- はじめに
- CHAPTER1 話すこと[やり取り]の力をつけるスピーキング指導の極意
- 0 発話のプロセス理解と英語授業
- 1 [やり取り]が成功する指導のポイント“3M’s”
- 2 押さえておきたい単元設計の原理
- 3 必ずうまくいく指導案のモデル
- 4 生徒が話したくなるタスク設定のコツ
- 5 パフォーマンスを向上させるフィードバック
- Column1 言えたらいいな
- CHAPTER2 スピーキング指導&活動お悩み解決Q&A
- 導入
- Q1 教科書本文の内容理解だけでも時間的にぎりぎりで,これ以上活動を増やせません。それでも,「話すこと」は取り入れるべきでしょうか。
- Q2 「話すこと」を新たに取り入れる際,生徒は抵抗を感じないのでしょうか。
- Q3 「話すこと」ができても,大学受験に必要な学力がつかないのではないでしょうか。
- 活動の取り組ませ方
- Q4 「暗唱」を積み重ねれば,話せるようになるのではないのでしょうか。
- Q5 高校生が「即興」で話し始めるなんて,イメージできないのですが…。
- Q6 [やり取り]を通じてどんな力がつくのでしょうか。
- 教師の役割
- Q7 「話すこと」の活動時に,教師はどのような役割を担うことになるのでしょうか。
- Q8 「話すこと」に関しては,他の技能に比べ,特に学習の成果が見えにくいように思います。
- Q9 [やり取り]の力を,どうやって成績に含めればよいのでしょうか。
- 新学習指導要領の方向性
- Q10 「交渉」という言葉を初めて見ました。これまでの言語活動と何が異なるのでしょうか。
- Column2 やり取りの活動の下地
- CHAPTER3 3Stages&12Unitsでできるスピーキング活動アイデア
- 活動アイデアの構成と使い方
- 活動アイデア
- Unit0 Basic Skill Training Activities
- Stage1:思いを伝える
- Unit1 放課後の過ごし方
- ■言語機能 繰り返す 共感する 描写する
- ■言語材料 動詞の過去形(不規則変化) 列挙,時を表す副詞句 動名詞・不定詞
- Unit2 誕生日プレゼント
- ■言語機能 描写する 理由を述べる 共感する 質問する
- ■言語材料 気持ちを表す形容詞 因果関係を表す表現(接続詞・副詞) 所要時間を表す表現
- Unit3 旅行のお土産
- ■言語機能 報告する 共感する 理由を述べる 聞き直す
- ■言語材料 気持ちを表す形容詞 因果関係を表す表現(接続詞・副詞) 疑問詞
- Unit4 ペットのいる日常
- ■言語機能 共感する 描写する 説明する 理由を述べる 質問する
- ■言語材料 経験の前後で対比を表す表現
- Stage2:相手を動かす
- Unit5 コンサートへの招待
- ■言語機能 描写する 理由を述べる 提案する 賛成する
- ■言語材料 提案を切り出す表現 提案に応える表現
- Unit6 ゲストのおもてなし1
- ■言語機能 依頼する 断る 描写する 理由を述べる 感謝する 質問する
- ■言語材料 余暇の過ごし方・娯楽の好みを述べる表現 相手への気遣いを述べる表現
- 間接話法と時制
- Unit7 野球観戦への招待
- ■言語機能 謝る 申し出の却下 理由を述べる 希望を述べる
- ■言語材料 アクティビティの説明 得意・不得意科目 予定を述べる表現
- Unit8 ゲストのおもてなし2
- ■言語機能 謝る 出来事を報告する 褒める 反省する 後悔を述べる 約束する
- ■言語材料 謝罪の表現 丁寧に異論を述べる表現
- Stage3:思いを交わす
- Unit9 遠足の行き先の話し合い
- ■言語機能 意見を論理的に述べる 自分の理解を確認する
- ■言語材料 同意・反対を述べる表現 理由を述べる表現
- Unit10 お小遣いの増額交渉
- ■言語機能 詳しく説明を求める 発言の意図を聞く
- ■言語材料 会話を切り出す表現 論拠を述べる表現 違いや統一感を述べる表現
- Unit11 ペットのいる教室
- ■言語機能 相手の意見の論拠や具体例に言及し,賛成/反対する
- ■言語材料 相手が用いる論拠の価値に言及する表現
- Unit12 公園の使い方
- ■言語機能 相手の発言を要約する・評価する 代替案を出す
- ■言語材料 不満を述べる表現 自分の立場を正当化する表現
はじめに
本書は,これからの授業で,生徒にどんどん英語でやり取りさせていきたいと考えておられる高等学校の先生方のために書きました。編者と縁のある,中堅・ベテランの英語教師が集まって重ねた,やり取りを伴う言語活動のあり方について,約2年間にわたって重ねた勉強会で得られたエッセンスを素にしています。
2022年4月から,高等学校でも「話すこと」の指導が[発表]と[やり取り]の2領域に分かれた,新しい教科書を使った授業が始まります。特に[やり取り]に関しては,[やり取り]を取り入れた英語授業にこれから取り組もうと思っている先生,これまで以上にかみあった[やり取り]を生徒にさせたいと思っている先生,[やり取り]を通じて言語習得を促すにはどうすればよいかを知りたいと思っている先生など,様々なニーズがあると思います。
高校生は,入学までの英語学習を通じて,多様な英語表現を知っているはずですが,運用能力という角度からみると,まだまだ初心者でしょう。しかし,特に高等学校での話すことの活動のために用意される話題は幅広く,話題によっては必要な表現への習熟が不十分で,ペアワークで相手の話を聞くことだけでもそもそも大変です。話の流れに合わせて対話の発展に協力するためには,タイミング良く発言できないといけません。即興性を意識した言語活動が,グローバルな時代に要求されている英語運用能力を背景に求められています。
即興で話すには,一度使ったことのある表現を文やフレーズレベルで取り出せる状態になっていることが必要です。音読や暗唱では達成されませんから,[やり取り]を伴う活動は敬遠されてきたように思います。話題だけ与えて話しなさい,と指示して話せるのは大学生レベルのことで,高校生ではなかなかうまくいきません。生徒がペアワークでお互いに言いたいことを言って終わりになってしまう,どうすればよいかと悩むこともあるのではないでしょうか。
本書は,そのような状況を踏まえ,[やり取り]の力を高めるための授業の組み立て方を,理論的な考察を踏まえ,学校での平均的な授業形態を考慮し,具体的な展開例を通じて提案します。生徒が知っている知識を,目的や場面,状況などに応じて使える状態にするために必要な活動を紹介します。高校入門期には,「使用する語句や文,やり取りの具体的な進め方が示される状況で」活動を行うよう,学習指導要領にも示されています。合理的な工夫が求められます。
教室の生徒たちが[やり取り]を行う言語活動を通じ,協力し合って英語を学ぶことができるのは,学校の存在意義に関わることで,生徒も教師も大きな喜びを感じ,英語の学習意欲が高まることでしょう。なお,[やり取り]を理論的な側面から考えたいならCHAPTER1から,日頃の授業で悩んでいることの突破口を知りたいならCHAPTER2から,具体的な言語活動から考えたいならCHAPTER3から,本書をご活用ください。
2022年2月 /千菊 基司
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- 明治図書
- 各場面に応じたやり取りの具体例、指導する際のよくある悩みについて詳細に書かれているので、現場での実態に合わせた授業を行うためのイメージがわきやすいと思っております。大変感謝しております。2022/3/2540代中学校教諭・K