- はじめに
- ―職員室を中心とした「働く場改革」から「働き方改革」へ!
- 第1章 なぜ,職員室をリノベーションするの?
- 環境が変われば意識が変わる 意識が変われば働き方が変わる
- 職員室って何のためにあるのだろう?
- 職員室をリノベーションすることで期待できる効果
- <コラム> みんなをご機嫌に
- ―ある先輩の言葉
- <コラム> Driven By Vision
- 第2章 職員室リノベーションの進め方
- 「働く場改革」の方向性を定める
- ―ビジョンを描画,ビジョンで対話
- 仲間づくり・組織づくりを図る
- ―役職も大切だけど組み合わせも大切
- 関係の質を高めることに重点を置く
- ―アイデアが駆け巡る状態づくり
- 対話→体験→対話→体験…を大切にする
- ―効果的な対話手法導入
- 取り組みを確実に推進する
- ―会議は定期的に短く楽しく
- 大きな活動と小さな活動を同時展開する
- ―改革を円滑に進める仕組み
- <コラム> 校内のスペシャル人材を探す
- ―それぞれの強みを活かして
- <コラム> この指とまれプロジェクト
- 第3章 職員室リノベーション32のアイデア
- 目指す方向性に向かって地図を描く
- ―階段モデル
- 第3章各ページの見方
- ―各取り組みとマトリックス図
- インフラ整備・強化期
- 01 スペース有効活用の基盤をつくる
- ―謎の不要物品は思いきって断捨離
- 02 いつでも快適にPCを扱える環境をつくる
- ―LAN配線を定期的に見直し,トラブルを防止
- 03 ゾーニングでメリハリのある空間をつくる
- ―職員室のレイアウト変更
- 04 物を持たなくても働ける環境をつくる
- ―共有文具コーナーづくり
- 05 事務用品を見える化する
- ―「30秒でほしいものが見つかる」収納
- 06 共有物品を教室にも置いて働きやすくする
- ―教室セット運用
- 07 限られた予算で無駄なく文具在庫を確保する
- ―文具サイクル
- 08 教職員増加の中で,座席を確保する
- ―非常勤講師席のフリーアドレス化
- 09 すべての執務室同士をつなげる
- ―見落としがちな,職員室以外へのLAN配線
- 時間創出期
- 10 時間の使い方は,みんなで考える
- ―時間予算ワークショップ
- 11 どの学校にもあるシステムを使う
- ―既存システムの使いこなし
- 12 主体性をもって会議の効率化を図る
- ―会議日設定とKシート
- 情報共有化期
- 13 必要な書類を取り出しやすいようにする
- ―ファイリングシステムの導入
- 14 共有化すべきものをみんなで考える
- ―ARAIGAME
- 15 片づけ,意識づけ,機会づくりをする
- ―好きな音楽とともにクリーンタイム
- 16 働く時間軸が異なる教職員をICTでつなぐ
- ―グループウェア導入
- 17 みんなの視線を集めて情報共有量を増やす
- ―大型モニター設置
- 18 アナログでも情報共有しやすい状況をつくる
- ―大型ホワイトボード設置
- 19 同じ情報をもつ
- ―ペーパーレス化の推進とファイリングと連動したフォルダづくり
- コミュニケーション活性化期
- 20 職員室内の動線コントロールを図る
- ―ちょっとしたコミュニケーション機会創出
- 21 管理職席を職員室中央へ置く
- ―距離を縮めて,マネジメント力強化
- 22 自然と集まる共有テーブルをたくさん設置する
- ―教職員の輪の拡大
- 23 ハイテーブルを設置する
- ―短時間でメリハリのある対話空間の創出
- 24 職員室ライブラリを導入する
- ―教職員の「知」をじんわり拡大,蓄えて活用
- ワクワク期
- 25 働きたい職員室コンテストを開催する
- ―「働く場」を見つめ直すリ・デザイン
- 26 定期的な席替えをする
- ―コミュニケーションを流動化
- 27 背面対向の学年シマづくりをする
- ―個業と協働を活かしたメリハリのある働き方の創造
- 外をみる。外から学ぶ。
- 28 学校の外にヒントを求める
- ―アイデアを生み出す大人の遠足
- 29 セミナーなどの勉強会を開く
- ―つながり,学び,新たなアイデアを入手
- 30 企業から学び,企業も学ぶ
- ―企業との連携方法の模索
- 31 リーフレットを作成し振り返りの基盤にする
- ―外と対話するための自分軸づくり
- 32 教職員のオートクラインを起こす
- ―なるべくたくさんの教員による取材対応や視察対応
- おわりに
- ―「十二分に機能している職員室」へと一歩一歩変えていく!
はじめに
―職員室を中心とした「働く場改革」から「働き方改革」へ!
皆さんは,どのような教職員集団でありたいですか。
学校で働く教職員は,未来を見据え,子どもたちとともに学びをつくり続けています。教職員の多様な強みを活かし合い,弱みを補い合いながら,子どもたちのワクワクをもとに,授業を行っています。
教職員同士で意見が対立することもありますが,それは新たなアイデアが生まれるチャンスです。しかし,時には対立が対立のまま終わり,人間関係が悪化していくこともあります。同調圧力の中,本音を言えないこともあります。こういったとき,「どのような教職員集団でありたいか?」に立ち還り,対話と実践を進めることが大切なのですが,なかなかうまくいかないこともあります。まさに「言うは易く行うは難し」です。
学校現場は,多忙な状態が続いています。これが対話の機会を奪っていることは否めません。放課後,休憩時間を除くと教職員に残された勤務時間は,30分程度しかありません。どんなに放課後の時間の使い方を工夫していても,限界があります。
また,「働き方改革」の必要性が説かれる中,改革そのものが目的化している学校では,学校での滞在時間を減らすために,とにかく早く帰宅させることを目指している,なんてことも耳にします。それでは,持ち帰り仕事をせざるを得ない教職員を増やしているだけです。
「働き方改革」がうまくいかず,疲れきって心の余裕がなくなった教職員が,子どもたちに,心からの笑顔で接することができるでしょうか。
それが教職員として「ありたい姿」と言えるのでしょうか。
一人ひとりの教職員には,それぞれの「ありたい姿」があります。
学校現場には,多様な教職員がいるからこそ,子どもたちとともに多様な学びをつくることができます。教職員の力を合わせ,チームとして学びをつくっていくためには,それぞれの「ありたい姿」をベースに,「どのような教職員集団でありたいか?」を描くことが大切です。
働き方改革がうまくいかないのは,「どのような教職員集団でありたいか?」を見失って,働き方改革に関するテクニックを模倣するだけになっているからです。
目指す方向に向かって,限られた時間の中で,それぞれがどのような働き方をすればよいのかを考えて実践することが大切です。
そこで本書には,「ありたい教職員集団としての姿」を具現化するために,「働き方改革」へのアプローチ方法の一つとして,「働く場改革」を記しました。それは,「働く場」の中心にある職員室リノベーションを中心に据えています。
おそらく,多くの学校の職員室は,似たようなシマ型配置のレイアウトで構成されていると思います。何年もの間,あまり変化がないレイアウトだと思います。
それぞれの学校で働く教職員が,「ありたい教職員集団としての姿」を具現化するために,職員室に求める機能を見直し,主体的に職員室を改革=リノベーションしていくことで,その職員室は学校ごとに異なる顔を見せ始めます。
少しずつ,かつ着実に発展していく「働く場改革」のストーリーは,異動により教職員が入れ替わったとしても引き継ぐことが可能です。
第1章では,なぜ職員室リノベーションといった「働く場改革」を通して,「ありたい教職員集団としての姿」を目指すのかを説明しています。
第2章では,「働く場改革」を進めるにあたって必要となる考え方について触れます。単に場を改革するだけでは「ありたい教職員集団としての姿」には辿り着くことはできません。
第3章では,具体的な職員室リノベーションのアイデアを紹介いたします。予算も時間もかかる「働く場改革」は,一朝一夕では成し得ません。そこで,発展段階に分けて説明しております。ただし,必ずしも記されている順番で行うのではなく,ご自分の学校の「働く場」がどの段階にあるかを見極めて参考にする事例を決めてください。
今は,これまでの選択の結果。未来は,これからの選択の結果。
本書を手に取ってくださっている方々の中には,ご自分の勤める学校の「働く場」に使いづらさを感じているものの,多忙な現状や職場の人間関係を思い浮かべ,一歩踏み出すことを難しいと感じる方もいると思います。しかし,「働く場」の使いづらさが,多忙な現状をつくり出しています。また,人間関係の悪さが,非効率を生み出しています。
これらは,生産性を落とす大きな要因になり得ます。本書で中心に据えている職員室リノベーションは,「どのような教職員集団でありたいか」というビジョンに向かって,職員室の使いやすさを向上させ,その過程を通して人間関係を良好にし,仕事の生産性を高める手段です。
何もしないことを選択していても,状況は変わりません。少しずつ,一歩一歩,できるところから進めていきましょう。「働く場改革」の強みは,一歩一歩が見える化されやすいことです。同じ志を抱く方が,その歩みに気づきやすいのです。自然と,ともに歩んでくれるようになります。
ご自身の,これからの選択の一つひとつが未来の「働く場」をつくります。未来の「働く場」をつくる皆様の傍らに,本書を置いてくだされば幸いです。
横浜市立日枝小学校事務職員 /上部 充敬
実践事例とその土台にあるビジョンを、
現場の職員と共有していきたい。