- はじめに
- Chapter1 子供に伝わる教師の言葉かけスキル
- 1 体育における言葉かけの種類
- 2 言葉かけ100回は嘘?!
- 3 言葉かけに関する論文
- 4 自分の言葉かけを磨く方法
- 5 学級経営に結び付く言葉かけ
- 6 子供が主体的に動く体育とは?
- 7 いつ,どんなことを言えばよいのか
- 8 パターンを決める
- 9 ノンバーバルで伝える
- 10 伝わる!効果的な言葉かけのポイント
- 11 三つの資質・能力に合わせた言葉かけ
- 12 知識及び技能に関する言葉かけ
- 13 思考力を育む言葉かけ
- 14 表現力が身に付く言葉かけ
- 15 安全に気を付けたくなる言葉かけ
- 16 態度面を意識させる言葉かけ
- 17 ICT を活用した言葉かけ
- 18 支援を要する子への言葉かけ
- 19 見学をしている子への言葉かけ
- 20 保護者を巻き込む言葉かけ
- 21 言葉かけを鍛える修業法
- 22 ファシリテーション @「やってごらん」
- 23 ファシリテーション A「選んでごらん」
- 24 ファシリテーション B「つくってごらん」
- 25 体育授業ですぐ使える資質・能力別の言葉かけ9選
- Chapter2 子供が主体的に動きたくなる!体育教師の変換言葉50
- 知識及び技能を育む変換言葉
- 1 動きのポイントを見付けるとき @上手なところはどこですか。 → Aですか。Bですか。
- 2 動きのポイントを見付けるとき A動きをよく見なさい。 → スロー再生をするよ。
- 3 運動していることを激励するときだから言ったでしょう。 → 大丈夫だった?
- 4 動きのコツを意識するとき今こうだったよ。 → 今,何をしたの?
- 5 動きのポイントを共有するときAさん,お手本どうぞ。 → Aさん,みんなの前でもう一度お願いしてもよいですか。
- 6 動きのポイントを再確認するときポイントは○○だよ。 → ○○はどうするんだっけ?
- 7 具体的なめあてを示すときがんばりなさい。 → あと○○速くしよう。/あと○○高くしよう。
- 8 タイミングを具体的に表すときタイミングよく! → 「今!」と声をかけよう。
- 9 動きのポイントを音の違いで理解するとき○○します。 → ○○という音を出そう。
- 10 ボールを持たない動きを身に付けるとき動け!動け! → ストップ!
- 11 成長を評価するときよかったよ! → 前よりよくなったね!
- 12 行い方の確認をするときこのルールです。 → 何かルールで困ったことはありますか。
- 13 動きを比べてポイントを見付けるとき友達との違いはどこですか。 → 先生と比べてできているところはどこですか。
- 14 前時の振り返りで本時の課題をつくるとき今日は○○をします。 → 振り返りを紹介します。
- 15 自分の達成度を確認するとき自分のできばえはどうですか。 → 自分のできばえは何点ですか。
- 思考力,判断力,表現力等を育む変換言葉
- 16 課題を選んだ理由を言うときこの課題にしたんだね。 → どうしてこの課題にしましたか。
- 17 課題を解決するための練習をしているときいいね!この調子だよ。 → ここで練習をしている理由は何ですか。
- 18 子供と規則の一部をつくるとき規則を守ります。 → やってみて必要な規則はありますか。
- 19 状況判断を身に付けるとき○○しなさい。 → ○○のときはどうしますか。
- 20 自分の課題を選ぶとき考えなさい。 → どの○○にしますか。
- 21 自分の課題をお手本と比べるときどこが課題ですか。 → 比べてみよう。
- 22 自分のチームに合った規則を選ぶとき規則を考えます。 → 自分のチームに合った規則はどれですか。
- 23 自分の動きのできばえを理解するとき比べます。 → どの方法で比べますか。
- 24 守り方を選ぶとき守り方を考えなさい。 → どの守り方にしますか。
- 25 個人やチームの動き方を考えるとき試合をします。 → 試合前に動きを予想します。
- 26 友達に動きを伝えるときアドバイスをしよう。 → 見たことを伝えよう。
- 27 前時の振り返りを生かすとき前回は何をしましたか。 → こんなときどうしますか。
- 28 お手伝いをしながらポイントを共有するとき支えます。 → 支えながら何を考えたの?
- 29 友達の良さを伝えるとき友達のよいところを言います。 → 友達の○○はどうでしたか。
- 30 友達同士で良さを伝えるとき(教師が)いいね! → (友達が)○○がいいね!
- 31 運動のポイントを発見するときどうすればよいですか。 → どこを見ればよいですか。
- 32 友達同士がぶつからないようにしたいときまっすぐ進みます。 → 一方通行です。
- 学びに向かう力,人間性等を育む変換言葉
- 33 運動に安全に取り組むとき危険です! → それって安全かな。
- 34 勝ち負けを受け入れるとき負けても文句を言いません。 → 負けたとき,どうしますか。
- 35 ふざけて友達に迷惑をかけているときいい加減にしなさい。 → よくなかったことはどれかな。
- 36 何度も運動に取り組むときたくさん動きます。 → 額に汗をかきましたか。
- 37 運動に楽しく取り組みたいとき楽しくないのは君が悪いよ。 → 楽しめないのはどうしてかな。
- 38 誰とでも仲良く運動させたいとき仲良くしなさい。 → 仲良しレベルはいくつですか。
- 39 見付けた動きの良さをみんなに伝えるとき並びなさい。 → 写真隊形です。
- 40 待ち方を教えるとき見ていなさい。 → 数を数えよう。
- 41 見学の仕方を教えるとき見学します。 → 先生が声をかけた人を数えよう。
- 42 見通しをもたせるときこの学習で進めます。 → この学習でできるようになりたいことは何ですか。
- 43 単元の目的を設定するとき○○を学びます。 → この学習のテーマをどうしますか。
- 44 すばやく整列させたいとき並びなさい。 → 1列目は○線です。
- 45 友達の考えや行動を受け入れるとき拍手をします。 → 相手のためにどんなことができますか。
- 46 動きを学ぶ意義を示すとき次は○○です。 → 何か動きで困ったことはありますか。
- 47 友達の考えを認めるとき友達の考えを受け入れなさい。 → 友達の考えを受け入れるとはどういうことですか。
- 48 誰とでも仲よく運動させたいときけんかをやめなさい。 → けんかした後が大事だよ。
- 49 用具の準備や片付けをするとき片付けます。 → 自分が準備したものを片付けます。
- 50 雰囲気をよくする言葉を増やしたいとき応援しよう。 → どんな言葉を増やしたいですか。
はじめに
「子供のことを考えて言葉かけをしていますか」
尊敬する先生から言われたことです。
若手のときに,「1時間の授業で言葉かけを100回するとよい」と聞きました。単純な私は,とにかく子供に「いいね!」「すごいね!」と言葉かけをしました。
ある研究授業で,「言葉かけ300回」という結果を出しました。これで子供のやる気も高まったでしょう!と自画自賛していました。ところが,子供の振り返りカードを読むと,ショックな結果でした。
「先生から声をかけてもらいましたか」という項目で,ほとんどの子が「いいえ」と回答しました。声をかけてもらったと答えた子でさえも「先生から何を言われたのか覚えていません」という回答でした。
そのときに,尊敬する先生に冒頭の言葉を言われました。
「子供の学習状況に適した言葉かけをする必要があります」
量も大事だけど,質も意識しなければならないと。
「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)」(中教審)に,ファシリテーション能力が改めて強調されました。ファシリテーションには,「促進する」「助長する」という意味があります。教師におけるファシリテーションは,子供に知識を与えるだけではなく,子供の姿を見ながら言葉をかけることで,子供自らが新しい考えや問題を解決することを発見することができます。
だから,教師は子供が学んでいる姿に応じて言葉をかけていく必要があります。
言葉かけの数だけではなく,言葉かけの質も教師の技術としてもっておくとよいかと思います。本書は,三つの資質・能力に応じた言葉かけができるような内容になっています。皆様のお力になれればと思います。
2024年7月 /工藤 俊輔
見開きページに1つずつ、イラスト付きでイメージしやすいのもよいです。