- はじめに
- 序章 問い返し発問を用いる教師の根底にあるもの
- 1 「問い返し発問」のある授業
- 2 授業づくりで,問い返し発問を用いる必要はあるの?
- 3 授業づくりにおける問い返し発問の位置づけ
- 4 教育実習生が問い返し発問をできるようになるまでの教師修行
- 5 どんな子どもの言葉を取り上げ,問い返し発問をするの?
- 1章 問う子どもの姿を引き出す問い返し発問
- 1 「〜」と言って,困っていた人の気持ち,わかる?
- ―既習とのズレに焦点を当てる
- 2 「わからない」って,どうして?
- ―美しさを求める子どもの思いに焦点を当てる
- 3 「このままだとわからない」という人がいますが,どうしたらいいかな?
- ―隠すことから,解決の見通しに焦点を当てる
- 4 困っている人がいるんだけど,ヒントを出せる?
- ―解決に向けての着眼点に焦点を当てる
- 5 わかったという人は,どうやって考えたのだろう?
- ―ぱっと見てわかる解決方法に焦点を当てる
- 6 〜の式をAの文章題と考えた人の気持ち,わかる?
- ―似て非なる文章題の意味の違いに焦点を当てる
- コラム 子どもの心を揺らし,自ら問う姿を引き出す
- 2章 子ども同士のつながりをつくり,共に学ぶ姿を引き出す問い返し発問
- 7 Aさんが面白いことを考えていました。「…」は,どういうことでしょう?
- ―机間指導を生かし,友達の思考を探る場を設ける
- 8 Aさんは,どうして〜をしたのか,わかる?
- ―発想の源について探ることを促す
- 9 「えっ?!」と言った人の気持ち,わかる?
- ―友達の違和感について探る場を設ける
- 10 どうして,〜が…になるの?
- ―きまりに着目し,説明する場を設ける
- 11 どうして,〜は絶対に「…」と言えるの?
- ―まず,容易に説明できる考えに焦点を当てる
- コラム 友達とのつながりを強められる子どもを育む
- 3章 子どもの語り始めの言葉から,共に思考を深める姿を引き出す問い返し発問
- 13 「だって,…」と言ったAさんの気持ち,わかる?
- ―理由や根拠,発想の源について,解釈を促す
- 14 Aさんが「でも,…」と言っていたんだけど,気持ち,わかる?
- ―矛盾や否定を含む理由について解釈を促す
- 15 「もし,…だったら」と言ったAさんの気持ち,わかる?
- ―発展,整理,一般化を図る考えの解釈を促す
- 16 Aさんが言った「だったら,…」って,どういうことか,わかる?
- ―発展や活動の先にかかわる考えの解釈を促す
- 17 「たとえば,…」と言ったAさんの気持ち,わかる?
- ―自分のわかり方に置き換えた考えの解釈を促す
- コラム 子どもの思考過程が見える教師になる
- 4章 数学的な見方・考え方を広げる子どもの姿を引き出す問い返し発問
- 18 どうして,いつも〜になるのだろう?
- ―立ち止まる状況をつくり,一般化を図る
- 19 この答えを出した人の気持ち,わかる?
- ―答えの理由や根拠 ,思考過程を探る場を設ける
- 20 この式は,どうやって考えたのだろう?
- ―「式」を読む場を設ける
- 21 この線分図は,どうやって考えたのだろう?
- ―線分図や数直線などについて読む場を設ける
- 22 Aさんは,どうして数ブロックを…のように動かしたのだろう?
- ―操作表現を探る場を設ける
- 23 (図形を示して)どうやって考えたのか,わかるかな?
- ―補助線が引かれた図形について読む場を設ける
- コラム 問い返し発問は,「引き出す」を軸にした発問
- 5章 学級全員が授業に参加するための問いかけ・指示 〜子どもの反応を受けて〜
- 24 〜が…と思う人はグー,〜が…と思う人はチョキを出します。せーの
- ―自分の立場や考えを決める場を設ける
- 25 Aさんが言ったことをわからないよ,という人?わかったよ,という人?
- ―友達の考えを理解できたか,判断を促す
- 26 Aさんが言ったことはどういうことかな?隣の友達にお話ししましょう
- ―友達から受け取った考えを外化する場を設ける
- 27 Aさんの気持ち,わかるかな? ノートに書きましょう
- ―小刻みに書く場を設ける
- 28 今,Aさんが言ったことをもう一度,言える人?
- ―友達の発言を再現する場を設ける
- コラム 学級全員を伸ばす
- 参考文献
- おわりに
はじめに
「問い返し発問」は,子どもの反応を受け,即時的にする発問です。
問い返し発問の目的,役割,効果について考える場合,逆説的に問い返し発問のない授業を想像すると,明らかにすることができます。
教師が一方的に説明する授業…。学級の一部の子どもだけが活躍し,子どもの多くがずっと目を曇らせて黙っている授業…。「同じでーす」「いいでーす」という声は出ているが,子どもが思考しているか,あやしい授業…。
問い返し発問には,「学級全員が思考をし続ける姿を引き出す」,そして,「子どもの数学的な見方・考え方を広げる」という教師の願いがあると考えています。問い返し発問にかかわる実践研究を通して,問い返し発問は次のように分類できることが見えてきました。
◆「問い返し発問」の三種の神器
→「どうして?」(理由や根拠,発想の源を明らかにする発問)
→「どうやって?」(方法や手順を明らかにする発問)
→「どういうこと?」(意味や事柄を明らかにする発問)
◆「問い返し発問」の三種の神器+α
→「気持ち,わかる?」(友達の思考に寄り添い,理由や根拠,発想の源,方法や手順,意味や事柄などを明らかにする魔法の発問)
→「ヒントを出せる?」(子どもの思いや考えをつなげる発問)
本書は,日常の授業で,問い返し発問を用いるうえで大切な考え方,ポイントについて,授業実践をもとにまとめるようにしています。
日々の授業づくりで,役に立つところがあれば,嬉しく思います。
2022年3月 /中村 光晴
しかし、なかなか問い返し発問を一まとまりにされたものはない。だから、とても有益な一冊である。