- まえがき
- 本書の特長と使い方
- Chapter1 英語で話す力を鍛える!ダイアローグ・トレーニング
- 1 「話すこと[やり取り]」の重要性
- 2 「話すこと[やり取り]」を取り入れた授業のポイント
- 3 日常的に英語で「やり取り」することによる成果
- 4 効果的な「ダイアローグ」作成のポイント
- 5 「ダイアローグ・トレーニング」活用のバリエーション
- 6 中学校英語のほぼ全ての言語材料に対応した「ダイアローグ」
- Chapter2 中学1年のダイアローグ・トレーニング
- 1 【I’m 〜. / You’re 〜.】外国人になって自己紹介しよう!
- 2 【I’m 〜. / You’re 〜.】自分の性格を伝え合おう!
- 3 【Are you 〜? / I’m not 〜.】あなたはどんな動物?
- 4 【Are you 〜? / I’m not 〜.】世界中を旅するあなたは,今どこに?
- 5 【This is 〜.】趣味から持ち物を言い当てよう!
- 6 【This is 〜.】友だちに本をプレゼント
- 7 【He is 〜. / She is 〜.】友だちの友だちとつながろう!
- 8 【He is 〜. / She is 〜.】海外のペンパルについて話そう!
- 9 【一般動詞 / do, don’t】好きな食べ物と飲み物で会話をつなごう!
- 10 【一般動詞 / do, don’t】好きなのに持ってないの?
- 11 【複数形】文房具屋さんと野菜屋さん
- 12 【複数形】ハンバーガーショップで
- 13 【How many 〜? / any】いくつ持ってる?何匹飼ってる?
- 14 【How many 〜? / any】筆箱の中身を整えよう!
- 15 【疑問詞what(be動詞)】趣味に合ったプレゼントができるかな?
- 16 【疑問詞what(be動詞)】近くのレストランで昼食をとろう!
- 17 【疑問詞what(一般動詞)】誕生日に欲しいプレゼントを聞き出そう!
- 18 【疑問詞what(一般動詞)】友だちの生活状況調査をしよう!
- 19 【疑問詞what(一般動詞)】おむすびとパンを売り歩こう!
- 20 【疑問詞what(一般動詞) / What kind of 〜?】相手の好きなことをくわしく知ろう!
- 21 【三単現 〜s / does, doesn’t】先生たちのこと,どれくらい知ってるかな?
- 22 【三単現 〜s / does, doesn’t】その公園にはどんな遊具があるの?
- 23 【疑問詞who】外国人に日本の有名人やキャラを紹介しよう!
- 24 【疑問詞whose】招待されたお家で見つけた素敵な物
- 25 【What time 〜?(be動詞)】君のいる場所は今何時?
- 26 【What time 〜?(一般動詞)】起床時刻と就寝時刻を比べよう!
- 27 【疑問詞which(be動詞)】見て,見て!新しい物を買ったよ!
- 28 【疑問詞which(be動詞・一般動詞)】モーニングセットでポイントをためよう!
- 29 【疑問詞when(be動詞)】誕生日から話題をつないでいこう!
- 30 【疑問詞when(一般動詞)】帰宅後の生活はどんな感じ?
- 31 【疑問詞where(be動詞)】サッカーの試合,どこから観戦する?
- 32 【疑問詞where(一般動詞)】近くに住んでいる人,どれだけいるかな?
- 33 【代名詞(目的格)】交換留学生に先生のことを紹介しよう!
- 34 【代名詞(目的格)】素敵なポストカードだね!
- 35 【現在進行形】ずっと待ってるのに,何してるの?
- 36 【現在進行形】あれ?大変だ!あの機材がないぞ!
- 37 【命令文】道案内,できるかな?
- 38 【命令文】教育相談で適切なアドバイスをしよう!
- 39 【助動詞can】外国人に漢字の読み方と意味を教えよう!
- 40 【助動詞can】留学先で学校のルールを聞いてみよう!
- 41 【一般動詞(過去形)/ did, didn’t】この前の日曜日は外出した?
- 42 【一般動詞(過去形)/ did, didn’t】睡眠時間の調査をしよう!
- Chapter3 中学2年のダイアローグ・トレーニング
- 43 【be動詞(過去形)】どんなことをしたの?その感想は?
- 44 【過去進行形】電話したのに…何をしてたの?
- 45 【未来形】旅行のパートナーを見つけよう!
- 46 【未来形】週末の予定はどんな感じ?
- 47 【未来形】君は入国審査の秘密捜査官
- 48 【SVOO(目的語が2つある文)】見せてほしい人と貸してほしい人
- 49 【SVOO(目的語が2つある文)】同じカードのコレクターになろう!
- 50 【to 不定詞(副詞的用法)】何をするためにそこへ行くの?
- 51 【to 不定詞(副詞的用法)】あの場所で君を見かけたよ
- 52 【to 不定詞(名詞的用法)】希望のレストラン,近くにあるかな?
- 53 【to 不定詞(名詞的用法)】あなたのその趣味はいつから?
- 54 【to 不定詞(形容詞的用法)】様子がおかしいけど,大丈夫?
- 55 【to 不定詞(形容詞的用法)】どうして無理なの?いっしょに解決しよう!
- 56 【have to / don’t have to】君が通っているのはどのハイスクール?
- 57 【助動詞must / mustn’t】緊急にクライアントのところまで
- 58 【接続詞that】フリーマーケットの品物に値段をつけよう!
- 59 【接続詞that】来月,校外学習に行くらしいよ!
- 60 【接続詞when】それなら今度,いっしょにやろうよ!
- 61 【接続詞when】君が探している物,見かけたよ!
- 62 【接続詞if】どんな天候でも,いっしょに遊ぼうね!
- 63 【接続詞because】先生にこんな言い訳,通用するかな?
- 64 【There 〜構文】友だちと絵のセンスを比べ合おう!
- 65 【There 〜構文】一人暮らしのいい部屋が見つかるかな?
- 66 【動名詞】学級委員長として,先生と日程の確認をしよう!
- 67 【動名詞】健康診断の問診
- 68 【比較(比較級の基本)】所要時間と料金,どちらを優先して乗る?
- 69 【比較(最上級の基本)】家電量販店でノートパソコンを販売しよう!
- 70 【比較(more, the most)】あなたにとって大切なものは何?
- 71 【比較(better, the best)】友だちはどんな順位をつけるかな?
- 72 【比較(as 〜 as …)】同じくらいだから選べないよ
- 73 【比較(as 〜 as …)】あ,その願望,私と同じだね!
- Chapter4 中学3年のダイアローグ・トレーニング
- 74 【受け身】その土地名産のお菓子を味わおう!
- 75 【受け身】外国人に日本の物を説明しよう!
- 76 【現在完了形(継続用法)】そろそろ新しいのを買いたいんだけど
- 77 【現在完了形(継続用法)】あなたのその熱意はいつから?
- 78 【現在完了形(経験用法)】「それうらやましいな」「それダメじゃん」
- 79 【現在完了形(経験用法)】この映画,観たことある?
- 80 【現在完了形(完了用法)】午後8時,友だちに電話をしてみたら…
- 81 【現在完了形(完了用法)】昼食はすませた?午後はゆっくりできるの?
- 82 【主語+call+目的語+補語】外国人に日本語を教えよう!
- 83 【主語+make+目的語+補語】教育相談で学校についての感想を言おう!
- 84 【would like / would like to】ニューヨークの名所へ行くため待ち合わせ
- 85 【would like / would like to】ホテルにチェックインできるかな?
- 86 【助動詞shall(Shall we 〜?)】土曜日の午後をどう過ごそうか?
- 87 【助動詞shall(Shall I 〜?)】好みの自転車を買いに行こう!
- 88 【疑問詞+to不定詞(how to)】外国人留学生と親睦を深めよう!
- 89 【疑問詞+to不定詞(what to / where to)】プレゼントの相談にのろう!
- 90 【主語+動詞+目的語+to不定詞】それなら,きっとあの子が助けてくれるよ!
- 91 【主語+動詞+目的語+to不定詞】電話でメッセージを受けよう!
- 92 【It … for 〜 to−.】アルバイトの時給はいくらになるかな?
- 93 【It … for 〜 to−.】その職業につくには,どんなことが必要?
- 94 【間接疑問文】先生に班別自主活動の報告をしよう!
- 95 【間接疑問文】デパートの案内係の人にたずねよう!
- 96 【現在分詞の後置修飾】警察官が捜しているのはどんな人?
- 97 【過去分詞の後置修飾】どんな素材がよいか,議論しよう!
- 98 【接触節・関係代名詞(目的格)】ナイトマーケットで買い物上手
- 99 【接触節・関係代名詞(目的格)】サプライズプレゼントは気に入ってもらえる?
- 100 【関係代名詞(主格)who】あの先生って,どんな先生なの?
- 101 【関係代名詞(主格)which】その公園へ行くバスは何分後に出発?
- 102 【現在完了進行形】そろそろ休憩した方がいいよ
- 103 【現在完了進行形】朝からずっと何してるの?
- 104 【仮定法if】すごい!抽選で旅行券が当たった!
- 105 【仮定法if / I wish】もし現実がこうであればなあ…
まえがき
「文法を教えるのがやっとで,なかなか会話練習をする時間がない。」「複雑で難解な文法は会話の中で用いにくい。」と,留学経験もなく,会話する力にも自信がなく,文法や「読み・書き」を中心とした30年以上も前の「受験英語」を通過して英語教師になった私は,自分にこのような言い訳をしていました。しかし,英語の授業でつけるべき学力に対する見方は時代とともに変化し,文法や「読み・書き」の教え込みだけでは不十分であることにすぐ直面することになりました。また,近年では,小学校にも外国語活動・外国語科が導入され,中学校の英語教育にも更なる工夫とその成果が求められる時代ともなっています。私は,これまでのインプット中心と言われる授業を全て否定するつもりはなく,基礎・基本の定着には地道な反復も必要不可欠だと思っています。よって,その要素と今求められているものを融合することによって,単なる活動の合理化としてではなく,生徒たちに知識・理解と表現の両面からアプローチする教材として,本書のようなダイアローグによる活動を考えました。
―文法を定着させるためのトレーニングと会話に慣れさせる学習活動を一体化させる。―
これが私の提案する実践の1つであり,本書のコンセプトでもあります。基礎となる語句や文法など,反復を含めた地道なトレーニングの成果としての「礎」が土台として培われてこそ,その中で自分の言いたいことや自分に必要とされることを表現でき,相手の話す内容を理解できるはずです。そのトレーニングと「話すこと[やり取り]」に慣れることの両立を目指した活動として考えたものです。
中学校英語教育において,生徒たちが互いに情報や考えを伝え合うこと(やり取り)ができるようになることが求められる中,私たち英語教師は,子どもたちにその力や習慣をつけるため,何から手をつければよいのか悩み,教材研究や授業実践にプレッシャーを感じ,膨大な時間を費やしてしまうことがあります。実際,私自身も研究推進校や,いわゆる先進校等での研究発表会に参加させていただき,授業者の先生から与えられたその日のトピックについて,生徒同士が自分の考えを英語で伝え合っている授業を何度か拝見し,大変刺激を受けました。「さあ,それでは自分も同じような授業に挑戦しよう」とした時,実際の生徒の様子を見てみると,自由に話す活動が「本当に実現可能か」「学力の定着に結びついているのか」といった不安とともにいくつかの疑問も生じてきました。具体的には次のようなものが挙げられます。
・既習事項の定着が不十分な生徒がどこまで既習表現を駆使したやり取りを行えるのか。
・学力の差がある中で会話させた時,どれだけ互いの達成感につながっているのか。
・自分が話している英語が正しいかどうかという不安を持つ生徒はいないのか。
・生徒たちは自分のことを相手(友人)に本当に伝えたいと思っているのか。
・生徒たちは相手(友人)のことで,それについて本当に聞きたいと思っているのか。
授業で行う全ての活動が,生徒たちにとってできる限り満足感・達成感・成就感などを得られるように…と願った時,英語を苦手とする生徒たちが,活動ごとに毎回同じようなシンプルな表現だけですませていたり,学力の差から本当は互いに伝わっていなかったり,自分の英語が正しいかどうかが曖昧なまま活動を終えてしまっていたりする状態に陥らないだろうか。また,普段共に過ごし,互いのことを知る友人に“What sport do you like?” “Do you have any pets?”などとたずねることに違和感はないのだろうか。そのように考えた時,もし自分が不安に思っているようなことが生徒たちの学習の中で少なからず感じられているようであれば,このようなやり取りに対して「主体的」となるにはほど遠いように感じてしまったのです。
外国の学校との交流や,交換留学生,外国人講師の来校時など,「本当に知りたい」「本当に伝えたい」などの目的意識があれば,既習の表現を駆使しながら英語でやり取りする活動は確かに有効です。しかし,そこに至る前に,生徒同士が日常の授業の中で互いにやり取りし,できる限り多くの生徒がその活動を通して「できた。」「伝え合えた。」「今日勉強した文法や表現方法は役に立つ。」といった思いを持たせるため,その時間もしくはその単元で学習目標となる言語材料を用いたダイアローグを全単元で作成することにしました。そのことによって,どの学力の生徒もその時間ごとに目標とする言語材料を使ったやり取りを体験でき,英語を言葉(コミュニケーションツール)として再認識し,その日その単元で学習している言語材料の価値(学習の意義)に触れ,今後,別の場面において自由にやり取りする際に役立てる(活用する)ことのできるものとして段階的に蓄積していけるはずだと考えました。
生徒に対して「習った表現だから使えるはずだ」と一気に話すことを求めるのでなく,そこに近づくための中間ステップとしての活動として位置づけるためのダイアローグは,独自の活動ルールを設定することによって,授業の内容や生徒の活動を活気づけ,英語を使うことに着実に慣れさせていけるものと確信しています。生徒の意欲を短期的にも長期的にも持続させるため,相手意識・目的意識・有用性・即興性・リアリティといった要素をできる限り含んだ場面設定のあるダイアローグを工夫しているつもりです。また,新学習指導要領で新しく追加された「現在完了進行形」および「仮定法」を含めた中学校で学習するほぼ全ての言語材料において複数のダイアローグを作成したものとなっています。ダイアローグには,教師側から与えた枠組みや選択肢などを含みますが,そのことによって教師側が意図した表現方法や言語材料を必ず用いることにもなり,どの学力の生徒にとってもその子なりの成功体験や問題意識を感じることのできる実効性のある方法の1つと考えています。
本書が,段階的に生徒が英語を使いながら成長していくための授業づくり,その時ごとに学習する言語材料に親しみを持たせるためのアクティビティやトレーニングを行う際のヒントとしていただくものとなれば幸いです。
2020年5月 /杣田 淳司
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- 明治図書
- 参考になりました2021/3/1140代・中学校教員