『１年間まるっとおまかせ！小学５・６年担任のための学級あそび大事典 見やすい２色刷り』の詳細情報

　あそびは，日常生活とは対比的な存在です。日常生活は，一定の縛りがあり，生産的であり，また何らかの目的をもっています。学校生活はその典型です。登下校時間が決められ細かく時間割が決められ，学習という生産活動を通して学力などの能力形成がねらわれています。それに対して，基本的にあそびは，比較的縛りがなく，何かを生産しないし，何かを達成することを目的としません。あそびの目的を強いてあげるとするならば，それをすること及び楽しむことではないでしょうか。縛りがないとは言いながら，ある程度のルールはあります。ただ，それは最低限であり，そして変更可能です。今の教室ではあまり推奨されることではありませんが，男子児童同士がプロレスごっこのようなことをしてじゃれ合うような場面を見かけます。あれは，完全にあそびです。じゃれ合うことが目的であり，それが純粋に楽しいのです。決して，相手を負かすことが第一の目的となってはいません。しかし，相手を痛めつけないというルールは存在しています。

　あそびは日常生活と一線を画する営みなので，非日常です。人は遊園地にあそびに行きます。遊園地はよく「非日常」と表現されるように，いつもの状態ではないから，特別であり楽しいのです。また，あそびは私たちの生存とは直結せず，少し離れたところで営まれる余裕が必要です。あそびが仕事になることは幸せだと言われる一方で「あそびを仕事にしてはいけない」とも言われます。仕事，つまり労働にしてしまったら，それは生きることと直結してしまうので，やりたくないこともやらねばいけない場面が訪れます。そうすると，あそびの命である楽しさが損なわれてしまいます。したがって学級におけるあそびも，あそびと呼ぶ以上は，「楽しいこと」「縛りが緩く，生産すること，達成することを目的としないこと」「非日常的であること」が求められるでしょう。

2．「あそび」の分類

　あそびは，大きく分けて5種類が考えられます。それを本稿では，競争系，偶然系，模倣系，感覚揺さぶり系，気晴らし系と呼びたいと思います。

　競争系とは，かけっこや，鬼ごっこ，行為そのものを楽しむ場合は，スポーツや囲碁，将棋なども含まれます。偶然系は，最もわかりやすいのが，サイコロやルーレットなどを使ったゲームです。くじ引きなども含まれるかもしれません。模倣系は，ごっこあそびがポピュラーです。高学年が，ごっこあそびに興じる姿を見ることは稀ですが，芸能人の真似をしたり，教師の口癖を真似したりして喜んでいるのはこれに当たるかもしれません。感覚揺さぶり系とは，人為的に知覚を不安定にさせ，その感覚を楽しむものです。自転車の無謀運転などで自らを危機に晒す子がいますが，あれなどもスリルを味わって楽しんでいるのだと思われます。最後の気晴らし系は，ひなたぼっこやぶらぶら散歩する行為が思いつきます。かつて私が担任した女子児童たち（小6）は，昼休みに屋上で「昼寝大会」をしていました。誘われて参加したことがありますが，ひたすら太陽を浴びながらごろ寝するというものでした。予鈴がなると彼女たちは，「あ〜楽しかった」と言って清掃場所に向かいました。学級あそびを実践する場合は，自分のクラスの子どもがどのような系統のあそびを好むか知ったうえで活動を選択すると効果的でしょう。

3．学級あそびを実践する

　以上のような考察を踏まえて，丁寧に実践することで，より効果的な活動が展開できることでしょう。

�@楽しく，かつ，非日常である

　どんなに教育的であろうとも，つまらない活動はあそびではありません。それをやることそのものが楽しいことが第一条件です。また，活動前に学習や集団行動の練習などの別な目的をちらつかせないことです。純粋に「あそび」として提示します。

�Aルールはシンプルに明確に示す

　事前に，活動の仕方にかかわるルールや禁止事項をシンプルに伝えます。ルールを図示したりポスターにしたりして視覚に訴えるとよく伝わります。ルールが守られないと楽しさは消し飛んでしまいます。活動する前に，リハーサル（練習）を入れるとより混乱が少なくなります。

�B導入期は子どもたちが好む活動を選択する

　学級あそびの導入期には，クラスの子どもたちが好む系統の活動を見極めながら，子どもの実態と乖離しないようにします。特に高学年は，他者とかかわることに抵抗がある子どもが一定数いることが想定されるので，注意が必要です。

�Cだれよりも教師が楽しそうにする

　子どもたちは教師の表情に敏感です。あそびを始める前から「楽しくて仕方ない」といった雰囲気を出しながら実践するのがよいでしょう。