- はじめに
- 準備編
- 子供の「質問」には5秒で切り返せ
- 指導のための足元を固めるために/主張には主張で返答する
- 「困った発言」への切り返し術
- 距離を取る/指導のストライクゾーンを見つける/信じると心配する/生徒の情報を集める/指導は自分の土俵で行う/「信じると心配する」の練習問題解説
- 実践編
- 学習に関すること
- 1 塾でやった!/もう知ってる!
- 2 先生、ここの答え間違ってますよね。
- 3 どうして本を読むのがいいことなんですか?
- 4 ○○を勉強したってどうせ将来使いません。
- 5 勉強は暗記じゃないって言っても、結局テストは暗記してれば点が取れますよね?
- 6 テストで出たあの問題、授業でやっていなくないですか?
- 7 こんなに勉強したのに点数が上がらないのはなんでですか?
- 8 大人は家で仕事してないのに、どうして子供は家で勉強をしなきゃいけないんですか?
- 9 覚えなくてもググれば分かります。
- 10 英語が喋れなくても困りません。
- ルール・マナーに関すること
- 11 家ではこうしてるんですけど。
- 12 先生は職員室でお茶飲んでるのに、なんで僕たち、授業中はだめなんですか?
- 13 えー、面倒くさいです。
- 14 席替えで自分の好きな席を選んじゃ駄目なんですか?
- 15 自分にはこれが分かりやすいんで片付けなくていいです。
- 16 「人は見た目じゃない」って言うのに、何で髪型や服装のルールが細かいんですか?
- 17 部活では走らせているのに、どうして普段は「廊下を走るな」って言うんですか?
- 18 どうして大人は化粧していいのに、学校では駄目なんですか?
- 19 「時間を守れ」って言うのに、授業時間を守らない先生には注意しないんですか?
- 20 休み時間なのにどうしてゲームは駄目なんですか?
- いざこざ・注意・子供の感情に関すること
- 21 どうして○○くんが悪いことをしてるのに叱らないんですか?
- 22 どうして僕だけ注意するんですか? 他の子もやってるのに。
- 23 どうして私も謝らなきゃいけないんですか?
- 24 ○○さんに睨まれたので注意してください。
- 25 先生、僕、体と心が違うみたいなんですけど。
- 26 どうせ僕が悪いんです。
- 27 でも親には○○って言われました。
- 28 もう分かりました。
- 29 言われなくてもやるつもりでした。
- 30 前は○○していいって言われました!
- 教師との関係に関すること
- 31 先生のこと、嫌いです。
- 32 前の先生の方がよかったです。
- 33 なんで先生になったんですか?
- 34 ○○先生のクラスでは□□してるらしいです。
- 35 どうして先生方で言っていることが違うんですか?
- 36 頑張ってない人に頑張れって言われてもやる気出ません。
- 37 先生、LINE教えてください。
- 38 先生だからって偉いんですか?
- 39 先生に話したからって解決しないですよね。
- 40 先生の授業、面白くないです。
- おわりに
はじめに
思春期の指導はいつも難儀なことばかり
子供達に健やかに成長してほしい。
これは、どの教師も願っていることです。児童・生徒の時代に、健康で素直で賢く育ち、自分の人生を楽しみ、社会を良くしていく人間になってほしい。それを願って教師は先生という仕事をしています。私は、青臭くてもそう考えています。
しかし、教師が願っても、子供達はシンプルに「健康で素直で賢く育ち」とはいかないものです。目の前の大人である教師に、あれこれ「問題」を出してきます。そして、「この問題を解ける先生であれば、私を指導することを認めてあげる」とでもいうかのような態度すら取ります。
思春期というのは、本当に面倒で大変です。しかし、その子供の思春期に寄り添い、大きく方向を間違えないように見守ったり、聞いたり、説明したり、説得したり、反論したりするのも、教師の大事な仕事の一つです。
中学校で教師をしていた時、本当は、
(ああ、あの池田先生が言うなら、何か大事な理由があるに違いない。よく分からないけれども言う通りにしておこう)
という私でありたいし、児童・生徒がいてほしいと思っていました。もっと言えば、私が何も言わないでニコニコしていたらそれだけで問題が解決する先生になりたいとも思っていました。感化の教育ができないかなあと思いながら、指導していました。
すこーしはできた部分もあると思います。
しかし、思春期を過ごす子供達は、
(ああ、なるほど。その話は正しいなあ)
と思っても、それが親の口から、教師の口から出たのならば、それだけで、話を聞かないというものでもあります。
それどころか、
「池田、ちょーウケる」
「やべーよ、こいつ」
「キモいんだよ」
と言われることすらありました。それでも、
(今、なんとかしないとなあ。この子供達、卒業したら、こんなんではやっていけないしなあ。かといって、怒鳴ったところで、この子供達は話を聞かないだろうしなあ。だけど、毎日言われるのも、こっちも結構しんどいなあ)
そんなことを、思っていました。
この子供達が、一度しかない思春期の時代をどうやったら健やかに成長していくことができるようになるのだろうか。そして、教師の指導に従うようになるのだろうか。そんなことを考えて指導をしていました。
生徒指導を進めていくためのレッスン本
この問題は、児童・生徒に思春期がある限り、同じようなことが学校で生まれるはずです。今でも生まれているはずです。
児童・生徒たちが、突然のちょっと困るような質問をしてくる。また、教師にとって嫌な言葉で、ナイフのように教師の心を傷つけてくる。それは、子供達が、今までに大人によって傷つけられてきたからかもしれません。また、そうやって
(この教師は信頼しても大丈夫か?)
と試しているのかもしれません。しかし、そうだとしてもそれを許しておくわけにはいかないのです。
たしかに人間としては、教師も児童・生徒も同じ地平にいます。平等です。しかし、私たちは教師であり、彼らは児童・生徒です。私たちは、大人であり、彼らは子供です。私たちは、指導する側であり、彼らは指導を受ける側です。健やかで賢い子になり、自分の人生を謳歌し、社会をより良くする人に育っていってほしいと願って、指導しているのです。
思春期だから、第二次反抗期だからといって、間違ったままを許すわけにはいきません。おかしなところは、指導して直していくのが教師の仕事だからです。
本書は、子供達が教師に投げかけてくる無理難題の質問や発言に、どのように受け答えるかということを通して、この指導を進めていくためのレッスン本です。生徒指導系の問題の事前学習はなかなか難しいのですが、本書では、それをいくつかの理論で解説し、ケーススタディで練習できるようにしてあります。目次にある項目を見て、あらかじめご自身の対応をメモしてからお読みください。
本書の例をきっかけにして、みなさんが、子供達の質問、発言にタイミングよく、また、適切な内容で返信でき、子供達の成長につながりましたら、とても嬉しく思います。
2022年1月 /池田 修
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