- 第1章 個別最適な学びと協働的な学びと国語科の授業づくり
- 第1節 中央教育審議会答申を読み解く
- 個別最適な学びとは
- 支援の必要な子供に、より重点的な指導を行う
- 「個に応じた指導」を学習者視点から整理した概念が「個別最適な学び」
- 指導方法・教材や学習時間等、子供自身が学習が最適となるよう調整する
- 第2節 国語科における個別最適な学びと協働的な学び
- 国語科の本質的な授業改善のなかで実現を目指す
- 「その学びは子供にとって必然性を実感できるものか」を問いながら授業構想を進める
- 授業構想に基づき、子供が自律的に学び進めるための緻密な手立てを構築する
- 「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の各領域における具体的な視点
- 第2章 主体的な学びを支える「ロングレンジ」の学習活動
- 第1節 ベルリン市のプロジェクト学習の実践
- ベルリン市の授業改善の取組
- 多様な背景をもつ子供たちの増加と言語教育施策の重視
- 個人差に対応するプロジェクト学習の実践概要
- 日本の国語科学習指導における個別最適な学びへのヒント
- 第2節 学びを自律的なものにするロングレンジの学習活動
- ロングレンジの学習活動とは
- ロングレンジの学習活動の典型的な姿
- ロングレンジの学習活動の特徴
- 自律的に交流を繰り返すことを重視する指導上の意図
- 魅力的な言語活動とロングレンジの学習活動
- 子供にとっての必然性のある学びのなかで成立するロングレンジの学習活動
- 「魅力的な学習の目当ての構成要件」を検討する
- 「魅力的な学習の目当て」の具体的検討例
- 「自分の考えをもつ」ことの子供にとっての意味と具体化
- 交流の目的の具体化と発達の段階による指導上のねらい
- 自律的な判断を伴った交流の繰り返しを重視する
- 他教科等を生かした繰り返しの学習のなかで実現していくロングレンジの学習活動
- 教師の精緻な授業構成と子供の実態把握を基に成立するロングレンジの学習活動
- 第3章 「ロングレンジ」の学習活動へのステップ
- 第1節 ロングレンジの学習活動を取り入れた単元構想のステップ
- つけたい力の明確化
- 子供たちにとってのターゲットとなる魅力的な言語活動設定
- ターゲットに向かう必然性のある学習過程の構想
- 習熟のしやすさや学びやすさに配慮した指導過程の選択
- 子供たちが必然性をもって取り組める課題の設定
- 単位時間の学習の精緻な想定と具体化
- 第2節 カリキュラム・マネジメントを生かした年間の指導ステップ
- ゴールから逆算した指導の積み重ね
- 言語活動経験の意図的な積み重ね
- 交流など具体的な学習体験の意図的な積み重ね
- 言語活動を通して見えてくる子供の実態に応じた指導
- 第4章 「ロングレンジ」の学習活動を支える授業デザイン
- 第1節 子供自身の課題意識を生かした学習指導
- 話題、課題の設定の工夫
- 並行読書の活用と多彩な選書の指導の工夫
- 並行読書の効果を高めるための指導のねらいに応じた配慮点
- 第2節 子供が学習を見通す手立て
- 単元の導入の工夫の意義と具体的な工夫例
- 単元の学習計画表の工夫
- 第3節 子供が自律的に交流するための支援
- 並行読書マトリックスとその活用法
- 並行読書マトリックスの多彩なバリエーション
- 全文掲示を活用した自律的交流の手立て
- 交流のイメージを具体化するモデル動画の活用
- 交流のためのその他の配慮や工夫
- 第4節 ロングレンジの学習活動を支えるICTの効果的な活用
- ICTの効果的な活用のポイント
- ロングレンジの学習活動を支えるICTの効果的な活用例
- 第5章 「ロングレンジ」の学習活動を取り入れた授業構想例
- 第1節 単位時間の学習活動を柔軟に判断し自律的に学び進める学習(低学年・読むこと)
- 事例の概要
- 第2節 ICTをフル活用し学習進行を自らデザインする学習(高学年・書くこと)
- 事例の概要
- 第3節 年間を通し、多様な学習経験を踏まえた自律的な学習(高学年・読むこと)
- 事例の概要
まえがき
日々の教育実践に当たられるなかで、子供たちが多様化し、授業の展開が難しいと悩まれる教師が多くおられるのではないでしょうか。「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現するという方向性がその重要な手掛かりになりますが、それを国語の授業でどう具体化していくのかということは、まだまだ研究開発の途上にあると思われます。
しかし近年、むしろ個人差を生かし、子供たちが自律的に学び進めていく質の高い授業づくりが大きく進展しています。そのカギになるのがロングレンジの学習活動です。逐一の指示や発問で進むのではなく、魅力的な目的に向かって自律的に学び進め合う子供たちの姿を実際にご覧になった方々が「自分のクラスの子供たちもこんなふうに学べるようにしたい」という思いをもたれてひたむきに実践の工夫を積み重ね、着実に授業改善が広がっているのです。こうした優れた先行の実践を自らの授業改善に生かすためには、実践の表面だけではなく、その意図を押さえ、子供たちの実態に合わせて活用を図ることが求められます。本書はそうした授業改善を進めたいと願う関係の皆様の取組の一助になればとの思いで執筆を進めたものです。
本書の刊行に当たり、事例の参考とすること及び実践の写真の掲載を快諾いただきました、京都市立下京渉成小学校、糸満市立糸満小学校、また優れた実践の写真掲載を快諾いただきました、金沢市立小立野小学校、京都市立第三錦林小学校、京都市立朱雀第七小学校、木津川市立棚倉小学校、枚方市立招提小学校、伊江村立伊江小学校、石垣市立新川小学校の皆様に、この場をお借りしまして深く感謝申し上げます。また末筆になりますが、本書を執筆・刊行する機会をいただきましたことに深く感謝申し上げます。
なお、本書はこれまでに公表してきた、「小学校国語科における個別最適な学びと協働的な学びの実現に向けた検討―ロングレンジの学習活動を位置付けた授業実践の開発―」「ベルリン市の基礎学校段階におけるドイツ語教育の現状」(いずれも『京都女子大学発達教育学部紀要』に掲載)を踏まえ、授業実践に関わる読者の皆様の参考となるよう大幅に加筆したものです。
二〇二三年三月 京都女子大学教授 /水戸部 修治
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