- まえがき
- 1章 しなやかに働くこと
- 持続可能な働き方を見出す
- ルーティンワークからの脱却
- 朝のオーバーワーク
- 8時間勤務から7時間勤務へ
- 師範演技は35歳まで
- 最小限のハイパフォーマンス
- 「鈍感力」を身につける
- 「頭の中のショートカット」を減らす
- Column
- 2章 「授業」のマインドセット
- 5分でできる教材研究に集中する
- 「振り返り」の中身を想定する
- 今日の板書を明日の授業へつなぐ
- 学習指導要領の言葉を具体化する
- 子どもたちを頼って環境を整える
- 教材準備は押しつけない
- 子どもの学びやすさを優先する
- Column
- 3章 「学級経営」のマインドセット
- 子どもたちを気持ちよく下校させる
- 教室に向かうのは8時過ぎ
- たし算の生徒指導とかけ算の生徒指導
- 隙間時間を活用する「読書的仕事術」
- 掲示物は物語にする
- 学級通信で伝えたいこと
- 保護者と手を取り合う
- Column
- 4章 「学年経営」のマインドセット
- 学年主任の描く未来を共に見る
- 「to do管理」の確認は常に声に出す
- 子ども理解は外側も内側も共有する
- 子どもの悪口座談会はしない
- 役割分担で動く
- 会議時間のスリム化と話し合う内容のスリム化
- SNSのやりとりは最小限にする
- Column
- 5章 「学年主任」のマインドセット
- 学年主任の仕事は「決断」
- 時短の鍵は「トップダウン」
- 働き方改革の鍵は「ボトムアップ」
- 雑談しやすい空気をつくる
- 若手へは適切に「口出し」する
- 帰りやすい空気をつくる
- 立場は学年を守るために使う
- Column
- 6章 「校務分掌」のマインドセット
- 校内への発信を日常とする
- 管理職の先生とよく話すようにする
- 先生方一人ひとりに寄り添うことを意識する
- 引き継ぎは「心配り」を意識する
- 校内に味方を増やす
- 校務分掌の働き方を学級経営に生かす
- Column
- 7章 Q&A 悩みを共に考える
- Q&Aコーナーを設定した理由
- Q1 授業準備
- Q2 学級掲示
- Q3 清掃指導
- Q4 学年行事
- Q5 学年会
- Q6 学年会
- Q7 生徒指導
- Q8 職場環境
- Q9 事務作業
- Q10 働き方
- Q11 働き方
- あとがき
まえがき
「早く36歳になりたいなあ」と、大学を出たばかりの私はなんとなく「ミドル」に憧れていました。初めてお世話になった学校にいらした先輩が当時36歳でした。
その先輩は、財布と携帯電話と鍵だけをポケットに入れ、「手ぶら」で出勤していました。そして、同じように退勤するのでした。
学習発表会の演目では、RPGゲームのエンドロールさながらのエンディングを演出したり、休み時間には校庭で子どもたちとゴルフをしたりしていました。
冬休みにはご自身がスキーのレッスンを受け、トレーニングしたり資格をとったりもしているようでした。年式の古いランドクルーザーに乗せてもらい、一緒にゲレンデに連れて行ってもらったことは忘れられない思い出です。
私が見た「36歳の先生」は、大学を出たばかりの私がイメージしていた「36歳の先生」とはかけ離れていました。いい意味でショッキングな働き方でした。
2019年度、千葉県を退職して岩手県で新規採用になった私は、その先輩を探し出し、ご挨拶にうかがいました。13年ぶりの再会で、ちょうど私が36歳になった年でした。
勤務校に電話をすると、「おー、久しぶりだな。飯でもいくか」と早々に電話を切りました。学校に到着し、入口に姿を見せると、その先生は足早に職員室から出てきて、「大通りのファミレスな」と一言。その姿は、相変わらずポケットに財布とスマホと鍵が入っているだけでした。その先輩は、13年前となんら変わらない働き方を続けていました。
そして「これ以上に乗りたい車に出会わないんだよな」と言いながら、あのときと同じランドクルーザーに乗り込むと、車を大通りへ走らせたのでした。
そんな姿を見ながら、学校や地域、時代が変わっても変わらずスマートに働いている先輩をうらやましく思いました。どうしたらこんなに軽やかに働けるのか……。考えを巡らせずにはいられませんでした。
そんな私も、今年で39歳を迎えました。いよいよ40歳を目前にし、自身の働き方、仕事術を見直さなければならない歳になってきたと感じています。
例えば「定時退勤」をするための働き方や、「丸つけ」を手早く終わらせる仕事術など、日常的な仕事を細分化し、その在り方を考え直してみたいと思うようになりました。
また、「若手」と「ベテラン」の間を生きる「ミドル」としての立ち回り方や、その実際を具体的に振り返ってみたいとも思いました。
そこには、経験の中で自然に身につけ、今の自分を形成している働き方があると考えたからです。
それはきっと、私があの先輩に憧れているからでしょう。子どもと一緒になって学び、遊び、笑っていたから。それでいて授業の質は高く、子どもたちや保護者からの圧倒的な信頼があったから。そして、職員室での同僚性に長けていたからです。
だから私も、その先輩のつくる教室に憧れ、授業に惹きつけられ、働き方に感化されていたのです。それは、13年経ってもなお色褪せることのない、私にとっての「ミドルの姿」そのものだと考えています。
「今の自分はどうだろうか……」と、いつも考えます。「若気の至り」のような分別のない行動は減ってきたけれど、その分「勢い」や「溌剌さ」を失っていないだろうか。
また、安定した仕事ができるようになってきたからといって、最低限でコスパだけを求めた綱渡り的な働き方をしていないだろうか。
そして、どっちつかずの半端な仕事になっていないだろうか……と自問自答の日々です。
そんな私が大切にしている言葉を紹介します。それは「しなやか」という言葉です。
大学時代に「柳に雪折れなし」という言葉と出会いました。柳の枝はやわらかくしなやかで、雪が積もっても折れずに雪を受け流したり、かたい木よりも雪に耐えたりすることができるという意味でした。
スタンダード、○○ベーシック、○○教育……。今、教育の様々な糸が絡み合い、がんじがらめになっている現場が多いのではないかと感じます。団塊の世代の大量退職、若手教師同士の学年団、欠員が続く学校も少なくないはずです。今にも折れてしまいそうな枝を、添木でしのいでいる学校現場のリアルが見えるようです。
そんな中、我々ミドル世代はどう仕事術を身につけ、働くべきでしょうか。やわらかくも芯のある働き方、受け流しながらも耐え抜けるしなやかな仕事術とはどうあるべきでしょうか。
私自身がミドルリーダーかどうかはさておき、ミドルリーダーのマインドセットは重要な課題であると考えています。本書を通して、一緒に考えていただけたら幸いです。
/古舘 良純
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