- はじめに
- 第1章 通級指導教室に求められる指導と支援
- 01 通級指導教室の役割
- 02 「個別の指導計画」作成の流れ
- 第2章 通級指導教室で行う自立活動の実践
- 小学校【学習障害】01 読むことが苦手な子どもへの指導
- 小学校【自閉症】02 固執性(こだわり)のある子どもへの指導
- 小学校【自閉症】03 感情のコントロールが苦手な子どもへの指導
- 小学校【自閉症】04 心情の理解が苦手な子どもへの指導
- 小学校【注意欠陥多動性障害】05 周囲の状況を理解することが苦手な子どもへの指導
- 小学校【注意欠陥多動性障害】06 注意集中が苦手な子どもへの指導
- 小学校【注意欠陥多動性障害】07 身体の動きに課題のある子どもへの指導
- 小学校【情緒障害】08 選択性かん黙の子どもへの指導
- 中学校【学習障害】09 書くことが苦手な子どもへの指導
- 中学校【自閉症】10 不安傾向の高い子どもへの指導
- 資料
- 1 通級指導教室担当者全体研修会@(演習 個別の指導計画の作成)
- 2 通級指導教室担当者全体研修会A(授業場面の動画を用い,ディスカッション形式で行う授業研究)
- 3 令和2年度東京都教師道場 部員による授業公開 自立活動学習指導案
- 4 令和3年度東京都教師道場 部員による授業公開 自立活動学習指導案
- おわりに
- 執筆者一覧
はじめに
2019年3月に,調布市公立小学校研究会の特別支援教育部で『通級担当1年目からの疑問にこたえるQ&A』(明治図書)を出版していただいてから3年が経ちました。通級指導を受ける児童生徒数は,全国的に未だ増加傾向が続いており,通級指導を担当する教師の専門性向上は相変わらずの課題となっています。調布市においても通級指導の充実が図られています。小学校における通級指導を受ける児童数はある程度一定化し,指導の成果により状態の改善が見られ,通級指導を終了する児童も増えています。一方で,中学校における通級指導を受ける生徒は,まだ増加傾向にあります。
東京都では,発達障害等の通級指導を,拠点校から担当教師が各学校を巡回して指導を行う「特別支援教室」という形で実施しています。調布市では平成24年度から,東京都の施策に基づく巡回型の通級指導を開始し,10年が経過しようとしています。この間には,前代未聞の新型コロナウイルス感染症の拡大があり,社会に影を落としました。通級指導を受けている児童生徒も,普段と異なる日常生活や,様々な不安を引き起こす情報等により大きな影響を受けています。しかし,国の施策であるGIGAスクール構想により,思いのほか速いスピードでタブレット端末が普及しました。発達障害のある児童生徒の支援機器としても期待が高まっています。これを一人一人の状態に応じて活用していくことも今後の通級指導の役割の一つになるでしょう。
前回の出版本は,Q&A式で通級指導を考えていきましたが,今回は,指導事例について深く検討することとしました。自立活動の個別の指導計画を作成する部分にこだわり,『特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編』にある手順に沿って検討しました。様々な児童生徒を対象とするため,指導している多くの事例の中から代表的な事例に絞り,1単位時間の指導だけではなく,単元という一定期間の指導計画も掲載しました。今回は,市内の中学校の通級指導教室からも事例を検討していただき,小学校の通級指導との連携がわかる内容となりました。この研究会で行った事例検討は,市内の自閉症・情緒障害等の通級指導拠点校10校(小学校8校,中学校2校)の指導内容の共有化にもつながっています。
通常の学級に在籍しながら部分的に指導を受けられる通級指導は,インクルーシブ教育システムの構築に向けて,大きな鍵を握ると考えます。今後,通級指導の実践がさらに進み,共生社会の実現に大きく近付くことを期待しています。
編著者 /山中 ともえ
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- 明治図書
- 自立活動の計画を立てるときに参考になった。事例も具体的でわかりやすかった。2022/10/250代・小学校教員