- はじめに
- 1章 子どもが夢中になる!紙芝居を取り入れた保育の魅力
- 紙芝居ならではの魅力
- 1 児童文化財としての紙芝居
- 2 子どもがひきこまれる紙芝居の魅力
- 3 紙芝居の演じ手は俳優
- 紙芝居の歴史
- 1 「紙芝居」という言葉と形式の由来
- 2 教育紙芝居から国策紙芝居へ
- 3 国策紙芝居から大衆文化としての紙芝居へ
- 保育・教育の場での紙芝居の「いま」と「これから」
- 1 「保育所保育指針解説」での紙芝居の位置付け
- 2 紙芝居の課題と展望
- 実践!手作り紙芝居
- 1 手作り紙芝居の授業
- 2 プロの紙芝居作家も顔負け!学生の作品
- コラム 紙芝居を「科学する」
- 2章 ゼロからわかる!紙芝居の演じ方
- 言葉の発達
- 1 はじめに
- 2 乳児,1歳以上3歳未満児の言葉の発達
- 3 3歳以上児の言葉の発達
- どこが違う?紙芝居と絵本の違い
- 1 紙芝居と絵本の比較
- 2 実例!『おばけパーティ』の紙芝居と絵本の比較
- いつでも,どこでもできる紙芝居の演じ方
- 1 演じる前が大事!3つのポイント
- 2 演じる際に気をつけること!3つのポイント
- 3 もっと,もっと現場で紙芝居を使うために
- 今日は特別な日!舞台を使った紙芝居の演じ方
- 1 舞台が醸し出す特別感!
- 2 舞台の魅力を引き出す演じ方!5大ポイント
- 3章 身近な材料でできる!オリジナル紙芝居の作り方とコツ
- 紙芝居を作ってみよう!
- 1 材料を準備しよう
- 2 お話を作ろう
- 3 紙芝居用紙に描いてみよう
- コラム 自作の紙芝居を演じてみると…
- 4章 ポイントで理解が深まる!紙芝居を使った保育の指導計画
- 指導計画の必要性
- 1 園では紙芝居はどのように演じられているか
- 2 なぜ指導計画を立てるのか
- 指導計画の書き方
- 1 項目別の書き方ポイント
- 1歳児対象の保育・教育の指導計画
- 1 1歳児クラスの発達と紙芝居
- 2 指導計画 紙芝居『どうぶつ これなーんだ?』
- 3歳児対象の保育・教育の指導計画
- 1 3歳児クラスの発達と紙芝居
- 2 指導計画 紙芝居『おすしのみーちゃん どーこだ!?』
- 5歳児対象の保育・教育の指導計画
- 1 5歳児クラスの発達と紙芝居
- 2 指導計画@ 紙芝居『まほうのこなぐすり』
- 3 指導計画A 紙芝居『手ぶくろを買いに』
- コラム 多くの子どもに届けたい 紙芝居の魅力
- 5章 子どもの月齢を踏まえて選ぶ!おすすめの紙芝居
- 紙芝居の選び方
- 1 紙芝居を選ぶ基準は「子ども」
- 2 紙芝居のレパートリーの増やし方
- 3 月齢別おすすめの紙芝居リスト
- 乳児向けの紙芝居
- ペンギンのペンペン
- いろいろ めしあがれ
- おべんとうなあに
- みんなでいないいないばあ
- あかちゃんあかちゃん
- ブルルン ガタゴト いってきまーす
- 1歳以上3歳未満児向けの紙芝居
- たべたいな たべたいな
- なあに なあに なあに
- へっちゃらさーくんのおやつえんそく
- じゃがいもコロコロ
- は,にげちゃった!
- ごはんでげんき げんき ぴん
- 3歳以上児向けの紙芝居
- 月夜とめがね
- サンタクロースのおくりもの
- きんいろのおくりもの
- くいしんぼうのありさん
- としがみさまとおしょうがつ
- きこえたね!いただきます
- 引用文献・参考文献
- 執筆者一覧
はじめに
@「紙芝居 LOVE」の押しつけ―だから紙芝居は使われない
保育・教育の場では,絵本と比べると紙芝居はあまり使われない・選ばれないことは周知の事実です。なぜでしょうか。最も大きな原因は紙芝居の書籍の執筆者がもつ紙芝居が大好きという気持ち,つまり「紙芝居 LOVE」にあると筆者は思います。
これまでの紙芝居に関する書籍には共通点があります。紙芝居が大好きな方が執筆しているということです。紙芝居が生活や仕事の一部になっている方もいます。それゆえに,「紙芝居 LOVE」が全面に出ているということです。紙芝居が大好きなことは結構なことです。ただ,書き手が紙芝居を好きすぎて,紙芝居が目的化,自己完結化しているように思えるのです。別の言い方をすれば,紙芝居の作品紹介や上手に演じる方法ばかり強調し,聞き手の存在や演じ手と聞き手との関係性,双方を取り巻く現況に適した紙芝居のあり方が考慮されていないのです。そのためでしょうか,既存の書籍には,紙芝居の魅力はこうだ! 理想的な演じ方はこれだ! という現実を無視した熱い思いで溢れかえっています。読者はがっかりします。疲れてしまうのです。紙芝居が大好きな書き手の熱量を紙芝居にあまり興味がない読者に押しつけても,読者が共感することはありません。それどころか,うんざりされるだけです。まさに,「紙芝居愛好家の,紙芝居愛好家による,紙芝居愛好家のための」書籍ばかりです。これでは,紙芝居が絵本のように広く使われるようになることはないでしょう。
A本書のスタンス―紙芝居は使われてなんぼ
本書は,即物的な紙芝居論,つまりすぐに,ラクにできる紙芝居ハウツーをまとめた本です。紙芝居は単なる手段である,紙芝居は使われてなんぼというスタンスで書かれています。演じ手が上手に演じることより,聞き手が楽しく物語を理解できること。紙芝居の理想論より,紙芝居を使いやすくするハウツー。既存の紙芝居の書籍では,どこか(暗黙のうちに?)紙芝居は特別なもの,高級品のように扱われてきましたが,本書では子どもの育ちを支えるためのツールの1つという位置づけです。高級品どころか,ただのコモディティ扱いです。筆者は紙芝居の作り手に敬意をもっていますが,それでも紙芝居は使われてなんぼだと思っています。出版物は作り手がいないと生まれませんが,読み手がいないと価値がありません。だから,紙芝居の聞き手である子どもの立場や気持ちより優先する紙芝居論は何1つないと思っています。大事なのは,紙芝居ではなく,子どもです。
ということで,紙芝居を使ってみたい気もするけど,うーん……乗り気になれないという方はいますぐに本書を購入し熟読してください。特に保育者の方はすぐ読み始めましょう。すぐに,ラクにできる紙芝居の演じ方を学び,明日の保育・教育から紙芝居を使うことができるネタが満載なのですから。たった110ページの本書を読むだけで,子どもからモテモテ。いつも絵本ばかりだったのですから,紙芝居の登場に喜ぶこと間違いなしです。
B本書の特長は3つ!―既存の書籍との決定的な違い
紙芝居を使ってみようという気持ちになってきましたか。そうした方へ,本書の特長を3つ簡潔にお伝えしましょう。
第1に,プロが書いていることです。執筆者はみな(第5章の一部を除く)保育者養成校である大学・短大の教員です。さらに,紙芝居,言葉の発達,造形について日々研究している研究者や元保育所園長です。だから,保育・教育の現況をよくわかったうえで諸々の説明をしています。要するに,紙芝居オタクではなく,紙芝居の専門家が書いた本だということです。
第2に,すぐに,ラクして紙芝居を使う方法が満載です。絵本と紙芝居の比較や子どもの言葉の発達過程,紙芝居の演じ方や紙芝居を使った保育・教育の指導案,さらには月齢別におすすめの紙芝居と,これでもかというくらいすぐに,ラクに紙芝居を使うためのハウツーやツールが満載です。
第3に,わかりやすい表現・説明で書かれています。紙芝居の実演の様子や紙芝居の実物を使って説明することで,解説を読みながら具体的なイメージがわくようにしています。イメージがわくので,理解がぐんぐん進みます。本書は,作家・井上ひさしの名言─「むずかしいことをやさしく,やさしいことをふかく,ふかいことをおもしろく,おもしろいことをまじめに,まじめなことをゆかいに,そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」─を地で行く本です。
さあ,すぐに本書を読み始めましょう(立ち読みではなく購入して,です)。時間はありません。だって,子どもたちが,いまかいまか,まだかまだか,とみなさんが紙芝居を演じるのを待っているのです。紙芝居愛好家が主張する非現実的な紙芝居理想論は忘れましょう。紙芝居は使ってなんぼ,単なる手段です。「案ずるより産むが易し」です。
紙芝居がもっと,もっと使われ・選ばれますように。紙芝居を通して子どもたちが様々な学び,体験,幸福感を得られますように。執筆者一同の願いです。
2024年9月 執筆者を代表して /浅井 拓久也
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- 明治図書