- はじめに
- 第1章 問題提示×発問の可能性
- 1 学習指導要領改訂から7年
- 2 数学的活動と問い
- 3 発問と数学的な見方・考え方の関連
- 4 心理的安全性と問題発見
- 5 問題提示×発問で子どもの問いを生起する
- コラム 問題提示と発問
- 第2章 算数授業と問題提示
- 1 問題提示,本当にそれでいいの?
- 2 問題と問題提示
- 3 シツエーションとは
- 4 シツエーション×アフォーダンス
- 5 教科書アレンジとは
- 6 教科書アレンジの活用
- 教科書アレンジの実践@(1年/数の石垣) きまりを仕組む,パズル形式にする
- 教科書アレンジの実践A(3年/かけ算) 条件を変える,条件を決めさせる
- 教科書アレンジの実践B(3年/わり算) オープンエンドにする
- 教科書アレンジの実践C(5年/偶数と奇数,倍数と約数) ゲーム化する
- 7 問題提示からの問題発展
- コラム 問題提示の失敗
- 第3章 算数授業と発問
- 1 発問,本当にそれでいいの?
- 2 望ましい発問
- 3 発問=教師の「問うべき問い」
- 4 「問うべき問い」の具体
- 5 意識的に投げかけたい4つの発問
- 発問の実践@(4年/面積) 根拠を問う問い「なんで?」
- 発問の実践A(5年/四角形と三角形の面積) 統合的な考えを促す問い「共通点は?」
- 発問の実践B(3年/かけ算) 発展的な考えを促す問い「もしも…だったら?」
- 発問の実践C(2年/かけ算(2)) 発想の源を問う問い「どうしてそうしようと思ったの?」
- コラム 発問の失敗
- 第4章 算数授業と子どもの問い
- 1 問いとは何か
- 2 問いの役割と源
- 3 子ども自らが「問うべき問い」を問うことができるように
- 4 教師の「メタ的な『問うべき問い』」
- 5 教師の「メタ的な『問うべき問い』」の具体
- 教師のメタ的な「問うべき問い」の実践@(2年/分数) 「えっ?」「本当に?」「絶対に?」
- 教師のメタ的な「問うべき問い」の実践A(3年/三角形と角) 「たまたまじゃないの?」
- 教師のメタ的な「問うべき問い」の実践B(5年/図形の角) 「つまり?」「だったら?」
- 教師のメタ的な「問うべき問い」の実践C(4年/簡単な場合についての割合) 「この子の気持ちがわかるかな?」
- コラム 子どもの問いにこだわり過ぎた失敗
- 第5章 問題提示×発問=子どもの問い 子どもの問いで創る算数授業
- 1 問題提示×発問=子どもが算数を創る授業
- 2 子どもの問いを生かす板書
- 3 子どもの問いを生かす1人1台端末の活用
- 問題提示×発問の実践@(6年/分数のかけ算とわり算) きまりを仕組む×「たまたまじゃないの?」
- 問題提示×発問の実践A(2年/たし算とひき算のひっ算) 条件を変える,条件を決めさせる×「どうしてそうしようと思ったの?」
- 問題提示×発問の実践B(3年/あまりのあるわり算) オープンエンドにする×「だったら?」
- 問題提示×発問の実践C(4年/わり算) ゲーム化×「えっ?」「本当に?」「絶対に?」
- コラム 子どもが算数を創る授業の失敗
- おわりに
はじめに
生涯一授業人
これは,現在の私の目標であり,モットーです。
皆さんは,子どもたちと授業をすることが好きですか?
私は大好きです。
下の板書は,3年「小数」の単元の,ある一斉授業のものです。
(写真省略)
11月半ばに行われた授業ですが,子どもたちが数学的な見方・考え方を自覚的に働かせ,豊かにしていく様子が伝わってきます。「小数のたし算の仕方(原問題:0.3+0.2)」を子どもたちが創っていることを実感できた授業でもありました。
きっかけは,ある子どもの「3+2に似ている」という発言でした。この発言が,「どうやったら3+2にみえるの?」という「子どもの問い」になったのです。最終的にこの問いは,既習(10や100をもとにする)と未習(0.01や0.001をもとにする)をつなぐ架け橋にもなりました。
その翌日,下記板書の個別学習の授業をしました。
(写真省略)
個別学習とは,子どもに学びを委ねる形態の授業です。数学的な見方・考え方(本学級では「着目ポイント」と呼んでいます)を常に意識し,新しい問題でも活用できるかどうかについて自分たちで考えていきました。
以下,ある子どものまとめです。
今日大事だったことは,単位の考えです。小数のたし算でもひき算でも0.1をもとにして考えれば,簡単に計算することができました。自分で問題を発展させてみても,やはり同じでした。
「自ら問い,自ら考える(自問自答の過程)」様子が,まとめからもわかります。
私は,一斉授業であろうが,個別学習であろうが,上述のように,子どもたちと算数を創っていく授業が特に大好きです。これからもずっと算数の授業をし続けたいです。そして,これらを支えている教師の技術が「問題提示」と「発問」だと考えています。
さて,自己紹介が遅くなりましたが,埼玉県さいたま市で小学校教員をしています,天野翔太と申します。SNSでは「天治郎」と名乗って,X(旧Twitter)を中心に発信をしています。ときどき,自校でも「天治郎先生!」と呼ばれます。
右のアイコンを見たことがある方がいらっしゃれば,大変うれしいです。最近は学校外に出る際に眼鏡をかけているのですが,学級の子どもたちからは不評です(笑)(アイコン省略)
さて,学校教育において,子どもたちが過ごすほとんどの時間は授業です。だからこそ,教師の本来の仕事は,授業だと言えます。
一方で,年々課せられる様々な〇〇教育,時代の変化などによって,教材研究の時間を勤務時間内に確保することができなかったり,事務処理等多すぎる業務に追われ,授業を楽しむことができなかったりする実情が散見されます。働き方改革が声高に叫ばれるようにはなりましたが,現状はあまり変わってはいないのではないでしょうか。
私自身は,最大の働き方改革は,「知的に楽しい授業」をすることだと考えています。「授業づくりと学級づくりは両輪」とよく言われますが,知的に楽しい授業ができるようになれば,学級は安定していきます。学級が安定していくにつれ,子どもたちは学びを楽しむことができるようにもなります。結果として,教員の働き方をポジティブに改革していくことができるのです。
本書は,「知的に楽しい算数の授業づくり」のお力添えができるよう執筆いたしました。「問題提示」と「発問」の理論をベースに,全学年の実践事例を掲載しています。明日の授業からすぐに生かすことができると考えています。
ところで,読者の皆さんはどんな研究を進めていますか。
〇心理的安全性×学級経営
〇算数の授業づくり
〇哲学対話を取り入れた道徳の授業
〇1人1台端末の文房具化
〇PBL×Minecraft Education
ここ数年の私は,上の5つを実践研究しています。本書にも,「心理的安全性」や「1人1台端末の文房具化」の話が出てきます。
多いように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが,実はこの5つには共通点があります。詳細は省きますが,それは次のことです。
子どもの問いに基づく
共感していただけるでしょうか。これは,本書のテーマでもあります。
「子どもの問い」については,教職に就いてからずっと研究・実践してきました。質が大きく変わったのは,大学の長期研修に行ってからです。
長期研修では,次のような,私の問いを深く追究することができたのです。
〇子どもの問いとは何か?
〇子どもの問いを引き出すために大切なことは?
〇子どもの問いを引き出す手立ては?
〇子どもが自ら問い,自ら考えることができるようにするためには?
本書は,そこからさらに研究・実践を積み重ねた,現時点での私の算数の授業づくりの集大成とも言える本になっていると考えています。
長い「はじめに」をしっかりと読んでくださり,本当にありがとうございます。本書を通して,皆さんの算数の授業が「知的に楽しい授業」になることを願っています。
2025年2月 天治郎こと /天野 翔太
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- 明治図書