- 達人に学ぶ小5担任の学級経営5つの鉄則
- /赤坂 真二
- 第1章 これで完璧! 春休み〜新年度1週間の小5担任の全仕事
- 春休み
- 1日目
- 2日目
- 3日目
- 4日目
- 5日目
- 第2章 学級開きを成功に導く,とっておきアイデア
- 「出会いの演出」のアイデア
- 「自己紹介(活動)」のアイデア
- 「自己紹介(掲示)」のアイデア
- 「学級目標」のアイデア
- 「仲間づくり・集団づくり」のアイデア
- 第3章 年度はじめで必ず押さえたい生活・学習指導のポイント
- 「生活指導」のポイント
- 「学習指導」のポイント
- 第4章 必ずうまくいく達人の授業開きネタ
- 国語 読みにくいのはなんでだろう?
- 算数 ローマ数字を使って数を表そう!
- 理科 今日の雲は何雲かな?
- 社会 割り箸から森林資源を考えよう!
- 外国語 英語で自己紹介して友だちを増やそう!
- 道徳 解決のために大切なことを見つけよう!
- 第5章 クラスが安定する環境づくり・システムづくり
- 「教室環境」づくり
- 「座席決め」のシステムづくり
- 「日直」のシステムづくり
- 「係活動」のシステムづくり
- 「朝の会・帰りの会」のシステムづくり
- 「給食」のシステムづくり
- 「掃除」のシステムづくり
- 第6章 中だるみを見逃すな! 「魔の6月乗り切り」術
- 6月の教室の「小さな重大問題」対処法
- 梅雨の時期におすすめの「教室遊び」
- 保護者も子どもも喜ぶ! 1学期の通知表ポジティブ文例集
- 第7章 荒れ知らずでパワーアップ! 「9月のリスタート」術
- 観点別 夏休み明けのチェックポイント
- 子どもを学習モードに素早く戻す「二度目の授業開き」ネタ
- クラスがもう一度まとまるコミュニケーション・エクササイズ
- 第8章 クラスがまとまる行事指導のポイント&アイデア
- 「運動会」指導のポイント&アイデア
- 「宿泊学習」指導のポイント&アイデア
- 「社会見学」指導のポイント&アイデア
- 「学芸会」指導のポイント&アイデア
- 「作品展」指導のポイント&アイデア
- 保護者も子どもも喜ぶ! 2学期の通知表ポジティブ文例集
- 第9章 ワンランク上を目指す,学級アップグレード作戦
- 「朝学習」のアップグレード作戦
- 「係活動」のアップグレード作戦
- 「教室環境」のアップグレード作戦
- 「学級イベント」のアップグレード作戦
- 「宿題」のアップグレード作戦
- 保護者も子どもも喜ぶ! 3学期の通知表ポジティブ文例集
- 達人がズバッと解決! 小5担任の学級経営の悩みQ&A
- /鈴木 夏來
達人に学ぶ小5担任の学級経営5つの鉄則
上越教育大学 /赤坂 真二
1 リーダーシップを変換する
5年生という発達段階は,認知能力が飛躍的に向上し,今まで気づかなかったことにも気づき始めます。教師の言うことを素直に受け入れていた子どもたちも,他の大人との比較の中で教師という存在を捉え始め,教師のやることに疑問をもつ子どもたちの数が増えてくることが予想されます。特に,4年生までを教師主導のクラスで過ごしてきた子どもたちの中には,少なからず教師の姿勢に潜在的な不満を溜めてきた子もいることでしょう。
しかし,これは子どもたちの主体性の発現であり,自ら動くクラスを育てるチャンスです。だからといっていきなり子どもたちに任せるのは,望ましくありません。段階的に子どもたちに委任するようにして,最終的には子どもたちが自分たちで生活上の諸問題を解決するような自治的集団に育てるようにします。クラス集団の成長は待っていても訪れません。そうした偶然的要因に頼るのではなく,図のように「教師の指導性」と「子どもの主体性」のバランスを変えることで成長を促します。以下,その発達段階に応じた教師のかかわり方を示します。
『図(省略)』
2 一人ひとりとの基本的な信頼関係を形成する(4月)
最初はアタッチメント形成とティーチングです。アタッチメント形成とは絆づくりです。まずは,一人ひとりとの個人的信頼関係をつくります。そして,もう1つは,学級生活で必要な最低限度のことを教えることです。
今の子どもたちは,集団として扱われることを嫌います。また,高学年は学級代表や児童会の委員,行事の役員などいろいろな役職を担う機会が多くなります。しかし,それでも,「○○委員会のAさん」で認めるのではなく,まず,「Aさん個人」として認めることが大事です。
運動が得意だとか,勉強がよくできるとか,そうした姿を認めることは信頼関係の入り口としては大事ですが,不十分です。そうした表層の部分をきっかけにして,その子特有の「光るところ」を見つけ出すようにします。「努力していること」「昨日よりも伸びたこと」「頑張ろうとしたこと」「誰かの役に立とうとしたこと」などです。
また,日記帳や自学ノートなどの個人的につながるためのツールを使ったり,日常のおしゃべりなどを通したりして,共通の話題を見つけるようにします。
若い先生だったらゲームやコミックでつながることも可能ですが,ベテランの先生はその気になって見つけようとしないと難しい場合もあります。いずれにせよ,見つけようとしないと共通の話題は見つからないし,繋がろうとしないと繋がれないということです。
これらのことと同時進行で,クラスでの過ごし方を教えます。学級生活を進めるための「手順」です。
「時間を守ること」「整理整頓をすること」「教室で言っていいこと,いけないこと」「休み時間の過ごし方」「給食の配膳の仕方」「清掃の仕方」などなど,「こんなことを高学年に言わなくてはならないのか」と思うくらいのところまで,丁寧に確認しながら伝えます。
子どもたちがトラブルを起こすのは,教室で過ごす手順がわからないためです。特に学級編成替えがあったばかりのクラスはここを丁寧に行いましょう。
3 できることを増やす(5月〜7月)
4月は,教師との絆をつくるために多くの時間を割きました。ここからが学級づくり本番です。子ども同士の絆をつくっていきます。しかし,いきなり子どもたちを交流させるのは危険な場合があります。
まずは,教師がイニシアチブをとって,かかわるために必要なことを教えます。何を教えるかは児童の実態によって違うとは思いますが,コミュニケーションのルールはしっかりと教えておくようにます。
「話の聞き方」や「人を傷つけないコミュニケーションの仕方」は,どんなクラスでも必要でしょう。例えば,「話の聞き方」だったら,なぜ,このルールが必要なのか,その意図を話し(インストラクション),お手本を見せ(モデリング),子どもたちにやらせてみて(リハーサル),実際の生活の中での取組(チャレンジ)を見守り,うまくいっているところを認め,ほめます(フィードバック)。多くの教師は,インストラクションをして,チャレンジまではやらせていますが,見取りとフィードバックが甘いように感じています。
ルールの定着とは,新しい行為の獲得です。しっかりと見取って,肯定的なフィードバックを繰り返さないと定着しません。認める,ほめるなどの肯定的なフィードバックは,行動形成を促しながら,教師の信頼度を高めます。つまり,教師の指導力を高めているのです。努力を認め,それをほめてくれる教師を信頼することに説明は必要ないでしょう。逆に言えば,子どもの取組を認めない教師,ほめない教師は,日々刻々と自分の指導力を削いでいるとも言えるのです。
4 子ども同士の交流を増やす(9月〜11月)
第2段階が機能するとクラスは安定しているように見えて,教師もそこで安心してしまいがちですが,ここで手を抜くとクラスは停滞に向かいます。教師と子どもの信頼関係は,子ども同士の信頼関係を形成するためのきっかけや触媒に過ぎないと自覚することです。クラスを安定させるには,教室内のコミュニケーション量を増やすことです。つまり,子ども同士の交流の機会を増やすのです。
そのためには,ペア学習やグループ学習や学び合いや教え合いの活動は有効です。教師のリーダーシップは,説得的に教えるインストラクションから,促しや気づきをもたらす,ファシリテーションやコーディネーションに移行します。子ども同士の交流で大事なのは,活動のあとの振り返りです。活動前に意図をしっかり伝え,子どもたちの行動や気づきを,ねらいにそって,いかに意味づけることができるかが教師の腕の見せ所となります。
この段階での学級状態は,教師の構成した課題をクリアしている段階ですので,課題解決集団です。また,9月は長期休業で,子どもたちの学びがリセットされている可能性があります。もし,そうした状況が見られたら適宜,ルールを確認するといいでしょう。
5 自治的活動にチャレンジする(11月〜3月)
自ら成長する集団としては,自治的集団が望ましいです。自治的集団とは,自分たちの生活上の諸問題に自ら気づき,解決する集団のことです。「問題の発見」「課題の整理」「話し合い(解決策の発散と収束)」「解決策の決定」「振り返り」の問題解決サイクルを協働的に回す力をもっている集団です。
多くのクラスがそこに挑戦しながら行きつかないのは,教師が話し合いの完成度にこだわりすぎているからです。話し合いは,70点程度でも,話し合ったことによって,生活実態が変わったら,次からの話し合いは本気になります。
まず,成功体験を味わわせることです。話し合いによって「変化」の実感をもたせることです。この段階での教師のリーダーシップは,コーチングとサポートです。答えは子どもたちに考えさせます。子どもたちが行動プランを決めたら,教師は見守り,達成を応援し,勇気づけます。
よい学級は偶然にはつくられません。意図的,計画的に育てるものです。それを実現するのは,教師の確かなビジョンとそれに基づく一貫した指導なのです。
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