- まえがき
- Day1 「よかれと思って」を見直す
- STEP1 話を聞かない子を叱るのを見直す
- STEP2 「大きな声」と「よく通る声」の違いを見直す
- STEP3 よかれと思って子どもを監視するのを見直す
- STEP4 授業言葉と休み時間言葉を使い分ける
- STEP5 言い方に気を遣う
- STEP6 「間違い」を認める声かけをする
- STEP7 「注意」ではなく「こうして欲しい」の声かけをする
- STEP8 一日の終わりの声かけは「楽しかった。また明日」
- Day2 「注目」を味方につける
- STEP1 「どんな格好をしたら子どもは見たくなるか」を考える
- STEP2 定期的に洋服を変える
- STEP3 身につけるものに気を遣う
- STEP4 実物を見せてから話す
- STEP5 集会の場で注目を集める
- STEP6 「いつも面白いことを言っている」という印象を持たせる
- STEP7 「なんだこりゃ」と思うしかけをつくる
- STEP8 行事では子どもを目立たせる
- Day3 「話し方」を学ぶ
- STEP1 「話し方のプロ」は誰かをよく考える
- STEP2 インプットとアウトプットを繰り返す
- STEP3 アナウンサーの話し方を学ぶ
- STEP4 「つまらない話し方」を分析する
- STEP5 大勢への話し方を意識する
- STEP6 ラジオの話し方を学ぶ
- STEP7 話を短くまとめる
- STEP8 落語家の話し方を学ぶ
- Day4 「目」で伝える
- STEP1 自分の目線を意識する
- STEP2 教室内で目線を動かす
- STEP3 「子どもの目線」を捉え直す
- STEP4 「目の種類」を使い分ける
- STEP5 話し始めに目を合わせる
- STEP6 挨拶をする
- STEP7 目線を意識して授業を始める
- STEP8 授業スタイルから見直す
- Day5 「自分の話し方」を見直す
- STEP1 自分の声を録音して聞いてみる
- STEP2 「まくら」を気にしてみる
- STEP3 口ぐせに気を遣う
- STEP4 短く話す練習をする
- STEP5 原稿なしで話す力を鍛える
- STEP6 自信を持った話し方を身につける
- STEP7 「しまった」からの話し方を身につける
- STEP8 明日はどんなことを話そう
- あとがき
まえがき
「話し方って本当に難しい……どこで教えてくれるの?」
そんな悩みを、多くの皆さんがお持ちではないでしょうか?
そして、その難しい話し方を、いとも簡単そうに、楽しそうにしている人がいることもまた事実です。これは、クラスや、会議でのプレゼンの話ではなく、普段人と話す時のことです。「あんな風に笑顔で話ができるといいなあ。私が話すごとに相手がどんどん質問してくれて、そして今度は相手が楽しそうに話し始める。そんな話し方ができたらなあ」と何度も思いました。
子どもの頃の筆者は、大人になればいつかそんな話し方ができるものだと思っていました。ですが、ただ単に年を重ねるだけではそうはなりませんでした。諦めの悪い筆者は、教師になって、「飲み会や、普段の話し方は下手でも、授業となればそうじゃない。授業の話し方は違うんだ」と心のどこかで思っていました。しかし、そんなにうまくはいきませんでした。よく、芸能人で「普段は人見知りだけど、コントになったら超面白い」などという人を見て、陰ながら自分もその部類では……と淡い期待をしていました。でも、現実は全く違います。そのような芸能人は、人見知りの性格をカバーするくらいの、血のにじむような努力をしていただけなのです。
そうして筆者はようやく、「話し方を磨かなくては」と気づきました。
こんな筆者です。「話し方が分からない」「授業でなかなか言っていることが伝わらない」と少しでも危機意識を持たれて、この本を手に取ってくださった皆さんの方が、その時点で筆者よりも上の段階にいます。
これから筆者と一緒に悩んでいきましょう。そして筆者が、授業での話し方をどう考え、どう磨いてきたのか。そんな拙い話に付き合ってください。
どんな技術も、練習、鍛錬が必要です。自然にうまくなることはありません。毎日公園でボールを投げていたからといって、プロの野球選手になれる人はいません。公園でボールを投げ続けるのと、野球で通用するボールの投げ方とは違うからです。かつて筆者が期待していたことは、「公園でボールを投げ続けていたら、いつかうまくなるだろう」と言うに等しいことでした。
野球で通用するためには、まずどこに投げるのかが分からないといけません。アウトカウントによって投げる場所も変わります。また、場所によってはあえて投げてはいけない場面もあります。このようなことを使い分けられる人が、ようやくレギュラーになれます。そして、そこから先のプロ野球では、さらに様々なことに磨きがかかります。
野球にたとえてお話ししましたが、確実に言えることは、話し方も練習すれば練習するほどうまくなるということです。年とともに、なんとなくレベルアップすることを待っているだけではダメです。
ですから、練習をしましょう。そのために必要なことを、本書では五つの章にまとめて書いてみました。
もちろん、筆者も目下修行中の身です。全く偉そうなことは言えません。
この本では、そんな筆者の多くの失敗談も交えつつ、傷だらけになりながら、どうやって学んできたか、どうやっていいモデルを探してきたのかを書いたつもりです。こんな筆者でも、長年教師という仕事をしてこられたのです。そして長くやっていると、時に楽しく、自分で祝杯をあげたくなるような時も出てきます。
ですから、もっと熟達した方で、筆者よりもいい練習の仕方、修行の仕方を知っている方は、是非教えてください。また、多少批判的な視点で読んでいただけると、筆者も再び考える機会がいただけます。
話し方がうまくなると、何より、その話を毎日聞く子どもたちのためになります。先生の話がよく分かるようになると、多くの子が学校に来ることが楽しくなります。そんな教室をつくっていきたいと思いませんか。
話し方が身につけば、子どもの姿勢も変わります。信頼感も変わります。すると、自分の仕事も楽しくなります。話し方を変えると、職員室でも提案が通りやすくなったり、学年が違う先生とも話が合ったりするようになります。
今日も多くの教室で、生徒や児童の明るく楽しい声が飛び交っていることを祈りつつ。
それでは参りましょう。我々教師も、明るく楽しい、話し方の修行の旅へ。
2024年10月 /池畠 彰之
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