- まえがき
- 第1章 具体的なねらいから「授業」をつくる15の提言
- 1 特別の教科道徳がめざすものをまず理解する
- 2 学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育と特別の教科道徳は同じではない
- 3 内容項目がねらいであってはいけない
- 4 ねらいがオープンエンドでは特別の教科道徳の目標に向かえない
- 5 「分かりきったこと」をねらいにしない
- 6 1時間で達成可能なねらいにする
- 7 教材の特質を生かしたねらいをつくる
- 8 人間理解に基づくねらいをつくる
- 9 発問構成でねらいに迫る
- 10 「AかBか?」の発問を見直す
- 11 子供が考え始める論点を示す
- 12 補助発問で子供の考えを深める
- 13 考えが深まる発問構成をつくる
- 14 ふりかえりを懺悔・決意表明にしない
- 15 ねらいは評価と表裏一体でつくる
- 第2章 具体的なねらいからつくる「授業」
- 「ひつじかいの こども」
- (第1学年/A−(2)正直,誠実)
- 「はしの うえの おおかみ」
- (第1学年/B−(6)親切,思いやり)
- 「およげない りすさん」
- (第1学年/B−(9)友情,信頼)
- 「さるへいと 立てふだ」
- (第2学年/A−(2)正直,誠実)
- 「きいろい ベンチ」
- (第2学年/C−(10)規則の尊重)
- 「まどガラスと魚」
- (第3学年/A−(2)正直,誠実)
- 「どんどん橋のできごと」
- (第3学年/A−(3)節度,節制)
- 「ブラッドレーのせい求書」
- (第3学年/C−(14)家族愛,家庭生活の充実)
- 「絵はがきと切手」
- (第4学年/B−(9)友情,信頼)
- 「ヒキガエルとロバ」
- (第4学年/D−(18)生命の尊さ)
- 「花さき山」
- (第4学年/D−(20)感動,畏敬の念)
- 「うばわれた自由」
- (第5学年/A−(1)善悪の判断,自律,自由と責任)
- 「くずれ落ちた段ボール箱」
- (第5学年/B−(7)親切,思いやり)
- 「名前のない手紙」
- (第5学年/C−(13)公正,公平,社会正義)
- 「ロレンゾの友達」
- (第6学年/B−(10)友情,信頼)
- 「ブランコ乗りとピエロ」
- (第6学年/B−(11)相互理解,寛容)
- 「青の洞門」
- (第6学年/D−(21)感動,畏敬の念)
まえがき
本書をお手に取っていただき感謝申し上げます。はじめに,本書をお読みいただくにあたり,お願いをさせていただきます。本書を著すにあたって,読者の皆さんにぜひお伝えしたいことですので,おせっかいを承知の上で述べさせていただきます。
実践事例だけを読まないでください
本書には,特別の教科道徳の授業実践を低中高学年における様々な内容項目や教材に関して17の実践例を載せていますが,それらは決して授業マニュアルとして載せているものではありません。つまり,読者の皆さんにこれらの実践例に倣って授業をしていただくことが本書の目的ではないのです。もちろん,そういう使い方も可能ですが,実際の授業では指導案の意図を十分に理解した上で,それを子供たちとともに実施していただきたいのです。
では,指導案の意図を理解するとはどういうことでしょうか? それは,単に指導案を隅々まで理解するということではありません。もちろん,指導案を実際の授業に生かせるように様々な状況を想定して綿密に準備することは重要であると考えますが,それよりも重要なことは,その指導案の中に流れている授業理論を理解することです。つまり,その授業で育てようとしている道徳性はどのようなものか,そのために子供に何に気づかせ,何を理解させることで育つと考えているのかなどが授業理論なのです。本書は,皆さんに,道徳授業に対する理解を深めていただくとともに,より高い指導力を身につけていただくことを願って編集しました。
以上のことから,17の実践例は,あくまでも本書が提案する授業理論について理解していただくために,具体的な切り口として示したものです。実践例に示したねらいや発問を通して,本書が提案する授業理論を理解していただくことができれば,17の実践以外の教材においても自由に授業を創ることが可能になるはずです。そのためには,第1章で述べた15の提言についてじっくり考えていただけるとありがたく思います。これらの15の視点は,おそらく道徳授業に対する読者の皆さんの日頃からの疑問や物足りなさなどの現実の課題意識と一致することと思います。つまり,今まで何となく感じていた道徳の授業に対する疑問が明確になったり,物足りなさが何であったのかが少しずつ見えてきたりするはずです。その上で,17の授業実践を見ていくと,授業の設計の仕方に今までにはなかった視点が見つかることでしょう。つまり,道徳の授業理論が見えてくるはずです。
「特別の教科 道徳」が実施されることになり,授業実践や授業方法に関する著作が非常に多く出されています。しかし,授業理論に関するものとなるとほとんど見当たらないのが現実です。つまり,これまで道徳の授業理論についての提案はほとんどなく,そのことについて考える期間もあまりなかったと思われます。
道徳の授業に関する疑問や物足りなさについて一緒に考えてください
本書を手に取っていただいた方は,おそらく道徳の授業に高い関心をおもちの方だと考えます。同時に,道徳の授業に疑問や物足りなさを感じておられる方だとも思います。本書はおそらく,それらの疑問や物足りなさを見直していただく視点をお示しできるのではないかと考えています。例えば,道徳で指導することについて子供は既に知っているのではないか,子供に考えさせることがねらいであってもよいのか,子供が自分自身をふりかえって反省や実践への抱負を述べたり書いたりしていればよいのか,道徳科の授業はその1時間で達成するようなねらいを立てることはできないのかなどの,ねらいに関する疑問や物足りなさです。もう一つは,教師の発問で子供は本当に考えているのか,子供は教師が何を答えてほしいかを考えて発言しているだけではないのか,教師がもっている答えを当てにいっているだけではないのか,子供がもっと本気になって考えるような視点はないのかなどの,発問に関する疑問や物足りなさです。
これらの疑問について考えていただくための視点として,第1章に15の視点を示しました。これをお読みいただき,疑問や物足りなさを共有していただけたり,なぜそうなるのかについてじっくり考えたりする機会にしていただければと思います。そして,これまでもやもやしていたものが少し晴れたと感じていただくことができれば幸いです。また,反対に,そうではないだろう,もっと違った考え方やアプローチがあるはずだと新たな疑問をおもちいただければ,一層ありがたいと思います。
新しい道徳の授業を創ってください
繰り返しになりますが,本書の目的は道徳授業の型を示すことではありません。17の実践をお読みいただくとお分かりいただけると思いますが,どの授業も同じ型やパターンで進めていません。どれも異なったタイプの授業です。一般に,道徳科では同じようなねらいが設定され,授業の進め方でも同じ型やパターンの授業をよく見かけます。そうすることで,いつでも,どこでも,だれでも一定水準の授業ができるということをめざしているのだと思いますが,それではつまらないと感じておられる方も少なくないように思います。だからといって,自主教材の開発となると様々な課題があります。本書では,教科書に載っている,いわゆる有名教材を使って授業づくりをしています。そのねらいや学習指導過程は,全く新しいものだと考えています。だれもが知っている教材であっても,視点を変えればこれまでになかった授業が創れるのです。もちろん,それが唯一で最高のものだとは考えていません。もっと別の視点もあるはずですし,もっとよい授業が創れるはずです。それを考えるきっかけにしていただければ幸いです。
2020年4月 編著者 /服部 敬一
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- 明治図書
- わかりやすい2024/2/2630代・小学校教員
- 第1章15の提言がわかりやすく納得できるものだった。第1章のページ数がもっとあってもいいと感じた。2022/2/2650代・小学校教員
- 悩みが解消しました。2021/2/2420代・小学校教員
- 実践の具体例を内容項目に絞って全項目が載っているとさらによい。2020/7/1160代・小学校教員