- はじめに
- Chapter1 中学校国語科の授業&評価 考え方と評価規準作成のポイント
- 1 中学校国語科の評価と考え方
- 1 3観点による目標に準拠した評価
- 2 3観点と学習指導要領との関連
- 3 評価計画の基本
- 2 評価規準の作成方法
- 1 [知識・技能][思考・判断・表現]の評価規準
- 2 [主体的に学習に取り組む態度]の評価規準
- 3 評価計画の工夫
- 1 年間の指導と評価の計画の作成
- 2 単元の評価計画の作成
- 3 「おおむね満足できる」状況(B)の例の設定
- 4 中学校国語科の授業&評価Q&A
- Q1 これまでの「話す・聞く能力」「書く能力」「読む能力」が[思考・判断・表現]に一本化されることで,それぞれの能力が見えにくくなってしまうのではないでしょうか。
- Q2 毎時間,評価規準に照らして,全ての生徒にA・B・Cを付けていくのはとても大変です。何か,よい方法はないでしょうか。
- Q3 [主体的に学習に取り組む態度]の評価は,これまでの「国語への関心・意欲・態度」の評価とどう違うのでしょうか。
- Q4 学校においても,教師や生徒がICTを日常的に使用する環境が整ってきました。学習評価に当たっては,どのようにICTを活用することができるでしょうか。
- Q5 中学校国語科の学習評価を進める上でのチェックポイントをまとめると,どのようなことになりますか。
- Chapter2 学年別 中学校国語科の授業&評価事例
- 1 第1学年の授業&評価事例
- 1 【A 話すこと・聞くこと】
- 単元名:卒業生へ贈る言葉〜展開に応じた発言をして話し合う〜
- 言語活動:卒業生に向けた「贈る言葉」を話し合って考える。
- 2 【B 書くこと】
- 単元名:在校生が伝えます! 小学生のための学校紹介パンフレット
- 言語活動:伝えるべきことを整理して,学校紹介のパンフレットを書く。
- 3 【C 読むこと(文学)】
- 単元名:戦争文学を読んで考えたことを語り合おう〜戦争と○○○〜
- 言語活動:戦争をテーマにした文学を複数読み,考えたことを伝え合う。
- 4 【C 読むこと(説明文)】
- 単元名:根拠をもって考えよう〜日本の伝統,言葉の力〜
- 言語活動:筆者の意見に対する自分の考えをまとめ,伝え合う。
- 5 【古典】
- 単元名:人々の思いを物語に乗せて〜作り物語の面白さを探る〜
- 言語活動:『竹取物語』に込められた人々の思いを感じ,再発見した物語の魅力を伝え合う。
- 2 第2学年の授業&評価事例
- 1 【A 話すこと・聞くこと】
- 単元名:アミューズメント施設の魅力を高めるアイデアを考えよう〜比較しながら考えをまとめる〜
- 言語活動:地域の施設の魅力を高めるアイデアを基に討論する。
- 2 【B 書くこと】
- 単元名:走れ!強右衛門〜描写を工夫して物語の一場面を書く〜
- 言語活動:鳥居強右衛門のエピソードを基に,想像したことを書く。
- 3 【C 読むこと(文学)】
- 単元名:「盆土産」を読み,主人公と父親の思いを語り合おう
- 言語活動:ラストシーンの登場人物の言動の意味についての考えを伝え合う。
- 4 【C 読むこと(説明文)】
- 単元名:「壁に残された伝言」に5枚目の図表を付け加えよう〜文章と図表を結び付ける〜
- 言語活動:文章と図表などを結び付けて解釈したことを説明する。
- 5 【古典】
- 単元名:文章の特徴を生かした朗読を通して「平家物語」を読み味わおう
- 言語活動:二つの章段を繰り返し音読・朗読して,考えたことを伝え合う。
- 3 第3学年の授業&評価事例
- 1 【A 話すこと・聞くこと】
- 単元名:学校・地域の掲示板の活用アイデアについて提案しよう!〜進行の仕方を工夫し,互いの発言を生かしながら話し合って考えを深める〜
- 言語活動:互いの考えを生かしながら考えをまとめ,提案する。
- 2 【B 書くこと】
- 単元名:思い入れのある場所のコピーを作ろう〜具体と抽象などの情報と情報との関係や表現の仕方を考えて文章を書く〜
- 言語活動:情報を編集して文章にまとめるなど,伝えたいことを整理して書く。
- 3 【C 読むこと(文学)】
- 単元名:中学生の視点で「高瀬舟」の構成や展開,表現の仕方を評価しよう
- 言語活動:小説を読み,考えたことなどを交流する。
- 4 【C 読むこと(説明文)】
- 単元名:文章の論理の展開を評価する〜レーダーチャートで文章を評価しよう〜
- 言語活動:自分にとって分かりやすい,共感できる文章なのかをレーダーチャートで評価し,交流を通して考えを深めたり広げたりする。
- 5 【古典】
- 単元名:「おくのほそ道」の本の帯を作ろう〜古典を読むことを通して,その世界に親しむ〜
- 言語活動:古典を読み,考えたことを伝え合う。
- 執筆者一覧
はじめに
平成29年告示の中学校学習指導要領が,3年間の移行措置期間を経て,本年4月から全面実施になりました。この学習指導要領の『解説』の「総説」には,次のような記述があります。
このような(筆者注:変化の激しい,予測不可能な)時代にあって,学校教育には,子供たちが様々な変化に積極的に向き合い,他者と協働して課題を解決していくことや,様々な情報を見極め知識の概念的な理解を実現し情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと,複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められている。
この1年以上の間,いわゆる「コロナ禍」と呼ばれる状況の中にあって,先生方は,正に上記の力を子供たちに身に付けさせるべく,懸命な努力を続けられています。そのことに対する強い敬意と感謝の意をここに表しておきたいと思います。
新しい学習指導要領のキーワードについては多様な挙げ方ができると思いますが,ここでは,「資質・能力の育成」と「主体的・対話的で深い学び」を取り上げたいと思います。
「資質・能力」とは,学校の中だけで発揮される狭い意味の「学力」と異なり,日常生活や,学校卒業後の人生において活用できる力という意味合いがあります。例えば,学校で読書指導を行っているときは本を読む生徒が,長期休業期間に入ったら全く読まなく(読めなく)なってしまうことがあります。これは,自ら本を手に取り読み進める力が,「資質・能力」にはなっていないということでしょう。義務教育終了段階の中学校においては,教科書の範囲だけの学力ではなく,生涯にわたって課題を解決し自らの生活を豊かにするような国語科の「資質・能力」を育成する必要があります。
一方,「主体的・対話的で深い学び」が実現している授業とは,教師から生徒へ一方的に知識を注入するような授業ではなく,生徒自身が学びを自分のこととして捉え,多様な他者と対話しながら自身の考えを広げたり深めたりするような授業のことです。
この「資質・能力の育成」と「主体的・対話的で深い学び」の橋渡しをするのが,言語活動と言えます。魅力的な言語活動は,生徒の主体的な学びのエンジンとなるとともに,思考・判断・表現の対象となり,対話の必然性を生みます。これまでの授業づくりの成果を継続・発展させて,言語活動の充実を図っていただきたいと思います。
さて,授業を通して確かな資質・能力が身に付いたかどうかを見るのが学習評価です。新しい学習指導要領の下では,評価の観点が「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三つになりました。国語科の場合,これまでの評価が5観点であったことから,新しい評価に戸惑いを感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし,学習指導要領の内容と評価の観点が対応していること,指導事項に基づいて評価していけばよいことなど,国語科ならではの評価の分かりやすさもあります。
本書は,新学習指導要領に基づいた,中学校国語科の指導と評価について具体的に説明することを目的として編集しました。
Chapter1では,授業づくりや評価に関する基本的な考え方を簡潔にまとめました。後半では評価についてよく質問される内容について,Q&Aの形式で説明しています。Chapter2を読む上での基本になる部分ですので,まず,しっかり確認していただきたいと思います。
Chapter2では,学年ごとに5つの授業事例を掲載しました。本書では,各学年の事例の取りまとめを3人の先生にお願いしました(第1学年:廿樂先生,第2学年:積山先生,第3学年:山内先生)。皆さん,新学習指導要領解説国語編の作成に関わられた先生で,地域の国語教育のリーダーであり優秀な実践者でもあります。授業事例の掲載に当たっては,それぞれがオンラインの勉強会を開くなど,授業者の先生方の交流と研修の場も設けていただきました。事例の中では,具体的なワークシートやテスト例も掲載するようにしています。是非,参考にしてください。
なお,本書を編集するに当たっては下記の@〜Eの資料を参考にし,特に評価の考え方についてはEの内容を踏まえています。ただし,Eは「参考資料」であり,また,新しい評価についてはまだ試行錯誤の段階であることから,本書の事例では「このように取り組んでみたがどうか」という提案も含まれています。この点に留意していただけるようお願いします。
令和3(2021)年6月 /冨山 哲也
〈参考資料〉
@「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」平成28年12月21日 中央教育審議会
A「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」平成29年7月 文部科学省
B「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」平成31年1月21日 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会
C「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」平成31年3月29日 初等中等教育局長
D「学習評価の在り方ハンドブック(小・中学校編)」令和元年6月 国立教育政策研究所教育課程研究センター
E「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料 中学校国語」令和2年3月 国立教育政策研究所教育課程研究センター
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- 明治図書
- IC教育がでてきて三観点がごちゃごちゃになりかけたときもう一度ふりかえるのに有効な方法です。2022/6/11しいちゃん
- ICTと関連させて展開があるとさらに良かったと思う。1人iPadになってからすべての内容が必ず使うになってしまったからである。2021/8/13しーちゃん
- 新3観点の学習評価について、わからないことも多かったので、勉強しようと思って購入しました。授業の中心部分がさらに具体的だと嬉しく思いました。2021/8/430代中学校教諭
- 実際の授業がイメージしやすい。また、学習指導要領がわかりやすくまとめられている。2021/8/240代・中学校教員