- 本書を手にした特別支援学級を担当される先生方へ
- 第1章 特別支援学級における「自立活動」の指導
- 01 特別の指導「自立活動」について
- 自立活動の歴史
- 特別支援学校学習指導要領における自立活動
- 02 特別支援学級における「自立活動」の指導
- 特別支援学級における教育課程編成に関する基礎的事項
- 特別の教育課程編成と自立活動
- 自立活動における指導の評価
- 第2章 特別支援学級「自立活動」指導の流れ
- 01 「個別の指導計画」作成の流れ
- 実態把握
- 課題の整理
- 指導目標の設定
- 区分の選定及び具体的な指導内容の設定
- 指導計画の作成
- 指導の展開
- 評価
- 02 自立活動における「個別の指導計画」の作成例
- 自立活動の時間における指導の計画
- 学習や日常生活全般の中で行う指導の計画
- 第3章 特別支援学級「自立活動」指導のモデルケース
- 自立活動の時間における指導
- ◆ケースの読み解き解説 自立活動の時間における指導
- 01 心理的な安定・環境の把握 2年
- 平仮名を覚えることが苦手なために,読み書きが困難で学習意欲が低下している児童への指導
- 02 心理的な安定・人間関係の形成 3年
- 折り合いを付けることが苦手なために,集団行動が困難な児童への指導
- 03 心理的な安定・環境の把握 4年
- 考えや情報を整理することが苦手なために,作文を書くことが困難な児童への指導
- 04 人間関係の形成・環境の把握 3年
- 気持ちや行動のコントロールが苦手なために,集団生活への参加が困難な児童への指導
- 05 人間関係の形成・コミュニケーション 3年
- 他者との関わりが培われてこなかったために,学習意欲を失っている児童への指導
- 06 人間関係の形成 5年
- 感情(行動)をコントロールすることが苦手なために,相手に自分の考えを言葉で伝えることが困難な児童への指導
- 07 環境の把握 5年
- 抽象的な言葉の意味理解が苦手なために,話や文の内容を捉えにくい児童への指導
- 学習や日常生活全般の中で行う指導
- ◆ケースの読み解き解説 学習や日常生活全般の中で行う指導
- 01 知的障害特別支援学級 3年
- 国語科「おてがみ」(読むこと)+自立活動(コミュニケーション)の指導
- 02 知的障害特別支援学級 4年
- 国語科「エンペラーペンギンの子育て」(読むこと)+自立活動(心理的な安定・環境の把握)の指導
- 03 情緒障害特別支援学級 4年
- 国語科「プラタナスの木」(読むこと)+自立活動(人間関係の形成)の指導
- 04 自閉症・情緒障害特別支援学級 2年
- 算数科「分数」(数と計算)+自立活動(心理的な安定ほか)の指導
- 05 知的障害特別支援学級 3年
- 算数科「正三角形と二等辺三角形」(図形)+自立活動(身体の動き)の指導
- 06 知的障害特別支援学級 2年
- 体育科「ボールゲーム」+自立活動(人間関係の形成)の指導
- おわりに
本書を手にした特別支援学級を担当される先生方へ
特別支援学級を自ら希望した先生,学校長に担任を打診されてやってみようと考えた先生,1年目は分からないことだらけだと思います。特別支援学級の担任を受けたは良いが,多様な状態を示す児童を目の前にして,何をどう指導すれば良いのか途方にくれることや,障害特性に関する知識不足を感じ,対応の方法を見つけられずに悩む日々,あるいは特別の教育課程の編成においても知らないことばかり……そんな思いで日々を過ごされているかと思います。
しかし,キャリアを積んだ特別支援学級の先生方も,この書籍を手にした皆さんと同様に,不安や心配の時間を経験してきたと思います。
本書は,『特別支援学級をはじめて担任する先生のための〈国語・算数〉授業づくり』(明治図書,2015)の続編として,特別支援学級担任が指導すべき「自立活動」について焦点化した書籍となっています。
自立活動は,通常教育にはない領域であり,障害のある幼児児童生徒を対象にした特別の指導です。そのため,通常教育を行ってきた先生方には,はじめて見聞きする文言や内容となり,さらに実際の指導方法についてはイメージも持ちにくいと思います。
また,自立活動は教科書といった学習材もありませんし,一般化できる指導書もありません。何故なら自立活動は,障害特性から起こりうる学習上や生活上の困難さを軽減することを目的としている指導領域だからです。一般化するというより個別化する指導と考えた方が良いかもしれません。
つまり,一人一人の困難さを把握することから出発し,それを改善したり軽減したりするための指導を構築するわけですから,内容も方法もオーダーメイドに近い指導になります。したがって,自立活動の指導を対象の子どもの実態に応じて行うと共に,作成が義務化されている個別の指導計画に,その具体的な目標や内容,方法などを記述することが必須となります。
そこで本書は,小学校学習指導要領(平成29年告示)によって明示された,特別支援学級担任が自立活動を指導しなくてはならない「指導の義務化」と,同じく作成が義務付けられた個別の指導計画を表裏一体と考え,はじめて特別支援学級の担任を経験する先生方を想定して,その両面から少しでも具体的なイメージが持てるように,理論(考え方)と実践をまとめています。
◆本書の構成
第1章は,自立活動について二つの概要を理論編としてまとめています。
その1つは,『特別の指導「自立活動」について』であり,「自立活動の歴史」や「特別支援学校学習指導要領における自立活動」をまとめています。特に特別支援学校学習指導要領における自立活動では,該当する対象者や,自立活動の意義・目標,障害の捉え方と自立活動の関連,自立活動の内容,個別の指導計画と自立活動などについて説明をしています。
また,2つ目である『特別支援学級における「自立活動」の指導』では,「特別支援学級における教育課程編成に関する基礎的事項」や,「特別の教育課程編成と自立活動」,「自立活動における指導の評価」についても言及しています。
第2章では,個別の指導計画の作成を中核にしながら,対象児童の視点から実態把握の目的や内容,実施の観点について述べると共に,児童が置かれている環境の視点からも実態把握のポイントや方法についてまとめています。そこでは皆さんの理解が得られやすくなることを願って,自立活動と個別の指導計画の関連について,実態把握から指導目標,指導内容,そして指導方法や評価まで時系列に沿って具体的に説明しています。
その中でも特に重要な点は,自立活動の指導時間(45分間の1単位時間)を設定している場合と,教科指導等において含まれる自立活動の要素(内容)について分けて解説しているところにあります。そして,この具体例は第3章へとつながります。
第3章は,知的障害のある児童やASDなどの発達障害のある児童を対象に,知的障害特別支援学級,あるいは自閉症・情緒障害特別支援学級の担任が,実際に自立活動の指導を行った事例についてまとめています。
その特徴は,自立活動の時間における指導での授業の実際や,国語や体育の授業に自立活動の要素(内容)を取り入れて指導した事例(教科指導と自立活動の指導の両面から)をケースとして報告していることにあります。
皆さんにとっては,第3章が実践であり授業の報告であることから,今後の自立活動の指導を行う上で参考になることが多々あると思います。
最後に,特別支援学級の現状としては,在籍する児童生徒数は特別支援学校や通級による指導と比較しても群を抜いて多い一方で,特別支援学級担任は新任の担当者が多いこと,特別支援学校教員免許状を取得している教師が30%程度であることから,専門性を担保することが課題の1つとなっています。
そのような状況を踏まえると,指導が難しいと推測される自立活動の指導においては,本書が少しでも皆さんのお役にたてることを願うばかりです。そして,特別支援学級担任を少しでも長く継続するために本書を手に取っていただければ幸いです。
編著者を代表して /廣瀬 由美子
だから、そんな痒いところに手が届く内容となっている。