- まえがき
- 第1章 子どもの「問い」で展開する国語授業づくり
- 1 学習者の「問い」を中心にした国語の授業づくり
- 2 「問い」を問う
- 3 問うことの価値を実感できる授業にしていくために
- 4 授業づくりのポイント@ 「問い」を「もたせる」
- 5 授業づくりのポイントA 「問い」の追究における対話
- 6 授業づくりのポイントB 「問い」の追究における思考や学びの自覚を促す「書く活動」
- 7 「話すこと・聞くこと」の単元における「問い」の追究
- 8 「書くこと」の単元における「問い」の追究
- 9 「読むこと(説明的文章)」の単元における「問い」の追究
- 10 「読むこと(文学的文章)」の単元における「問い」の追究
- 11 学習経験や学年に応じた指導のステップ
- 第2章 学年別 教材の分析とポイントでわかる子どもの「問い」を引き出し展開させる国語授業
- 第1学年の指導ポイント
- 表現の違いから「問い」をもち、「比べる」「具体的に想像する」思考を働かせる
- はなのみち
- つぼみ
- おおきなかぶ
- やくそく
- くじらぐも
- しらせたいな、見せたいな
- じどう車くらべ
- たぬきの糸車
- おかゆのおなべ
- どうぶつの赤ちゃん
- ずうっと、ずっと、大すきだよ
- いいこといっぱい、一年生
- 第2学年の指導ポイント
- 共通点と差異点から「問い」をもち、「詳しく想像する」「比べる」「順序立てる」思考を働かせる
- ふきのとう
- たんぽぽのちえ
- スイミー
- あったらいいな、こんなもの
- 雨のうた
- どうぶつ園のじゅうい
- お手紙
- 紙コップ花火の作り方/おもちゃの作り方をせつめいしよう
- みきのたからもの
- ロボット
- すてきなところをつたえよう
- スーホの白い馬
- 第3学年の指導ポイント
- 「抽象と具体との関係」に着目し、「分類する」「まとめる」思考を働かせる
- 文様/こまを楽しむ
- まいごのかぎ
- 仕事のくふう、見つけたよ
- こんな係がクラスにほしい
- ちいちゃんのかげおくり
- おすすめの一さつを決めよう
- すがたをかえる大豆/食べ物のひみつを教えます
- 三年とうげ
- ありの行列
- たから島のぼうけん
- お気に入りの場所、教えます
- モチモチの木
- 第4学年の指導ポイント
- 「全体と部分との関係」に着目し、「分類する」「結び付ける」思考を働かせる
- もしも、こんなことができるなら
- ヤドカリとイソギンチャク
- 走れ
- 広告を読みくらべよう
- お願いやお礼の手紙を書こう
- 一つの花
- くらしの中の和と洋
- ごんぎつね
- ブックトークをしよう
- 数え方を生み出そう
- 調べたことをほうこくしよう
- 世界一美しいぼくの村
- 第5学年の指導ポイント
- 「描写」や「主張と事例との関係」に着目し、「関係付ける」「評価する」思考を働かせる
- 銀色の裏地
- きいて、きいて、きいてみよう
- 見立てる/言葉の意味が分かること
- みんなが使いやすいデザイン
- たずねびと
- よりよい学校生活のために
- 固有種が教えてくれること/自然環境を守るために
- やなせたかし―アンパンマンの勇気
- あなたは、どう考える
- 想像力のスイッチを入れよう
- 大造じいさんとガン
- 天気を予想する
- 第6学年の指導ポイント
- 「文章の構成・表現」に着目し、「抽象化する」「多面的・多角的に見る」思考を働かせる
- たずね合って考えよう
- いざというときのために 風切るつばさ
- インターネットの投稿を読み比べよう
- 心の動きを俳句で表そう
- 話し合って考えを深めよう
- 「永遠のごみ」プラスチック
- 発信しよう、私たちのSDGs
- 海のいのち
- 宇宙への思い
- 伝えよう、感謝の気持ち
- 君たちに伝えたいこと/春に
まえがき
社会の在り方そのものが大きく変わる Society5.0時代が到来しようとする現在、学習者が多様な他者と協働しながら、個別最適な学びを進めていく「令和の日本型学校教育」の構築が目指されています。そのような中、全国の教室では従来の教師主導型、一斉型の学習スタイルが見直されつつあり、個々の学習者のもつ「問い」を中心に展開する授業の在り方に注目が集まっています。
「問い」は、学習の「起点」となるだけでなく、学習の中で更新され、展開の「柱」にもなります。学習者の中から純粋に湧いてきた「問い」だけを取り扱って授業が展開できれば理想的ではありますが、実際には難しいところです。なぜなら、授業には指導目標があり、各単元で指導できる時間が限られているからです。学習者から出された「問い」をすべて取り扱っていると、話題が違う方向へ展開したり、解決までにかなりの時間を要したりしてしまうことがあります。それでも年間を通して根気強く取り組んでいくことで、学習者の「問い」や対話の様相は少しずつ、そして確実に変化していくのですが、そこまで至るには専門的力量をもった教師の継続的な指導も必要になってきます。
そこで、本書で取り扱う学習者の「問い」は、小学校国語科の指導内容へとつながるような教師の意図が含まれるものとして設定しました。そうすることで、各単元の限られた時間の中で、児童に自分たちの「問い」で授業が展開することのおもしろさを感じさせるとともに、指導内容を意識させ身に付けさせることができると考えたからです。教師は手立てを講じて、児童に指導のねらいの範疇での「問い」を自由にもたせて追究させていきます。課題やテーマの下で各児童の具体的目標が「問い」となることもあるでしょう。そうして、児童に「問い」をもって学ぶことの意味や方法を段階的に学ばせていくようにします。
本書は、二〇二三年四月から二〇二四年三月まで雑誌『教育科学国語教育』に連載した「今月の子どもの「問い」から展開する授業づくり」の内容に加筆修正を加えたものです。第1章では理論編として、国語科の各領域における児童の「問い」で展開する授業の構想の仕方や指導のポイントについて解説します。その後の第2章では実践編として、各学年における指導のポイントや一年間の教科書教材に応じた具体的な展開例について紹介しています。
児童の「問い」で展開する授業づくりを実現していくのは、容易なことではありません。実践編を執筆した先生方もまた、「問い」で展開する授業に挑み、失敗を繰り返してきました。そうして、実践の中で児童の姿から学び取ったことを言葉にしています。そうした意味でも、本書が読者の皆様の「児童の『問い』で展開する授業づくり」に向かう後押しとなれば幸いです。
/立石 泰之
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- 明治図書