- はじめに
- 第1章 いちばんわかりやすい道徳の授業づくり基本のき!
- 01 「特別の教科 道徳」って?
- 02 学習指導要領の目玉,「深い学び」と道徳の関係性は?
- 03 考え,議論する道徳とは?
- 04 授業づくりの大前提:もやもやとワクワク
- 05 そもそも授業の一般的な流れって?
- 06 学習指導案を書いてみよう
- 07 授業における教師の役割とは?
- 08 評価ってどうするの?
- COLUMN どうして道徳の授業って難しいの?
- 第2章 ひとつひとつ,やさしく解説 いちばんわかりやすい道徳の授業づくり講座
- 授業開き
- 01 道徳授業のねらいを伝える授業開き
- 02 子どもの問いから始まる授業開き
- 教材研究
- 03 教科書の読み物教材とどう付き合うか
- 04 教科書以外の教材研究例
- 05 偉人の教材研究例
- 導入・終末(振り返り)
- 06 メッセージ性の強い教材の扱い方
- 教材提示
- 07 絵本の教材化ではリスペクトを忘れずに
- 発問
- 08 道徳科の発問とその特徴
- COLUMN 時事問題の取り入れ方
- 09 道徳授業における発問とは
- 10 子どもの思考を揺さぶる「補助発問」
- 板書・ノート・ワークシート
- 11 道徳授業における板書
- 12 道徳ノート・ワークシートの役割と留意点
- ペア学習・グループ学習・ワークショップ
- 13 〈ペア学習・グループ学習〉4つのコツで成功するペア学習・グループ学習
- 14 〈ワークショップ〉子どもが熱心に取り組むワークショップ×道徳の授業
- ICT活用・教具
- 15 道徳科におけるICT活用
- 定番教材
- 16 「はしのうえのおおかみ」の授業づくり(小学校低学年)
- 17 「雨のバス停留所で」の授業づくり(小学校中学年)
- 18 「銀のしょく台」の授業づくり(小学校高学年)
- 19 「ロレンゾの友だち」の授業づくり(小学校高学年)
- 20 「二通の手紙」の授業づくり(中学校)
- 21 「言葉の向こうに」の授業づくり(中学校)
- さまざまな指導法
- 22 現代的課題にも対応可能なモラルジレンマ授業
- 23 当たり前を問い直し批判的思考を育成する探究的道徳
- 24 自立と多様性が育つ全校道徳の授業
- 現代的課題
- 25 キャリア教育と道徳教育を結びつける問いのあり方
- 26 防災教育としての道徳
- 27 SDGsと道徳
- 28 多様性を道徳教育に活かす
- 29 社会情動的スキルと道徳教育
- インクルーシブ教育
- 30 道徳の授業におけるユニバーサルデザイン
- 評価
- 31 自己評価力を伸ばすポートフォリオ評価
- 32 グループ・モデレーションによる評価
- 33 メタ認知とリフレクション
- おわりに
- 付録 学習指導要領『解説』 内容項目一覧
- 引用・参考文献一覧
- 初出一覧
はじめに
道徳が教科化されてしばらく経ちました。多くの小中学校では年間35時間の授業が確保され,週に1回は道徳の授業をされているかと思います。教科化以前に比べたら,格段の進歩かもしれませんね! でも,一方で授業時間数をこなすようになったからこそ,「どうしたらいいかわからない」「この授業展開でいいのか自信が持てない」という先生方のお話も聞くようになりました。さまざまな学校へ研修などでおうかがいしても,同じようなことを言われます。特に若手の先生に言われることが多いですね。
「いやいや,自信を持ってやってもらって大丈夫です!」
それが,私の基本的な答えです。
でも,それだけではもちろん納得していただけないので(そりゃそうだ!),いろいろとアドバイスをさせてもらいます。それをまとめたのがこの本です。第1章では道徳の授業の基本的なこと,そして,第2章では道徳の授業におけるさまざまな場面において,先生,特に若手の先生が悩むかもしれないなぁというところを想像して書きました。
本書で最も大切にしたのは,できるだけ読者のみなさん,特に教員経験が浅い先生にとって,徹底的に「わかりやすく」なるようにしたことです(逆に言えば,ベテランのめっちゃわかっている先生には物足りないのかもしれません!)。
ところが,テレビでおなじみの池上彰さんが『わかりやすさの罠』(集英社新書,2019)の中で,「わかりやすさの落とし穴」について,次のように書いています。「私の番組だけ見て満足してしまい,その後,自分で関心を持ってニュースを見たり,新聞を読んだり,調べようというところまでいかずに,『わかった』気になってしまっているのです」。
これはまずい! わかりやすく伝えると,わかった気になってしまうのか! でも,まずはわかりやすく伝えないと,何も始まらない! そういった思いでこの本をまとめました。「守破離」という考え方がありますが,まずは「守」に入ってもらうためには,わかりやすさは邪魔にはならないはずです。
さて,先程「自信を持ってやってもらって大丈夫」と言いましたが,その裏には意味が込められています。それは,見せてもらう授業での子どもたちの顔が幸せそうなんです(ムムっと悩む顔も!)。学校へ行って幸せそうに授業を受けている,それに勝るものってありますか? それは,子どもが「今を生きる権利」,「子どもであることの権利」を学校空間で保障されている姿なんだなって思うんです。もしかしたら,すごい悩みを抱えているかもしれない,家に帰ると辛い思いをしなければならないかもしれない,でも授業を受けている間はそういった「辛さ」を忘れて,友だちと一緒にいろいろと考えることができる,話し合うことができる,笑い合える,それ以上の幸せってないような気がします。
もちろん,そういった「しんどさ」を抱えている子どもたちが増加していることも知っています。有形無形で発せられる子どもの辛さを我が身のこととして感じ取って,さまざまな観点からケアしながら学級経営するからこそ,「授業」って成立するんですよね。教師の仕事のすばらしさに頭が下がります。
だから,私は授業を見せてもらうときに,授業そのものの展開の仕方よりも(それはそれでちゃんと見ていますけど),教師と子どものやりとり,子ども同士のやりとりがいかに安全で安心した空間でなされているかを気にしています。学級経営の観点です。そこに「歪み」を感じたら,まずはそこを問うようにしています。たとえばプリントを返す際に,子どもの目も見ずに事務的に返している先生(授業そのものと全然関係ない場面ですよね)に対しては,そこを指摘します。逆に,プリントを配る際に,「はい,どうぞ」「ありがとう」のやりとりが普通にできているクラスは安心します。「そんな意見が出てくるなんて,先生の予想を超えてるわ」と笑顔でさらっと発言する教師の言葉にも安心します。「何しに来たん?」と休み時間に私に笑顔で聞いてくれる子どもがいることにも安心します。
授業は,子どもたちがその場にいてくれるからこそ成立します。いろいろな背景がある中で子どもが学校に来てくれていることを「当たり前」とは思わず,その中で授業が成立することをむしろ「感謝する」ことが大切なのかもしれません(実は娘が不登校傾向で,担任の先生などにものすごくお世話になっています。感謝しかありません)。
子どもが学校にいる! だからこそ,その瞬間を大切にした授業をしてほしいなと思います。そのときに本書が一助になれば幸いです。
主人公は子どもたちであり,それを支えるのは先生。
そしてそれを支えるのが私です。あくまで「伴走者」です。
では,本書を通じて,道徳教育の新しい世界へ一歩を踏み出しましょう!
2021年2月 /荒木 寿友
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- 明治図書
- 急に道徳を教えることになった時に役立ちました。2024/6/1630代・小学校教員
- 道徳の具体がたくさん載っていて、参考になりました。2022/9/1130代・中学校勤務
- 学習指導案の書き方についての表記が良かった2022/7/2510代 大学生
- 特別の教科道徳になり、「これまでの道徳授業の何を変えればいいのか(何を変えなくてもいいのか)。」という疑問に答えてくれます。タイトルの通りです。2021/9/450代・小学校教員
- よい2021/8/2120代・中学校教員