- 効果的な教育の鍵は一貫・継続性
- 初任時代,子どもたちから教えられたこと
- 1章 変わりたい教室,変われない教室
- @ 学力は集団に宿る
- A 令和時代を生き抜く戦略
- B コミュニケーション能力はいつ,どこで身につく?
- C カリキュラム・マネジメント 教育的効果の最大化
- D 「つなぐ・つなげる」ための準備体操
- 2章 学級経営でつなぐカリキュラム・マネジメント
- @ 学級経営でつなぐために
- A 戦略の中核をなすものは 社会的スキルの獲得
- B 戦略の左腕 日常生活に汎化する
- C 戦略の右腕 教科場面に汎化する
- 3章 個と個がつながる「学級システム」
- @ たった5分で学級を温める「学級アクティビティ」
- 活動名 「ペン」DE「リレー」
- 活動名 なんでもバスケット
- 活動名 「せーの,パン!」であつまろう
- A 朝の会・帰りの会でつなぐ
- B 「やらされ当番活動」を「成長の種」にする
- C 進化する係活動 個と個がつながる
- D 指導力のある教師は学校行事をうまく利用する
- 4章 クラス会議×教科で考える「授業デザイン」
- @ 実践例:クラス会議×ICT機器の親和性
- A 実践例:クラス会議×国語の親和性
- 小学1年生 もじをかこう
- 小学6年生 プロフェッショナルたち
- B 実践例:クラス会議×算数の親和性
- 小学4年生 面積
- 小学3年生 大きい数のわり算
- C 実践例:クラス会議×社会の親和性
- 小学5年生 我が国の工業生産
- D 実践例:クラス会議×理科の親和性
- 小学6年生 ものの燃え方
- E 実践例:クラス会議×特別の教科 道徳の親和性
- 小学2年生 およげない りすさん
- 小学5年生 ブランコ乗りとピエロ
- 5章 「コミュニケーション能力5.0」を目指す学級づくり
- @ 実はすごいぞ,フィードバック!
- A 学級経営のつながりを視覚化する教室掲示
- B カリキュラム・マネジメントシートの活用
- C つなぎたいと思わなければつながることはない 教師の信念
- D コミュニケーション能力は生きるための手段に過ぎない
- 6章 学級経営でつなぐカリキュラム・マネジメントの発想
- @ 良質な学級環境を分かち合う
- A 考え方と最低限の方法論を共有する
- B 学級経営でつなぐカリキュラム・マネジメントの構造
- C スキルを「学ぶ場」と「活用する場」の連動
- 「これまで」と「これから」の教育を見据えて
- エビデンスのある実践のお供として
効果的な教育の鍵は一貫・継続性
本書は,学級担任のためのカリキュラム・マネジメントがテーマの書籍です。
「あ,カリマネ本ね,だったら学校経営だから,担任が対象じゃないわ」と思わないでください。最初に申したように,「学級担任のための」本です。
カリキュラム・マネジメントは,学校のグラウンドデザインや教育課程との関連が深いイメージがあり,学級担任や授業者からは少し遠い存在のように思われるかもしれません。
しかし,しかしその本質は「つなぐ」ことです。
カリキュラムとは,教育内容の配置のことと思われるかもしれませんが,そうではありません。何を学ぶかはその一部であり,子どもたちが何をどのように学び,どのような力をつけるのか,それはいわゆる学力だけでなく社会性や人間性を含めた総合的な力をつけるための全体計画のことです。
日々の授業づくりや教育活動の推進に注力していると,あまり意識することはないかもしれませんが,子どもたちは特定の授業,特定の教育活動で育っているというよりも,みなさんが日々実践されている,カリキュラム全体から受け取るメッセージによって,影響力を受けているのです。
子どもたちに最も影響を及ぼすのは,子どもたちが教育活動や学校生活を通じて一貫して受け取ったメッセージです。だから,やっていることが適切かどうか,妥当かどうかは一旦おいておいても,一貫性のある継続的な指導ができる教師は,影響力が強い,つまり指導力の高い教師ということができます。
学級は登校している子どもたちにとっては,毎日のように過ごす場所です。そのあり方から,子どもたちは日々,様々なことを学んでいます。学級のあり方は,かなり影響力の強いカリキュラムだといえるのです。
かつての学校や社会は,勉強すれば将来何かいいことが保障されるというような単純なメッセージを発していました。しかし,今は価値観が多様化し,どう生きることが幸せにつながるのかよくわからなくなってしまっているところがあります。そうした価値観の多様な世の中でも,大事なものとして多くの人が認識しているのが「人と人とのつながり」なのではないでしょうか。
良質なつながりは,私たちに癒しと活力を与えます。つながりが学ぶ意欲を高め,教室の活性化を促します。多様な学習活動によって,一貫性を損ないがちなカリキュラムからのメッセージを,学級経営を基盤にして,各教科をつなげ,子どもたちが学びやすくするための力を育てようとする授業構想が,本書のテーマであるステーション授業構想です。
1章では,学級経営でつなぐカリキュラム・マネジメントがなぜ必要かを説きます。そして,2章では,学級経営でつなぐカリキュラム・マネジメント(ステーション授業構想)とは何かを説明します。そして,3章では,ステーション授業構想における具体的な授業のあり方,また,4章では,主に特別活動等を主な舞台にした生活指導のあり方を示します。5章では,本書の提案をより効果的に機能させるためのこれからの学級経営のポイントを示しています。6章では,そもそもステーション授業構想と呼ばれる学級経営でつなぐカリキュラム・マネジメントがどのような背景から生まれたのか,解説します。本書の内容と本頁をまた理解する手助けとなることでしょう。
本書を通じて,教師が学級経営とカリキュラム・マネジメントを統合し,より効果的な教育を実現するためのヒントを得られることでしょう。教育現場は常に変化し続けていますが,教師が子ども一人ひとりの成長を支え,クラス全体の調和を図るための努力は変わりません。本書がその一助となることを心から願っています。
/赤坂 真二
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- 明治図書