- はじめに
- 第1章 「個別最適化された学び」と「協働的な学び」を実現するには
- 1 「令和の日本型学校教育」が求める教育実践のかたち
- 2 特別支援教育における「個別最適な学び」と「協働的な学び」
- 3 ICT を活用した授業によって何が変わるのか?
- 第2章 各教科の「深い学び」と ICT を活用した特別支援教育の授業づくり
- 1 ICT を活用した国語科の深い学び @ 国語科の授業づくりのポイント
- 2 ICT を活用した国語科の深い学び A プロジェクションマッピングのなかで読解力を育成する(読むこと)
- 3 ICT を活用した国語科の深い学び B アフレコで「話し言葉」を広げる(聞くこと・話すこと)
- 4 ICT を活用した国語科の深い学び C ICT を活用して「思い」を書く(書くこと)
- 5 ICT を活用した算数科・数学科の授業づくり@ 算数科・数学科の授業づくりのポイント
- 6 ICT を活用した算数科・数学科の授業づくりA ICT を活用して量の変化を捉える(数量の基礎/数と計算)
- 7 ICT を活用した算数科・数学科の授業づくりB ICT を活用して「かたち」を多角的に見つめる(図形)
- 8 ICT を活用した算数科・数学科の授業づくりC ICT を活用したデータの意味を考える(データの活用)
- 9 ICT を活用した音楽科の深い学び @ 音楽科の授業づくりのポイント
- 10 ICT を活用した音楽科の深い学び A ICT を活用した「音あそび」の取り組み(器楽)
- 11 ICT を活用した音楽科の深い学び B 作曲アプリを活用した「音楽づくり」の取り組み(創作/作曲)
- 12 ICT を活用した図画工作科・美術科の授業づくり @ 図画工作科・美術科の授業づくりのポイント
- 13 ICT を活用した図画工作科・美術科の授業づくり A オリジナル水族館を作ろう(表現)
- 14 ICT を活用した図画工作科・美術科の授業づくり B デジタルアートを楽しもう(鑑賞/表現)
- 15 ICT を活用した体育科の授業づくり @ 体育科の授業づくりのポイント
- 16 ICT を活用した体育科の授業づくり A ICT を活用してダンスを盛り上げる(表現運動)
- 17 ICT を活用した体育科の授業づくり B ICT を活用した球技の授業づくり
- 18 ICT を活用した生活科・社会科の授業づくり @ 生活科・社会科の授業づくりのポイント
- 19 ICT を活用した生活科・社会科の授業づくり A ICT を活用して「公共サービス」を理解する(社会のしくみと公共施設)
- 20 ICT を活用した生活科・社会科の授業づくり B 「行ったことのない地域」を深く知る(日本の地理)
- 21 ICT を活用した理科の授業づくり @ 理科の授業づくりのポイント
- 22 ICT を活用した理科の授業づくり A ICT を活用して物理現象を「見える化」する(物質・エネルギー)
- 23 ICT を活用した理科の授業づくり B ICT を活用して自然のしくみを「見える化」する(地球・自然)
- 24 ICT を活用した理科の授業づくり C ICT を活用して生命の変化の過程を「見える化」する(生命)
- 25 ICT を活用した職業・家庭科の授業づくり @ 職業・家庭科の授業づくりのポイント
- 26 ICT を活用した職業・家庭科の授業づくり A 表計算ソフトで家計をシミュレーションする(家庭分野:金銭管理)
- 27 ICT を活用した職業・家庭科の授業づくり B インターネットを活用した報道局の職場体験(職業分野:職業生活)
- 28 総合的な学習の時間における ICT の活用 @ 現代社会を生きるための協働的な学びの方法
- 29 総合的な学習の時間における ICT の活用 A オンライン交流会を通した交流学習の実践
- 30 さまざまな領域・教科の学習における ICT の活用 特別活動・外国語活動・自立活動における ICT の活用
- 第3章 さまざまな障害児の ICT の活用と授業づくり
- 1 病気の子どもに対する ICT 活用と授業づくり @ 病弱教育の授業づくりのポイント
- 2 病気の子どもに対する ICT 活用と授業づくり A ロボットがつなぐ「協働的な学び」(特別活動:お祭りを楽しもう)
- 3 聴覚障害児に対する ICT 活用と授業づくり @ 聴覚障害児教育の授業の基本と環境づくり
- 4 聴覚障害児に対する ICT 活用と授業づくり A 聴覚障害児の教科指導における ICT の活用
- 5 話し言葉に困難がある子どもに対する ICT 活用と授業づくり @ 吃音のある子どもの ICT 活用と授業づくり
- 6 話し言葉に困難がある子どもに対する ICT 活用と授業づくり A 吃音のある子どもに対するさまざまな支援機器
- 7 話し言葉に困難がある子どもに対する ICT 活用と授業づくり B 場面緘黙のある子どもにおける ICT 活用と授業づくり
- 8 重症心身障害児に対する ICT 活用と授業づくり @ 重症心身障害児の授業づくりのポイント
- 9 重症心身障害児に対する ICT 活用と授業づくり A 言葉を感じる授業づくり〜ブレーメンの音楽隊〜(国語/自立活動)
- 資料 特別支援教育における ICT 活用(一覧)
はじめに
現行の学習指導要領が公示されてからすでに5年以上が経過しました。学習指導要領は10年に一度,改訂されますので,これからは,現行の学習指導要領を完全に実施することが求められると同時に,次の時代の教育実践のかたちを検討する時期にきています。
そうしたなかで,筆者は各地の特別支援学校を訪問したときに,知的障害のある子どもの「深い学び」をどのように考えればよいか,という質問を多く受けています。これまで知的障害のある子どもの教育では,「本物の生活を実際的,体験的に学ぶ」ことが重要であると考えられてきましたので,教科学習のなかで抽象的思考を働かせ,「深い学び」を実現することが求められると,とまどう声が上がることは不思議なことではありません。
加えて,特別支援教育の分野では,あらゆる教科で ICT を活用することが求められています。もともと,これまでも,障害特性への配慮(合理的配慮)の一環で,ICT を有効に活用して教材などを「見やすく」「わかりやすく」提示する方法が多く紹介されてきました。
こうした流れのなかで,2021年に出された中央教育審議会(以下,中教審)の答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して 〜全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現〜(答申)」では,ICT を有効に活用することが今後の教育実践にとって不可欠なものであることが指摘されています。特に,「主体的・対話的で深い学び」を実現するために,「ICT を活用した授業改善」の必要性が強調されていて,今後の教育実践改革の方向性が示されています。
そこで,本書では,この答申の内容をベースにして,ICT を活用して知的障害のある子どもたちの「深い学び」を実現する授業づくりについて解説します。具体的には,知的障害児の教科学習に ICT を活用すると,子どもの学びはどのように変化するのかについて述べていきたいと考えます。
もちろん,単に ICT を授業に取り入れれば,新しい教育実践が開発できるわけではありません。そのため,本書では,ICT の活用方法をただ紹介するのではなく,ICT の活用が一人ひとりの実態や興味に即した学び(個別最適化された学び)にどのようにつながり,かつ,「協働的な学び」の促進にどのように寄与するのかという点が明確になるように執筆しています。
このように,「令和の日本型学校教育」で求められている実践は,ICT を効果的に活用して「個別最適化された学び」と「協働的な学び」が織り合わさったものであると考えます。多くの学校現場では,実践課題が山積するなかで,新しい授業のかたちを模索することは心理的に大きな負担となることが予想されます。そうしたなかで,本書がICTを活用した授業づくりに少しでも貢献でき,令和の時代の新しい教育実践のかたちを切り拓く契機となれば幸いです。
2024年7月 執筆者を代表して /新井 英靖
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- 明治図書
- 特別支援教育のICT化を進める上で、理論的にこんなに分かりやすい書籍はありません。これからの時代の特別支援教育を考える上で必読書です。2024/9/8太陽の子
- 特別支援教育で課題である深い学びにつながる教育をICTを用いて解説してある2024/8/1650代・男性