- はじめに
- ―協働して日々の取り組みをリノベートする!
- 第1章 チームで協働するうえで大切なこと
- 自分づくりをすること
- 自分充分状態をつくること
- 互いにwin-winを目指すこと 取り組む時期を考えること
- 他者が判断できる状態になっていること 情報共有化から届けること
- ファシリテーションの重要性を知ること 感謝すること
- <コラム> フォロワーがフォロワーを生む
- <コラム> 校外にいるスペシャリストを活用する
- 第2章 協働してリノベートする23のアイデア
- 「教員間」の連携
- 01 主体性に基づく「この指とまれプロジェクト」
- キーワード:自他の背中を押す
- 02 校内ミニ研修
- キーワード:校内人材活かし合い
- 03 横のつながりをつくる研究デザイン部
- キーワード:オフィシャルに情報共有
- 04 対話の仕掛け人―ファシリテーター部―
- キーワード:やりながら考える
- 「教員・事務職員」の連携
- 05 任せて,待って創るお金の使い道
- キーワード:対話型予算委員会&チームの思考を走らせる
- 06 散らばった機能を合わせてパワーアップ
- キーワード:これまで通りの自由度保障+定例会議
- 07 過去の取り組みを大切にする
- キーワード:観察とインタビュー
- 08 やらねばならない仕事はみんなで一気に
- キーワード:ともに学ぶ場をつくる
- 09 無理に協働しない
- キーワード:粛々と進める必要もある
- 10 総合予算と予算運用
- キーワード:成長段階に応じた予算運用
- 「教員・専門能力スタッフ」の連携
- 11 できなかったことができるように
- キーワード:スピードアップとルートづくり
- 12 他校の教職員と協働する
- キーワード:居場所づくり 多様なタイプでおりなす
- 「教員・事務職員・職員室サポートスタッフ」の連携
- 13 業務を細分化して任せて仕事精度アップ
- キーワード:業務の細分化
- 「学校・教育委員会」の連携
- 14 業務委託を多様な立場から実現する
- キーワード:実践知不足を認める
- 「学校・地域人材等」の連携
- 15 いるのが当たり前の状況を創る
- キーワード:業務のルーチン化と自走体制
- 「管理職・教職員」の連携
- 16 視察ファシリテータープロジェクト
- キーワード:校長と他者の対話をつむぐ
- 17 自他理解ワーク
- キーワード:教職員の対話の機会をつくる
- 「学校事務職員同士」の連携
- 18 タイムマネジメントトレーニング
- キーワード:学校事務職員特化型時間予算ワークショップ
- 19 学校事務職員複数配置校での協働
- キーワード:ビジョンに沿って振り返る
- 日頃からの連携
- 20 正確性をチームでつくる
- キーワード:ミスしている自分には気づかない
- 21 グループウェアで時間軸を超える
- キーワード:多様な働き方を尊重する
- 22 うまくいかないことがあるのは当たり前
- キーワード:自他の思いを活かす
- 23 旬になる前に手放す
- キーワード:うまくいきそうな兆しを捉える
- <コラム> 事務室運営,教職員の助けなしではできません
- おわりに
- ―旬になる前に手放し,発展を楽しむ!
はじめに
―協働して日々の取り組みをリノベートする!
セミナーや学習会に参加して最高潮に高まったモチベーションが,職場に戻ったら下がったことはありませんか。
画期的な「働き方改革」のアイデアや,ICT活用の素晴らしいアイデアなど,素敵な事例を学んだのにもかかわらず,活かせないことがあります。どうやって活かそうか悩んでいるうちに,時間ばかりが過ぎていく。または,共有しても誰も賛同してくれないうちに,思いがさめていく。
誰しも一度や二度あると思います。どうしてでしょう。何がいけないのでしょうか。
理由は簡単です。私たちが学んできた素敵なアイデアの多くは,そのアイデアを生み出した職場だからこそうまくいった可能性が高いからです。
教職員の個性とうまい具合に噛み合い,互いのよさが活かされ,きっと,タイミングもよかったのでしょう。人間関係だけではありません,物的環境の条件もそろっていたのかもしれません。必要なICT環境が整っていたり,そのアイデアを活かす場所があったりしたのかもしれません。
再現性の高いアイデアもあると思いますが,どんなによいアイデアであっても,それを実現するには,そこに関わる人たちの協働が不可欠です。
これが一番難しい。協働しているつもりが,自分だけが頑張っていた。協働しているつもりが,自分の負担ばかりが増えた。
協働しているつもりが,取り組んでいる最中,協力を得られなくなった。きちんとしっかりアイデアを伝えて,賛同を得ていたのに,こんなはずじゃなかったのに。
「大丈夫です。誰しも経験していることですし,次はうまくいくよ」なんて慰められても,次にうまくいく保障はどこにもありません。校長がトップダウンで指示を出せばよいのでしょうか。教職員から信頼を得ている人を担ぎ出せばよいのでしょうか。発言力のある先輩に進めてもらえばよいのでしょうか。
自分以外の方に動いてもらった方が,うまくいくことは多々あります。何を言うかではなく,誰が言うかが大事な場面もあるからです。でも,毎回この手は使えません。自分だけが「この学校のためによいと信じる方法」を行う際,起点はどうしても自分自身になります。自分自身で,仲間をつくり,やりたいことを実現していくしかない局面が必ずあります。
私は,人間関係をつくるのがとても苦手で,不器用な人間です。それにもかかわらず,たくさんのステークホルダーとコミュニケーションをとる学校事務職員に就職しました。学校事務職員が一人でできる仕事には限りがあります。様々な立場の方々との協働がないと,成り立たない仕事ばかりです。常に協働のあり方を試行錯誤する職種の一つと言えます。本書ではその試行錯誤の途中経過のものも含めて記しました。
先に申し上げますと,本書の内容のほとんどは,誰かがすでに取り組んでいることと思います。これまでたくさんの方々に,数えきれないほどの教えをいただいていますし,たくさんの本から学んだことも,数えきれません。真似事が多いと思います。また,私が実行した協働アイデアを異動先の学校でまったく同じように再現できるとも思っておりません。異動先の状態を観察し,これまでの実践をカスタマイズすることが大切と痛感しております。
では,この本は,何のためにあるのか。1つ目は,学校経営に関する経営者が書いた本は多々ありますが,学校経営を,一般の教職員という視点から書いた本が必要と感じているからです。校長がミッション・ビジョンを掲げ,みんなのモチベーションを向上させたとしても,実際に子どもたちを育む活動を行うのは,教職員です。教職員同士が協働する術をもっていないと,学校の教育活動は進みません。2つ目は,同じような協働のアイデアをもつ方々をつなぐためです。それぞれの学校現場で行っていることは,詳細まで共有されることが少ないと感じております。本になるのはスーパーな事例ばかりです。しかし,そこには,日々細かな協働が積み重なっております,しかも隠れています。これを共有することで,アイデア実行の背中を後押ししたいのです。さらに協働のアイデアが生まれるのを促したいのです。
「人と協力するより,自分でやった方が早い」とは頻繁に聞く言葉です。この気持ち,すごくよくわかります。でも,この本を手に取った時点で,実は人との協働の大切さを知っていて,それを求めているのだと思います。
「早く行きたければ一人で行け。遠くに行きたければみんなで行け」
アフリカの諺とされている言葉です。孤独に課題に向き合い,正解に辿り着くことも,時には必要です。でも,対話をもとに協働しながら,何かを成し遂げたときの喜びは格別です。遠くに行くことを目指してみませんか。
うまく行かず,道が閉ざされたように感じたときにも,本書を手に取っていただければと思います。過去の失敗にとらわれず何度でも挑戦できる,やり直しができる心理的安全性の高い世の中であってほしいと感じております。学校こそ,その土壌をつくるにふさわしい場所です。子どもたちが,互いを活かし合い,よりよい社会づくりを行えるよう,まず,我々大人から協働を楽しんでいきましょう。
第1章では,協働を楽しむために大切にしたい,自分づくりについて触れて記しました。自分が充分な状態でないと,他者との協働が難しくなります。私見ではありますが,自分をつくる事例をご紹介いたします。第2章では,具体的な協働の事例を記しました。学校単位でできる,小さな取り組みです。ツールだけじゃなく,どのように行ったかも記しました。
予測不可能な時代と言われております。協働のあり方も変革の時代に来ております。それぞれの学校現場で,個々の小さな取り組みが,学校のリノベートにつながることを祈っております。
横浜市立日枝小学校事務職員 /上部 充敬
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