- はじめに
- CHAPTER1 「タスク」とは?-TBLT の理論と基本的な考え方-
- 01 これからの時代に必要な英語教育とは?
- 02 「タスク」とは何か?
- 03 TSLT の発想を生かしてタスクを授業に取り入れよう
- 04 タスクにまつわる疑問や不安
- CHAPTER2 日本の英語教育でタスクの発想をどう生かす?
- 01 学習指導要領とタスク
- 02 「言語活動」とタスク
- 03 検定教科書とタスク
- 04 「思考ツール」の活用
- 05 ICT の活用
- 06 タスクと評価
- CHAPTER3 タスク・言語活動を成功に導く授業の組み立て方
- 01 タスクをデザインする4 STEPS
- 02 タスクを見据えて Backward Design でつくる指導・評価計画
- 03 「生きて働く知識・技能」を育成する授業
- 04 「タスクへの橋渡し」となる授業内活動(1)
- 05 「タスクへの橋渡し」となる授業内活動(2)
- CHAPTER4 タスクの要素を生かした言語活動アイデア
- 01 【中学1年】Find the Fake Information
- 「フェイク」を見破れ!
- 02 【中学1年】Post Comments on Social Media
- SNS に自分の記事をあげて友達の記事に質問やコメントを残そう
- 03 【中学1〜3年】Describe What is Happening in the World
- 今,世界では何が起きている?
- 04 【中学1〜2年】Dream School Rules
- 生徒会役員になって「夢の校則」をつくろう
- 05 【中学1年】My Ideal Ekiben
- 私の「理想の駅弁」を発案してプレゼンテーションをしよう
- 06 【中学2〜3年】Weekend Plan
- クラスメイトと話し合って週末のお出かけプランをつくろう
- 07 【中学2年】Travel Agents
- 旅行代理店スタッフとして外国人旅行客に最適な行き先を提案しよう
- 08 【中学1年〜高校3年】Put Pictures in the Story Order
- バラバラになった絵をストーリーの流れに沿って正しく並べよう
- 【コラム】生成 AI を活用したテスト問題作成の手順
- 09 【中学1年〜高校2年】The First Take
- 音読を「一発録り」してオンライン配信しよう
- 10 【中学2年〜高校2年】Explanation Game
- ものごとについて英語で説明してパートナーを正解に導こう
- 11 【中学2年〜高校2年】Reply to Foreign Friend
- メール文の内容を踏まえて海外に住む友達に返信を送ろう
- 12 【中学3年〜高校2年】30-sec. Commercial
- 30秒 CM でオリジナルのスマホアプリを紹介しよう
- 13 【中学2年】Plan Your Original Charity Event
- チャリティーイベントを企画してオンライン広告を作成しよう
- 14 【中学2年〜高校3年】Book Recommendation
- 洋書を読んでその本を推薦するポスターをつくろう
- 15 【中学1〜3年】English Haiku
- 英語で俳句を書こう
- 16 【中学3年】Discover Japan
- 日本文化を紹介するパンフレットをつくろう
- 17 【中学3年〜高校2年】Introduce Japanese Local Cuisine
- 日本のローカルフードを紹介しよう
- 18 【高校3年】Discussion : What is the Benefit of Learning Foreign Languages?
- 外国語を学ぶ利点は何だろう?
- CHAPTER5 授業の枠を超えた英語教育の可能性
- 01 【外部連携型】感謝の気持ちを込めてクリスマスカードを送ろう
- 02 【総合学習型】自作英語絵本の読み聞かせ交流会
- 03 【地域連携型】外国人旅行客に観光地を紹介しよう
- 04 【プロジェクト型】海外の学校とのオンライン交流
- おわりに
- 引用・参考文献一覧
はじめに
未来の世界を創造する生徒を育てるこれからの英語教育とは
「VUCA の時代」と呼ばれる現代において,未知の課題に取り組むために必要な資質・能力を育成することは喫緊の教育的課題の1つです。教室で学んだことが実社会での課題解決に繋がるような授業デザインが重視されています。世界的な対立や紛争も後を絶たず,海外の人々との良好な関係構築という点において,英語教育が担う役割は決して小さくはないでしょう。こうした時代の変遷に伴って改訂される学習指導要領においては,資質・能力の育成のための「言語活動の充実」がより強調されることになりました。日本の英語教育はこの先どのような道に進むべきなのでしょうか。
この問いに対峙した際に着目したのが「タスク」及び TBLT です。実際の世界でも起こり得るような自然な言語使用を促す活動に取り組むことで,教室外でも生かせる資質・能力を育てることができるのではないか,その活動を通して力を付けた生徒が将来,実社会における諸問題を解決することに繋がるのではないか,と筆者は考えたのです。また「タスク」には,生徒の目が輝くような活動をつくるヒントがたくさん隠れています。そういったタスクの要素を生かして試行錯誤しながら活動を考案し,中学校と高等学校の授業で試行してきました。
本書では,これまでに筆者が実践してきたタスク・言語活動とともに,その背景にある理論や先行研究を紹介します。意識したのは理論と実践の往還です。現職教員ならではの現場感覚を生かしつつも,理論を踏まえて活動を検討してきた筆者の思考の過程を追体験すると思ってお読みいただければ幸いです。「タスクって何だろう?」「TBLT の理論って難しいのかな…」と悩まれているような,理論などの背景知識を学びたい方にも有益かと思います。
タスク活動のアイデアがなかなか思い付かないという先生にもおすすめです。「言語活動」のアイデアを紹介する書籍は数多くありますが,タスクの要素を生かした日本における活動例を掲載する書籍はあまり多くはないように思います。これからご自身でタスクや言語活動を考える際のヒントになるでしょう。なお,中高一貫教育校に勤務した筆者の経験を生かして,中学校の先生のみならず高等学校の先生にも,さらには小学校の先生にもお読みいただける本になるように意識しました。
次に本書の構成を紹介します。CHAPTER1では,タスク及び TBLT の基礎知識と理論を説明するとともに,その周辺で論じられることが多い課題について紹介します。CHAPTER2では,日本の英語教育におけるタスクの位置付けや活用の可能性について,学習指導要領などを根拠に探ります。CHAPTER3では,タスク及び言語活動を実現するために普段の授業でどのような工夫が必要になるのかについて,筆者の実践例を踏まえて紹介します。続くCHAPTER4では,タスクの要素を生かした言語活動のアイデアを具体的に紹介します。最終章では,タスク及び言語活動で育成してきた資質・能力を生かすことができる場として,英語授業の枠を超えた実世界における活動の例を4つ紹介します。
本書を執筆する過程でこれまでの実践を振り返り,ともに授業をつくり上げてきてくれた生徒たちの存在の偉大さを再認識しました。彼らの好奇心,情熱,そして課題に前向きに挑戦する姿勢は,私が教師として成長し続けるための原動力です。本書に載せた数多くの活動は,生徒一人ひとりの努力と挑戦の賜物であることを,読者の皆様にもご認識いただければ幸いです。
最後に,この本がこれからの日本の英語教育のさらなる発展に寄与することを心から願っています。読者の皆様に,本書を通してタスクや言語活動への理解を深めていただき,生徒たちの英語学習がより実践的で意義深いものになることを期待しています。
皆様にとって,本書が有益な1冊でありますように。
2024年5月 /高杉 達也
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- 明治図書
- 理論と実践がちょうどよいバランスで書かれていて、大変わかりやすかったです。具体例が示されていて、すぐに自分の授業に活かすことができました。大変よい内容のものだと思いました。2024/11/940代・中学校管理職
- タスクに関しては様々な書籍が出版されているが、現場の先生が使いやすい、チャレンジしてみたくなるようなタスクが多く掲載されている点で本書は秀逸であると感じた。2024/7/13kazu