子がいたら ―得意を生かせる仕事をつくる―
- 2 下学年とかかわれない子がいたら ―感謝される場面をつくる―
- 3 指示待ちの子がいたら ―目的を伝え方法を考えさせる―
- 4 主体的に動いてほしい!と思ったら
- 1 係活動を動かすには ―当番活動とイベント活動―
- 2 好循環を生み出すには ―自由に使える時・物・場―
- 3 給食当番を意欲的に行うには ―チ―ムになって働く―
- 4 話を聞けるようにするには ―振り返りとフィ―ドバックで定着―
- 5 掃除をしない子がいたら ―その子だけの持ち場を与える―
- 6 学力差が大きかったら ―自分の課題をもつ―
- 7 話し合い活動を活発にするには ―方法と価値を伝える―
- 8 自習ができないと感じたら ―自治を意識した学級づくり―
- 9 授業参観で困ったら ―かかわりのある授業で子どもたちを見せる―
- 5 子どもの反発を感じたら
- 1 やらされ感が強かったら ―できる力を信じて任せて頼る―
- 2 禁止に反発してきたら ―超えてはいけない枠を示す―
- 3 学級が荒れたら ―思いを吐き出せる場をつくる―
- 4 しらけていると感じたら ―失敗を恐れているのは教師―
- コラム1 「牧場主に,俺はなる!!!!」
- 第3章 6~7月 ピンチはチャンス! トラブルを乗り越えて集団は成長する
- 1 トラブルで困ったら
- 1 人の目が気になる子には ―言葉を交わす機会を増やす―
- 2 友達に合わせて苦しむ子には ―別行動を取る勇気を後押しする―
- 3 強固なグル―プ関係には ―否定せず学習活動では解体―
- 4 強固な上下関係には ―効果を発揮する教師の独り言―
- 5 喧嘩が起きたら ―謝罪より大切なのは折り合いをつけること―
- 6 いじめが起きたら ―行為のみを毅然と否定する―
- 7 登校渋りが出たら ―保護者の不安を聞きに行く―
- 8 SNSのトラブルには ―face to faceの価値を知る―
- 2 活動が停滞していると感じたら
- 1 係活動を見直す ―相互評価とイベントで巻き返し―
- 2 教室環境を見直す ―子どもの成長に合わせて軌道修正―
- 3 授業を見直す ―体を使う―
- 3 課題を成長につなげて夏休みに入るには
- 1 保護者会でどう話す ―子どもの課題を成長過程として伝える―
- 2 夏休みの宿題は何のため? ―追究する力・自主性・計画性―
- 3 通知表での伝え方 ―結果より過程,事実より解釈を―
- 4 夏休み前日の担任の話 ―なんだかんだでみんな好き―
- コラム2 その行動,点で見るか,線で見るか
- 第4章 9~10月 多忙感と充実感の分かれ道! 体の前に心を動かす
- 1 行事に向けた指導をどうするか?
- 1 持久走大会に向けて ―昨日の自分がライバル―
- 2 音楽会に向けて ―イメ―ジを共有して気持ちを高める―
- 3 作品展に向けて ―タイトルに思いを込める―
- 4 児童会祭りに向けて ―条件やル―ルを先出しする―
- 2 行事で学習がおろそかになってきたら
- 1 落ち着きがなくなってきたら ―動と静のバランスをとる―
- 2 教室が汚くなったら ―出し入れしやすい臨時BOXで整頓―
- 3 行事の後の○○
- 1 ほめ方で困ったら ―三角ほめは効果絶大―
- 2 行事作文で困ったら ―書くことで自覚を促すためのもの―
- 3 学級通信で困ったら ―裏話で保護者は子どもを2度ほめる―
- 4 気持ちの切り替えで困ったら ―翌日からガラッと違う風景―
- コラム3 目玉が転がる教室
- 第5章 11~12月 行事ロスへの突破術! 心と頭の充実期
- 1 心と頭を使う活動って?
- 1 学習が苦手な子の意欲を継続する話
- 2 室内遊びのアクティビティ ―心を使って協力体験―
- 3 授業でできるアクティビティ ―頭を使って楽しい体験―
- 4 体育館での学級イベント ―頭と心を使って楽しむ学習―
- 2 さらに高める方法が見えないときは
- 1 対話が深まらないと思ったら ―質問力を高める―
- 2 学級満足度が上がらないと思ったら ―聞く力を見くびるな―
- 3 保護者と協力体制を築くには
- 1 学級経営を見せるには ―参観で認め合う活動を見せる―
- 2 子どもをほめても喜ばれないときは ―保護者の願いを理解する―
- 3 マイナス面を伝えるときは ―困っているのは子どもととらえる―
- 4 保護者に相談を受けたら ―不安に共感し,不満に共感しない―
- コラム4 ミシンの授業は学級状態のバロメーター?
- 第6章 1~3月 次年度への助走! 新体制でも生かせる力にしていこう
- 1 育った力を本物にするには
- 1 委員会活動で力を生かすには ―変化を起こす活動を―
- 2 学級の企画で力を生かすには ―全校を巻き込むイベントを―
- 2 学習のまとめをどうするか
- 1 学んだことを活用するなら ―合科的に進める―
- 2 学んだことを発信するなら ―プレゼンをする―
- 3 学んだことを追究するなら ―レポ―トを作成する―
- 4 学んだことを振り返るなら ―感謝の会を開く―
- 3 未来へのエネルギ―を高めるには
- 1 自分の成長に気付くには ―今より過去に目を向ける
- 2 互いのよさを伝えるには ―全員が伝えてもらえる保障をする
- 3 このクラスでよかったと思うには ―仲間であることに誇りをもつ―
- 4 学年末で時間がない! ―準備30分で最高の学活―
- コラム5 こんな働き方改革,どうですか?
シリーズ発刊に寄せて
この本を手に取った方は,おそらく次のどちらかでしょう。
○今現在,学級経営に困っていることがある。
○もっと,学級を良くしたいと思っているが,具体的な方法がわからない。
本書は,そんな2つの願いをどちらも叶えます。
私は,上越教育大学という教員養成を行う大学の教職大学院で,これから教壇に立つ教師を育てることと現職教員の能力の再開発にかかわる一方で,全国の自治体や研究会からご依頼をいただき,各地で教員研修を担当させていただいています。
ある講座の後,一人の参加者の方から声をかけられました。
「私たちの学校は,子どもたちの学習意欲の向上,全員参加ができる授業づくりを目指して,これまで発問や指示,課題提示の工夫に取り組んできました。
しかし,近年,授業に入ってこられない子,ついてこられない子が確実に増えてきています。今日の先生の講座をお聞きして,その原因がわかりました。つまり,そういうことだったのですね」
その方は,ある学校の管理職の先生でした。そちらの学校では,学力向上のねらいの下に,ずっと授業改善をテーマに校内研修を進めてきたそうです。しかし,それにもかかわらず,ここ数年,授業に参加できない子どもたちが確実に増えてきており,魅力的な教材,ネタを用意して,発問や指示を工夫しても,目に見える成果が現れなかったと言います。
ここに横たわる問題は,何だったのでしょうか。
そう,それが,学級経営の問題です。学級経営というと「ああ,学級づくりのことね」と思われるかもしれませんが,学級経営と学級づくりは,異なります。しかも,近年の学級づくりの在り方は,それこそ,ネタや活動への比重が高まってきて,その本来の在り方を見失っているように思います。先ほどの話を思い出してください。授業においては,ネタや発問や指示の工夫,つまり,活動の工夫では,子どもたちを引きつけられなくなっているということが起こってきているのです。それは,学級づくりにおいても同じことが言えるわけです。つまり,ネタや活動だけでは,学級をまとめていくことは難しい状況になっているのです。
本書における学級経営とは,ネタや活動の羅列のことを意味しているのではありません。学習の場としての質的向上をねらった環境設計のことです。「主体的・対話的で深い学び」の実現をしようとしてみてください。不安定な人間関係の中,安心感の保障されない場所で,子どもたちはやる気になるでしょうか。そんな環境で「話し合ってごらん」と言われて,話し合いをするでしょうか。また,それぞれの気付きをつなげたり補完したりしながら,自分だけではわからなかったことに気付くでしょうか。「主体的・対話的で深い学び」は,学習環境の質に大きく依存しているのです。
本シリーズは,実際に学級経営で起こる問題場面を想定しながらQ&A形式で,具体的に学級経営の考え方と方法論を示しています。もし,ご自分のクラスで困ったことがあったら,似たようなQを探してみてください。解決のヒントが見つかることでしょう。またもし,特に困ったことがない場合は,最初から通してお読みください。そこに示されたQが,学級経営の急所となっています。そこに気をつけることで,陥りがちな危機を避けながらクラスを育てることができます。つまり,本書は,学級経営において,困っているときの「治療法」として,また,危ない場面を避けるための「予防法」として,そして,クラスを育てるための「育成法」として,3つの使い方ができる画期的な書なのです。
執筆を担当したのは,私のほか,私とともに学級経営の研究を進めてきた3人の実力者(低学年:北森恵,中学年:畠山明大,高学年:岡田順子)です。「この人たちの実践を世に出さないことは罪だ」,そんな強い思いに駆られて執筆を依頼しました。本シリーズが,みなさんの学級経営の強力なサポーターとして役立つことを確信しています。
2020年2月 /赤坂 真二
私にもマネできそうなところもあり、早速取り入れてみようと思いました。同世代の仲間にも勧めてみようと思います。