- はじめに
- 第1章 特別支援教育 基本の“き”
- 1 障害は関係性の中で生まれる
- 2 発達段階をとらえることの意味
- 3 学びの発達段階
- 4 あらためて発達障害とは何かを考える
- 第2章 アセスメント力を鍛える講座
- 「観察法」 〜行動には意味がある〜
- 1 アセスメントの重要性
- 2 「見る」と「観察」の違い
- 3 行動の意味をとらえる
- 4 [事例1]Sちゃんとクレヨン
- 5 行動論的子ども理解
- 6 [事例2]高校生の信号無視
- 7 問題行動を規定している要因の分析
- 8 [事例3]教師に暴言を吐く中学2年M君
- 9 いじめの行動分析
- 10 観察法のまとめ
- 「面接法」 〜答えは子どもの中にある〜
- 1 「理解」と「共感」の違い
- 2 三方向のコミュニケーション
- 3 フィードバックの効用
- 4 [事例1]どのように返答しますか?
- 5 [事例2]自分の言動を棚に上げて,人のことばかり注意する中学1年D君
- 6 言い方を変えてみると…
- 7 答えは子どもの中にある
- 8 やる気を支える3つの要求
- 9 個人因子と環境因子
- 10 面接法のまとめ
- 「検査法」 〜暗黙知を見える化する〜
- 1 ジョハリの窓の視点から
- 2 検査法から情報を得ることによって
- 3 継次処理と同時処理のお話
- 4 学習指導要領からみる認知的配慮事項
- 5 [事例1]応用問題の理解
- 6 [事例2]誤答分析
- 7 [事例3]減加法と減減法
- 8 [事例4]視覚処理の問題
- 9 見える化のススメ
- 10 検査法のまとめ
- 第3章 アセスメント事例集
- 1 特別支援教室の取り組み
- 2 通級指導教室の取り組み
- 3 児童発達支援・放課後等ディサービスにおける取り組み
はじめに
本書の発行以前,明治図書さんのご協力をいただいて,私は『発達障害児へのピンポイント指導』(2009)『デキる「特別支援教育コーディネーター」になるための30レッスン&ワークショップ事例集』(2014)の2冊の著書を執筆し,本書はその3番目にあたります。
前者は,発達障害の子どもたちが示す「困り感」に焦点をあて,「行動には意味がある」というコンセプトのもと,彼らの思いや行動を解釈し,「行動」「社会性」「こだわり」「学習」「運動」の5つの視点から,改善に向けた具体的な支援方法について提案しました。
後者は,特別支援教育コーディネーター研修会等で実施したプログラム,「適切な子ども理解」「適切な指導」「適切な支援」を30のレッスンにして紹介しました。また,初めてコーディネーターに指名された先生方が迷わず安心して取り組めるよう,12のQ&Aを設定して具体的なアドバイスを盛り込みました。
特別支援教育が始まって14年。インクルーシブ教育,合理的配慮等の物理的・制度的なかべはずいぶん低くなりました。しかし,それを推進する私たちの「こころのかべ」は低くなったでしょうか。集団生活が中心である学校という環境下においては,一人ひとりへの細やかな配慮は,まだまだ行き届いていないのではないでしょうか。「障害は関係性の中で生まれ,関係性の中で改善される」という考え方があります。換言すると,「その人が安心して活動・参加できる環境」が整えられれば,その環境下においては障害はなくなるということです。
本書のねらいは,苦戦している子どもの問題は,子どもの中にあるのではなく,学校(教師)等との関係性の中にあるということを提案することです。教師はともすれば,本人のつまずき(困り感)の背景が理解できず,「なぜできない」「何度言ったらわかるんだ」と,本人の問題,本人の努力不足として片付けてしまうことが少なくありません。子どもが苦戦するのは関係性の問題であるととらえ,その関係性を改善することが解決への近道であるということを具体的に提案したいと思います。
また,本書の第3章では,それぞれの専門フィールドで活躍されている3名の先生方に,日ごろの実践的な取り組みについてご紹介いただきました。
杉浦正員先生には,これから全国的にその需要が期待される「特別支援教室(リソース・ルーム)」における自校の取り組みについて紹介いただきました。配慮の必要な子どもたちに対して,学級で学びながらも必要に応じて取り出し指導をする重要性とその効果について具体的に提言いただきました。
山下公司先生には,発達障害通級指導教室における実践について紹介いただきました。特に,子どもの臨床像(苦戦しているところ)とWISCやKABCのデータのマッチングによるアセスメントの解釈から確かな指導につなげている実践は,フォーマル検査の紹介が少なかった本編に大変,厚みを持たせてくれました。
瀧澤聡先生は日本シェルボーン・ムーブメント協会の役員であり,「国際シェルボーン協会」認定インストラクターでもあります。シェルボーン・ムーブメントは単なるムーブメントではなく,「自己認識」と「他者認識」を育てるムーブメントであり,特に,「人間関係を育てる」うえで大変有効なムーブメントです。今回は児童発達支援・放課後等デイサービスにおける興味深い取り組みについて報告していただきます。
本書を刊行するにあたり,本書を含め過去3冊の著書すべてにおいて,ステキであたたかい絵を描いていただいた画家で前幌西小学校長の菅原清貴先生に感謝いたします。
最後に,発達というものを改めて深く学ぶきっかけとなった私の子どもたちや孫たち,そして最後まで私を支えてくれた私の妻に心から感謝して…。
2021年3月 編著者 /小野寺 基史
しかし、アセスメントと言うのは簡単であるが、アセスメントの具体を知る機会は多くない。だからこそ、本書は貴重な内容となっている。