- はじめに
- 第1章 教師の「?」思考とは
- 1 目の前の子どもの姿から、いくつの「?」が浮かぶか?
- 2 「問い」の前に「方法」を探していないか?
- 3 「問い」があるから、指導を選べる
- 4 若手の「問い」と中堅以降の「問い」
- 5 子どもたちと共に「問い」を持つ
- 第2章 「?」から指導の最適を導く
- 1 答えのある「問い」と答えのない「問い」
- 2 「問い」を生みだす10の技術@ 抽象的なことを問う
- 3 「問い」を生みだす10の技術A 「何が起きているか」を捉える
- 4 「問い」を生みだす10の技術B 「そもそも……」に立ち戻る
- 5 「問い」を生みだす10の技術C 「頻度」に注目する
- 6 「問い」を生みだす10の技術D 「環境」に注目する
- 7 「問い」を生みだす10の技術E 「困り感」に注目する
- 8 「問い」を生みだす10の技術F 「その子の願い」を探る
- 9 「問い」を生みだす10の技術G 「その子のこれまで」を見つめ直す
- 10 「問い」を生みだす10の技術H これまでの指導や支援をふり返る
- 11 「問い」を生みだす10の技術I 自分の価値観を疑う
- 12 「問い」を深堀りする
- 13 「問い」から仮説を立てる
- 14 仮説をもとに指導や支援を行う
- 15 更なる「問い」につなげる
- 第3章 実践 学級づくりの「?」思考
- 1 生活 挨拶が少ない
- 2 生活 忘れ物が多い
- 3 生活 宿題をしてこない
- 4 生活 ケンカばかりしている
- 5 自律性 すぐに人のせいにする
- 6 自律性 誰かに頼りっきり
- 7 自律性 決めたことを継続できない
- 8 協働性 子ども同士の会話が少ない
- 9 協働性 給食当番の準備が遅い
- 10 協働性 係活動が停滞している
- 第4章 実践 授業づくりの「?」思考
- 1 授業前 授業準備ができていない
- 2 授業始め 教師による導入に食いつかない
- 3 授業始め 「学習のめあて」が他人ごと
- 4 授業中 自分の考えを表現しようとしない
- 5 授業中 学習に関する「問い」を持たない
- 6 授業中 暇そうにしている
- 7 授業中 大事なところにたどり着かない
- 8 授業終わり ノートに書いているまとめを理解していない
- 9 授業終わり ふり返りが短文で終わる
- 10 授業後 自主学習に取り組もうとしない
- 第5章 実践 自己改善の「?」思考
- 1 児童観 その子のいいところを見つけられない
- 2 教材観 教材研究をするのが苦痛
- 3 指導観 よい指導法が思いつかない
- 4 ふり返り いつも同じようなことで悩んでしまう
- 5 働き方 なかなか仕事が終わらない
- おわりに
はじめに
この度は『教師の?思考 一人一人の子どもに「最適」な指導・支援を考え抜く』を手に取っていただき、ありがとうございます。本書のタイトルを見て、皆さんはもしかしたら「?思考とは何だろう?」という疑問を抱かれたかもしれません。その疑問こそが、この本の中心テーマである「問い」の一部です。
「?」の部分は、教師としての私たちの日々を象徴する「問い」を表現しています。
「どうすれば子どもたちが理解できるのか?」
「どのように授業を進めればよいのか?」
「どうすれば子どもたちの成長を支えられるのか?」
など、私たちは1日中、さまざまな「問い」に直面します。これらは皆、私たち教師が教育の場で絶えず向き合う日常の一部です。
教師とは、常に「問い」を抱え、解決策を模索する者だと私は考えています。しかし、「問い」に対してすぐに「答え」を見つけようとするのではなく、その「問い」を大切に長く考え続けること、それが私たち教師にとっての最も重要な挑戦となります。なぜなら、教育において「正解」は存在しないからです。そして、「どうすればいいですか?」という「問い」に対する一言でうまくいく「答え」など存在しないのです。
ただし、世の中には「答え」っぽいものがたくさん存在します。すぐに、簡単に「答え」のようなものに出会うことができます。例えば、「子どもたちにわかりやすく説明する方法」に関する教育書はたくさん出ています。そこには、さまざまな先生の「こうすればうまくいくよ」という技術や方法が載っています。わからないことがあれば、教育書に書かれていることを参考にして、実践に取り組む先生も多いでしょう。
実際、教育書を書かれている先生は「これが答えだ」なんて書いていません。しかし、読む側が「これが答えなのか」と思って取り入れてしまいがちです。よい実践、よい方法を求めて教育書を買いあさっている先生も多いでしょう。若手の頃の私なんて、まさにそのような状態でした。
また、TwitterやInstagramにもさまざまな教育技術や方法があふれています。短い言葉や文章、図、絵などでわかりやすく表現されているため、「おぉ、こうすればいいのか」「こう考えればいいのか」となる方も多いでしょう。うまくいかないことやわからないことが多ければ、強い言葉、魅力的な言葉に引き寄せられてしまう気持ちもわかります。
更には、ChatGPTやBing等の生成AIに質問しても、それなりの「答え」を出してくれます。「子どもたちにわかりやすく説明する方法を教えて」と質問すれば、「@シンプルな言葉を使う A視覚的なツールを使う B物語や例を使う……」と、わかりやすく説明するためのポイントを教えてくれます。もうすごい時代ですね。すぐに、簡単に、それなりの「答え」のようなものに出会えてしまいます。
どれも大事な情報であり、それなりの「答え」のようなものが悪いわけではありません。ただ、そこで止まってしまってはもったいないでしょう。目の前の子どもたちを見取り、「問い」を持ち、仮説を立て、実際に指導や支援を行い、ふり返り……の連続をきちんと大事にしたいものです。さまざまな先生や教育書、SNS等から得る情報も、その試行錯誤の過程に組み込んでいくことが大切です。
この本は、このような過程にある「問い」に真摯に向き合い、共に考える場にしたいと考えています。「答え」となるものは書いていません。それよりも本書を読むことを通して生まれた「問い」を大事にしてほしいです。その「問い」を通じて、読者の皆様自身が教育現場において「最適解」を見つけだすことができることを願っています。
教育現場は、常に変化し続ける舞台です。新しい教育方針、社会情勢の変化、そして何よりも子どもたち一人ひとりの成長と変化……といったさまざまな変化に対応するためには、私たち教師が柔軟な思考と創造的な解決策を持つことが求められます。そこで、自然と生まれる「問い」、意識的に立てる「問い」など、さまざまな「問い」と共に「学び続ける教師」でありたいものです。
「子どもたちが学ぶとは?」
「『子どもたちが育つ』にかかわる教師の役割とは?」
……と、本書を通して、教育の根っことなる「問い」を読者の皆様と共に考えられれば有り難いです。どうぞよろしくお願い致します。
2023年8月 /若松 俊介
このような本をまた読みたいです。