- はじめに
- 1年
- 10までのかず(1) 「0」を教えていないのに「10」を教えていいの?
- 10までのかず(2) 抽象とは他の属性を捨象すること?
- のこりはいくつ 「加法の意味」と「減法の意味」との類比的関係?
- 20より大きいかず 10個ずつ数えることをどのように教えたらいいの?
- ひきざん 減加法だけで減々法は教えなくてもいいの?
- どちらがながい 1年で量の直接比較や間接比較をさせるのはなぜ?
- かたちづくり 「色板ならべ」は好きな形をつくらせるだけでいい?
- かずをせいりしよう 棒グラフにつながる素地的な活動って?
- 2年
- たし算 (2位数)+(2位数)の筆算はどの位から計算する?
- ひき算 (2位数)−(2位数)の筆算はつまずきやすい?
- 1000までの数 480はどんな数といえる?
- 長さの単位(1) 比較と測定の違いは何?
- 長さの単位(2) 任意単位と普遍単位の間に共通単位あり?
- 三角形と四角形 導入でなぜ動物を囲むの?
- 長方形と正方形 正方形は長方形っていえるの?
- かけ算(1) かけ算九九は,どの段からどんな順序で指導するの?
- かけ算(2) 6の段から9の段までの九九の構成はマンネリ?
- 10000までの数 カードを4枚選んで4けたの数をつくると?
- 3年
- わり算 等分除と包含除について知っておきたいこと
- 円と球 2次元から3次元へは類比の宝庫!
- 棒グラフ アンケートをとって棒グラフに表そう!
- かけ算の筆算 かけ算の筆算の答えを1段で書くのはなぜ?
- 大きい数のわり算 (2位数)÷(1位数)で簡単な場合とは?
- 小数 日常生活では分数より小数の方が多く見つかる?
- 小数のたし算・ひき算 整数の筆算との違いが指導のポイント?
- 三角形と角 ストローでつくる三角形で導入するよさとは?
- 分数 量分数をもとにした「分数ものさし」づくり
- 重さ 遠足で1kgだと思う石を拾ってこよう!
- 4年
- 大きい数のわり算 わり算の筆算は難しい?
- およその数 1兆秒はおよそ何年だろう?
- 折れ線グラフ 折れ線グラフに表す意義って?
- 四角形 平行性をもとにした四角形の分類
- 面積 スケンプの提唱する道具的理解と関係的理解って?
- 整理のしかた 相関関係の発見につながる2次元の表
- 簡単な割合 2倍や3倍で導入して5年で一般化していく?
- 分数 同分母分数と異分母分数の大小比較
- 小数のかけ算とわり算 「被乗数と乗数」や「被除数と除数」という認識
- 直方体と立方体 平面や空間におけるものの位置の表し方
- 発展教材(1) 4つの4
- 発展教材(2) 単位の考えをもとにして既習を振り返ると面白い!
- 5年
- 図形の合同と角 図形の合同概念の構成方法とは?
- 体積 面積から体積への類推について
- 小数のかけ算 乗数が小数だと小数点が動く?
- 小数のわり算 分数のわり算(6年)へのつながり
- 整数の性質 偶数・奇数は低学年でも指導可能?
- 分数のたし算とひき算 1/2+1/3=2/5?
- 図形の面積(1) 平行四辺形の高さが必要な理由って?
- 図形の面積(2) 等積変形や倍積変形の発見にも系統性がある?
- 平均 仮平均の活用
- 単位量あたりの大きさ 内包量って加法が成り立たない量のこと?
- □や△を使った式 棒を使って正方形□個を横に並べるときの棒の数△は?
- 角柱と円柱 オープンエンドアプローチによる立体の学習
- 発展教材(1) 通過算はある文脈での解法でしかない?
- 発展教材(2) 角度を使って正多角形を作図しよう!
- 6年
- 対称な図形 正多角形を対称性から分類すると?
- 文字と式 「式に表すこと」と「式を読むこと」
- 分数のかけ算 計算方法を教え込むだけなら道具的理解?
- 拡大図と縮図 方眼紙を使って導入して中学校数学「相似」につなげる!
- 比例と反比例(1) 日常の事象との関連の宝庫!
- 比例と反比例(2) 長方形の面積や速さから見いだされる比例・反比例
- 場合の数 序列化できない多様性
- 記録の整理(1) いろいろな場面から代表値のよさを味わおう!
- 記録の整理(2) 柱状グラフは棒グラフとどこが違うの?
- 発展教材(1) 棒を使って正方形をつくる場面の発展可能性とは?
- 発展教材(2) 「立方体の切り分け」から学ぶWhat if not?
- 発展教材(3) おはじきのちらばりを数値化!
- おわりに
- 参考文献
はじめに
本書を執筆するにあたっては,小学校1年から6年までの算数科の指導内容に応じて,若手教師に向けた算数指導にかかわる教養を選んで,できるだけ具体的にお話しすることを心がけました。
低学年から高学年まで順に読んでいかなくても,今年度に担当している学年の部分だけをお読みいただいてもよいと思います。しかしながら,興味が湧いてくると,そのテーマにかかわる他の学年のページも読んでみてください。特に,若い先生方には,そのような読み方を期待しています。
算数は,奥が深くて,教えるのは簡単ではありませんが,指導内容のつながりがわかってくれば,教えるのが楽しくなってくる,そして,子どもたちの考える力がついてくるのがうれしくなってくる,そんな教科だと思います。
本書でお話ししてきた内容は,算数教育を専門とする研究者や実践家にとっては,当たり前のことばかりであり,新しい情報は少なかったと言われるかもしれません。読者の皆様にも,いろいろな立場があるわけですから,そのようなご意見はもっともなことだと思います。
しかしながら,教員養成に携わる立場から見ておりますと,新卒3年目ぐらいまでの若い先生方にとっては,その当たり前のことが,実は当たり前ではなかったということが決して少なくないように思います。
それは,教員養成段階の算数教育が,十分な成果を挙げているとはいえないのではないかと思うからです。また,新卒で赴任する小学校においても,算数指導を基礎から学べる状況にはなく,学級担任としての実務的な作業に追われ,算数教育の基礎的な知識を獲得することもできないだろうと思うからでもあります。
このような状況では,算数教育において大切なことであれば,指導的立場にある研究者や実践家が,できるだけ平易な言葉で次の世代に語り継ぎ,わが国の算数教育を絶えず進化させ続ける努力が求められると考えます。そのような思いから,本書は,特に新卒3年目ぐらいまでの若い先生方に語りかけるような形にさせていただきました。
私の大学院生時代の指導教官であった平林一榮先生は,
「簡単なことを難しく書く研究者が多すぎる。難しいことでも大切なことを易しく語る研究者になりなさい」
とおっしゃっていました。
この教えを心がけながら,本書を執筆してきたつもりです。また,66個の話題の随所に,平林先生お気に入りの「数学的シツエーション」が必然的に入ってくることになりました。
そして,この数十年間,算数教育について一緒に研究させていただいたのが,もうお一人の指導教官でした中原忠男先生です。本書の中にもたびたび登場しているのが,学習者としての子どもの立場で算数を創っていくという,構成的アプローチの視点です。この場をお借りして,私を算数教育研究の世界に招き入れてくださった先生方に,心から感謝したいと思います。
読者の皆様の算数指導に少しでも参考となる点があれば幸いです。
福岡教育大学学長 /飯田 慎司
-
- 明治図書
- 題名のおかげで、自分のようないい歳の者でも購入しやすいです。若手に限らず、勉強になる、納得できるバイブルです。2021/8/24カツオとネコ
- 具体的な実践のみならず、それを裏付ける理論についても学ぶことができます。参考文献等も調べ、学びをさらに深めていこうと思います。2021/4/3020代・学生