- はじめに
- 第1章 「日常」ちょっとの手抜き術
- 10分休みを笑う者は、長時間残業となる
- 定時で帰る教師には、幸がある
- 「学級崩壊」予防で「手抜き」が叶う
- その後のために、4月だけは、がんばっておく
- 「マンガ」で子どもを黙らせよ
- 仕事はためずに「貯金」せよ
- 無理は長くは続かない
- 仕事は先取り、いやらしく先を読め
- 小さな仕事は、即つぶせ
- 「定時帰宅♪」から「逆算」して仕事せよ
- 手抜きには、朝イチの「作戦タイム」が必須
- 朝イチのスタートダッシュで帰宅を早めよ
- テストは朝イチ。即採点で、放課後仕事をなくせ
- 子どもは、早く帰らせろ
- 帰りの会は、「授業中」に終わらせてしまえ
- 手抜きのための「席替え」カードを手放すな
- 保護者の怒りを買わねば、手抜き授業で大丈夫
- 子どもが見えれば、手抜き授業も盛り上がる
- 子どもに作業させ、教師は休め
- 手抜き授業も、終わりで帳尻を合わせよ
- 泣く子に関わる時間は、無駄
- 子どもを「人材」として、利用せよ
- 第2章 「非日常」大きな手抜き術
- 仕事は仕分けと段取りでコスパが上がる
- 提出袋1つで、配付と催促の手間を省け
- 子どもの名前を早く覚えて、時短せよ
- 教材選びは、人任せ
- 文書は読まずに捨てろ
- 最初の手抜きより、後の手抜き
- 社会人失格でも、家庭訪問のアポ取りは省け
- 被害者へ先に電話すれば、1つ時短
- 「手抜き」を喜ぶ保護者もいる
- 休んだ子のために時間を使うな
- 個人懇談は「最後に」と、話を切れ
- 通知表の所見は、人真似をせよ
- 道徳や総合的な学習の所見は、アンケートで手を抜け
- 完璧な評定は無理と、あきらめよ
- 誰も読まない指導要録に心砕くな
- 研究授業の指導案は、コピペで作れ
- 教師は段取り力で楽できる
- 必要のない争いからは、手を引け
- 第3章 ブラックの「おまけ」を愛する読者に捧ぐ
- 人を罵倒するような人間は、不幸になれ!
- 出品作品は、親の顔色を見て決めよ
- 保護者をヨイショし、涙を誘え
- 負け戦で相手に要求するなよなあ
- 児童の仮面をはがすなんて、もってのほか
- 『ブラック』を書いてきて、良かったなあ
はじめに
最近覚えた、若者の言葉がある。
「コスパがいい」「コスパが悪い」
という言葉である。
「コスパ」とは、「コストパフォーマンス」の略。「費用対効果」という意味だ。
支払った「費用」と、それによって得られた「効果」を比較する。「費用」に対して「効果」が大きければ、「コスパがいい」。「費用」に対して「効果」が小さければ、「コスパが悪い」と、表現される。
俺も、若者言葉に詳しくなったものだ。「映える」とか「ぴえん」、「マジ卍」だって、分かるもんな。えっ!?古い?
せっかく覚えた「コスパ」という言葉だが、教育現場で聞くことはない。
たとえば、研究授業である。驚くほどたくさんの準備をして、研究授業に臨む教師は多い。
そんな教師に対して、研究協議で、
「こんなにたくさんの準備をして、この授業、コスパが悪すぎませんか?」
なんて声を、聞いたことがない。
「この準備物は無駄だと思うので、削ってコスパを上げましょう」
なんて提案も、聞いたことがない。
それどころか、過剰な準備には、賛辞が贈られる。
「これだけの準備は、大変だったでしょう。先生の熱意が伝わってきます」
そう。学校現場では、時間をかけることは、美徳なのだ。子どものために全力を尽くすことは、素晴らしいことなのだ。
そして、私も、全力で研究授業の準備をした教師を、非難したことはない。私は「和をもって尊しとなす」が、信条の男だ。波風を立てるような発言はしない。黙っている。
しかし、私は、心の中で思う。
「この授業、コスパが悪すぎるな。もっと楽して成果を出さないと、年間1000時間を超える授業では、絶対に無理だ。使えない」
この話、授業だけではない。学級づくりでも、そうだ。
できるだけ手をかけ、時間をかけ、子どもたちのために全力を尽くした学級づくりが称賛される。
こんな教師たちに、本書のタイトル「手抜き」を提案するのは、危険かも知れない。
しかし、私は、『ブラック』で売っている男だ。多くの非難を受けてきた。
でも、全然、へっちゃら。「和をもって尊しとなす」は、職場での信条だ。職場を一歩出てしまえば、関係ない。
どうせ、一生のうち、数回しか会わない方々である。そんな人たちから批判されても、痛くも痒くもない。ましてや、会ったことのない方の批判など、へのかっぱである。
この本で主張したいことは、実にシンプルだ。
教師たちよ。もっと手を抜いて、コスパを上げよう。
効率を上げて、要領よく学級づくり、授業づくりをしよう。
上手く手を抜かないと、体を壊しちゃうぜ。
そう。一生懸命、全力で働いて、結果を出すのは当たり前。手を抜いて、楽をしても、結果を出すのがプロなのだ。
本書は、ベテランのプロ教師が、手を抜いてきた事実を赤裸々に語る本である。
今まで明らかにされてこなかった衝撃の事実が、ここにある。
真面目な教師たちよ、黒くなれ!
忙しすぎる現場を生き抜くために、手を抜くのだ。
私は、上手に手を抜いて、厳しい現場を生きてきた。30年以上、生き続けてきた。
いや、違う。手を抜き続けたから、30年以上、生き続けられたのだ。
厳しい教育現場を生き抜く極意は、「手抜き」にこそある。
2022年7月28日 52歳の誕生日に /中村 健一
毎年楽しく読んでいます。
20年目を迎えましたが、そんな私にも役立つ内容ばかりです
次の本も楽しみにしています
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