- はじめに
- 第1章 道徳授業で使えるキーフレーズの目的と価値
- 話し合いのペースを生み出す
- 導入で見通しをもたせる
- 考えを引き出し,つなげる
- 対話を広げる
- 議論を焦点化,収束させる
- 問題解決的な学習を動かす
- 自己を見つめさせる
- ICTを効果的に活用する
- 自分の生き方につなげる
- 振り返りを効果的に行う
- 終末を効果的にする
- 定番教材で失敗しない
- 第2章 目的別 道徳授業で使えるキーフレーズ100
- 1 話し合いのペースを生み出すためのキーフレーズ
- 001 うん,うん,なるほどね
- (傾聴三原則)
- 002 ○○と考えたんだね
- (教師による復唱)
- 003 今,何と言ったかな?
- (生徒自身による復唱)
- 004 今の意見のどこに共感しましたか?
- (共感の言語化)
- 005 うなずいている人がたくさんいるね
- (共感反応の確認)
- 006 新しい視点だね
- (少数派の考えへの共感)
- 007 同じように考えた人はいるかな?
- (考えの価値づけと共有)
- 2 導入で見通しをもたせるためのキーフレーズ
- 008 「本当の友だち」ってどんな人かな?
- (価値からの導入@)
- 009 友だちがいてよかったなと思った経験はありますか?
- (価値からの導入A)
- 010 バスの中で赤ちゃんが泣いていたらどう思いますか?
- (教材の内容からの導入@)
- 011 この絵を見て,気になることはないですか?
- (教材の内容からの導入A)
- 012 ○○を知っていますか?
- (教材の内容からの導入B)
- 013 ○○の思いを考えながら聴こう
- (範読の前の視点提示)
- 014 この教材からどんなことを感じましたか?
- (初発の感想)
- 015 今日は「○○」について考えよう
- (めあて)
- 016 何について話し合うとよいかな?
- (学習課題)
- 3 考えを引き出し,つなげるためのキーフレーズ
- 017 もっと詳しく教えてくれるかな?
- (価値観の深掘り)
- 018 例えば,どんなことだろう?
- (抽象から具体への転換)
- 019 ちょっと待って,今の意見はどういう意味かな?
- (全体への問い返し)
- 020 考えがまとまった人から立とう
- (全員発言の意識づけ)
- 021 「○○」という言葉が出たけれど,どういうことかな?
- (キーワードの問い返し)
- 022 なぜ,○○する必要があるのかな?
- (行動の必然性の問い返し)
- 023 1つずつ席を移動して対話しよう
- (ペアトーク)
- 024 なぜ「○○」と思ったのかな?
- (道徳的判断力)
- 4 対話を広げるためのキーフレーズ
- 025 1つではなく,考えたことをすべて書こう
- (多面的・多角的な思考)
- 026 このとき,○○はどんな気持ちだったのかな?
- (共感的な理解@)
- 027 ○○はどんなことを考えたのかな?
- (共感的な理解A)
- 028 もし自分が○○だったら,どんなことを考えますか?
- (投影的な捉え)
- 029 ○○の言動をどう思いますか?
- (客観的,批判的な思考)
- 030 ○○することに賛成ですか,反対ですか?
- (二項対立,葛藤)
- 031 心情円盤の割合がそうなった理由をすべて書こう
- (二項対立,理由の明確化)
- 032 ○○にはどんな意味があるのかな?
- (行動の分析)
- 033 なぜ○○なのかな?
- (理由や原因の分析)
- 034 □□の前と後で,○○はどのように変わったかな?
- (変化の分析)
- 035 ○○と□□の生き方の違いはどこにあるのかな?
- (人物の生き方の比較)
- 036 「すごい」と思ったのはどんなことかな?
- (「すごさ」の分析)
- 037 ○○は,なぜここまでできるのかな?
- (「すごさ」の原因分析)
- 038 心を動かされたのはどんなことかな?
- (感動の共有)
- 039 なぜ主人公は○○ができたのかな?
- (感動の背景や原因の分析)
- 5 議論を焦点化,収束させるためのキーフレーズ
- 040 では,○○はどう考えていたのかな?
- (立場の転換)
- 041 この考え方については,どう思いますか?
- (違う道徳的価値との関連づけ)
- 042 他の考え方の人はいませんか?
- (多面的・多角的な思考)
- 043 少数派の意見だけど,どう思いますか?
- (少数派の意見の活用)
- 044 この資料を見て,どう思いましたか?
- (別資料の活用)
- 045 今のゲストティーチャーのお話をどう思いますか?
- (思考のズレ)
- 046 話し合いを焦点化するために,意見を分類してみよう
- (思考の整理)
- 047 分類した仲間にタイトルをつけよう
- (KJ法)
- 048 何を中心に話し合うとよいかな?
- (生徒自身による学習課題の設定)
- 049 気になる言葉はありますか?
- (話し合いのテーマの見つけ出し)
- 050 「○○」って何かな?
- (追求内容の一般化)
- 6 問題解決的な学習を動かすためのキーフレーズ
- 051 疑問や話し合いたいことは,どんなことですか?
- (「問い」の設定@)
- 052 何が問題になっていますか?
- (「問い」の設定A)
- 053 同じ場面に出会ったら,自分ならどう行動しますか?
- (主人公への投影)
- 054 なぜ,○○が大切なのかな?
- (道徳的価値の意味)
- 055 よりよい解決方法として,どんなものが考えられるかな?
- (解決方法の提案)
- 056 この解決方法について,どのように考えますか?
- (解決方法の吟味・分析)
- 057 なぜ,それを大切にしたいのかな?
- (道徳的価値の本質)
- 058 問題を解決する話し合いから,何を学びましたか?
- (メタ認知的振り返り)
- 7 自己を見つめさせるためのキーフレーズ
- 059 目を閉じて,自分自身の考えをまとめよう
- (自己内対話)
- 060 どちらの考えに共感するかハートメーターで示そう
- (二項対立,葛藤)
- 061 自分の考えは,どのあたりになりますか?
- (二項対立,ポジショニング)
- 062 最終判断しましょう。○○を正しいと思いますか?
- (自己決定)
- 063 ○○さん,どうしますか?
- (役割演技@(スタート))
- 064 ちょっと待って,今,何て言ったかな?
- (役割演技A(中断法))
- 065 今の○○さんの考え方をどう思いますか?
- (役割演技B(聴衆への投げかけ))
- 066 ○○という意見が出ましたが,□□さんはどう思いますか?
- (役割演技C(演者への問い返し))
- 067 ○○さん,あなたはどう考えますか?
- (役割演技D(インタビュー式))
- 068 他の人の考えを参考に,自分の考えをまとめ直そう
- (価値観の再構成)
- 8 ICTを効果的に活用するためのキーフレーズ
- 069 まずは,思いつくだけ考えを書き込もう
- (多面的・多角的な考え)
- 070 書き込まれた意見をしっかりと読み込もう
- (他者理解)
- 071 タブレットを持って,自由に対話をしよう
- (対話)
- 072 テキストマイニングから,どんなことがわかるかな?
- (テキストマイニング)
- 073 どんなタイトルがつきましたか?
- (電子付箋,発表)
- 074 友だちの考えを参考に,再度自分の考えを書き込もう
- (考えの再構築)
- 9 自分の生き方につなげるためのキーフレーズ
- 075 教材で学んだことに関わる自分の経験はありますか?
- (自分自身の見つめ直し)
- 076 教材から,どんな気持ちをもつことが大切だと考えましたか?
- (道徳的心情の一般化)
- 077 同じような状況に置かれたら,何を大切にしたいですか?
- (道徳的判断力の一般化)
- 078 教材から考えたことで,生活に生かせることはありますか?
- (道徳的実践意欲と態度の一般化)
- 079 改めて聞くけど,「○○」って何かな?
- (チャンクアップ)
- 10 振り返りを効果的に行うためのキーフレーズ
- 080 なるほど,そう考えたんだね
- (共感)
- 081 今日の授業で○○について,どんなことを考えましたか?
- (振り返りの焦点化)
- 082 新しい気づきは,どんなことかな?
- (主体的・対話的で深い学び)
- 083 まだ心の中でモヤモヤしていることはありますか?
- (新たな問い)
- 084 今日の学習を振り返って,自己評価をしよう
- (自己評価)
- 085 今の振り返りのどこに心が動かされたかな?
- (納得解の共有)
- 086 自分の生活に関連づけると,どんなことがわかりましたか?
- (生活との関連づけ)
- 11 終末を効果的にするためのキーフレーズ
- 087 最後に曲を聴いてみよう
- (曲)
- 088 絵本から,自分の考えをもう一度振り返ってみよう
- (絵本)
- 089 私にも○○の経験があるので,お話しします
- (説話)
- 090 この言葉には,どんな意味があると思いますか?
- (名言,格言)
- 091 今度は「○○」について,どんなことを感じましたか?
- (動画資料)
- 092 大切にしたいと思ったのは,どんなことかな?
- (生徒相互の学び)
- 12 定番教材で失敗しないためのキーフレーズ
- 093 智行の涙には,どんな意味があるのかな?
- (主人公の涙の意味)
- 094 二通の手紙を前に元さんはどんなことを考えているのだろう?
- (主人公の心の葛藤)
- 095 樫野の人は,なぜここまでできたのだろう?
- (人類愛の意味)
- 096 2人が本当の友だちになるには,どうすればよいのかな?
- (問題解決の方向性)
- 097 職員室に向かう健二の行動に共感できますか?
- (主人公の行動の分析)
- 098 ノートを手にした「僕」は,どんなことを考えたのだろう?
- (主人公への共感)
- 099 夜空を眺めながら,「ぼく」は何を考えているのだろう?
- (主人公の内面)
- 100 加奈子は何を発見したのだろう?
- (主人公の変化)
はじめに
衝撃!
授業終了と同時に「先生,写真撮っていいですか?」と,タブレットを持って黒板の前に集まる子どもたち。
「記念撮影ですか?」と尋ねると,「いえ,黒板を撮りたいんです。家に帰ってから,お母さんともう一度考えてみたいんです!」と溌剌とした返事が返ってきました。
これは,ある小学校の6年生に行った出前授業終了後の貴重なエピソードです。年間40〜50本ほどの出前授業を行っていますが,このような光景に出会ったのは,後にも先にもこのときだけです。久々に授業の奥深さ,子どもたちのすばらしさを実感した瞬間です。
とにかくこの授業は,子どもたちとの対話がうまく噛み合い,1つの発問から子どもたちの発言が次々とつながっていきました。初対面ではありましたが,心地よい共感的な関係が生まれ,道徳的価値を追求するという同じ船に乗った運命共同体のような感覚が生まれてきました。
なぜ,授業後に板書を撮影したくなるような授業になったのか。
すべては「発問」にありました。
指導案に書かれている既定路線の発問ではなく,子どもたちが発する発言を受けての“ライブ感覚的な”発問を繰り出すことによって,子どもたちの探究心をゆさぶり,先述のような一体感が生まれてきたのです。
あらかじめ用意した発問にこだわって授業をしていたら,このような瞬間は生まれなかったと思います。すべては発問から生まれてきたのです。
たかが発問。されど発問。
教師の発する一つひとつの発問に,子どもたちは探究心をゆさぶられます。しかし,質の低い発問や子どもたちの思いに寄り添っていない教師目線の既定路線の発問は,授業をつまらないものにしてしまいます。中学生は,教師がだれのために授業をしているのかをすぐに見抜いてしまいます。発問は教師のためにあるのではなく,子どもたちの探究活動のためにあります。道徳の授業は,そのほとんどが言語活動。しかも,対話や議論が中心です。その活動の起点となるのが発問です。その発問の質を磨いていくことは,教師として当たり前のことです。
本書は,その発問にこだわり,良質な100の発問を収録しました。ライブ感覚をもつということは,即興性を身につけるということです。その即興性は,しっかりとした発問に対する基本的な知識があってこそ発揮されます。本書を手に取られた先生方,100の発問を系統的に学んでいただき,子どもたちとのライブをつくり上げてみませんか。冒頭で紹介したような衝撃的な光景に出会えるかもしれません。
道徳授業はライブだ!
本書を読み終えてから,授業実践を繰り返す中で,こんな感覚を味わっていただければ幸いです。
すべては子どもたちの幸せのために。
2022年9月 /山田 貞二
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