- はじめに
- 1章 「お金の世界」を,歩く。
- 01 「お金の世界」の言葉は強力な武器
- 02 お金の勉強,何から始めたらいいの?
- 03 「保険」の保障範囲を理解する
- 04 自分の税額,税率を知る
- 05 年末調整と確定申告で何をする?
- 06 老後資金2000万円問題を超えて
- Column01 ポジショントークを鵜呑みにしない
- 2章 支出を,減らす。
- 07 生活費を見直す
- 08 所得税と住民税をコントロールする
- 09 社会保険料は大きな支出項目
- 10 壁は103万円だけではない
- 11 必要な保険・保障過剰な保険を見直す―生命保険―
- 12 加入済みの保険を確認する―損害保険―
- 13 不動産の購入は保険見直しのチャンス!
- 14 相続税・贈与税,その他の税金への対策
- 15 教育資金の贈与には特例がある
- Column02 税制をたどれば政府の考えがわかる
- 3章 収入を,増やす。
- 16 資産運用を真面目に考える
- 17 教師こそ資産運用に適した職業
- 18 個別の投資商品を確認する
- 19 投資信託こそ,最強の運用ツール
- 20 長期投資の2つのメリットを理解する
- 21 NISAとiDeCo,始めるならどっち?
- 22 iDeCoを始める意義と具体的な投資先
- 23 ポイ活をバカにすることなかれ
- 24 先生も副業が認められている
- 25 ふるさと納税を賢く利用する
- 26 確定申告で節税プランを完成させる
- 27 片手間では難しいのが不動産投資
- 28 手を出すべきではない投資先
- 29 キャッシュフローと経済的利益
- Column03 ピケティ『21世紀の資本』のインパクト
- 4章 「お金の世界」で,自立する。
- 30 ライフプランニングの重要性
- 31 将来の収支を予測する
- 32 係数表は収支予測の便利なツール
- 33 20代 とりあえず投資を始めよう
- 34 30代 結婚,出産,不動産……人生が大きく動くとき
- 35 40代 無駄に惑わず,最大の利益を
- 36 50代 ゴール目前!確実な運用を
- 37 60代 運用結果の受け取り方と退職金活用法
- 38 ライフプランをもっとフレキシブルに
- 39 金融リテラシーとは何か
- 40 お金の本を読む
- Column04 金融教育が目指すべきもの,について
- お金の世界の基本用語
- おわりに
- ※本書に収録しているQRコード等の情報は,執筆当時のものです。
はじめに
はじめまして。
税理士,ファイナンシャル・プランナーの佐藤と申します。
大阪と京都の間,島本町という小さな町で税理士業を営んでいます。
ここ数年,お客様と話していて思うのは,税金や事業の相談に加えて,「お金」への相談が多くなったことです。老後資金2,000万円問題で一気に火が付いたのか,節税から老後の生活費まで,実に幅広い相談をいただきますが,みなさん共通しているのは将来への不安。今契約している生命保険で問題ないのか,結局,リタイヤするまでにいくら用意すればいいのか,など。
その不安はよくわかります。いまでこそこんな仕事をしていますが,わたしは文学部出身です。学校でお金のことを学んだことはありませんでしたし,社会に出てからも特別な研修のようなものはありませんでした。周りの人に話を聞いてみても,これはわたしだけの特別な経験ではないようです。お金のことは,自分から進んで勉強しない限り誰も教えてくれない。職場の先輩などの身近な人の話を聞きながら,場当たり的にやりくりしていく。これが現状ではないでしょうか。
そんな状況なので,みなさん自分のライフプラン,お金に関する知識について自信がもてず,不安の念は消えません。週刊誌から女性誌,ファッション誌まで,書店で並ぶ雑誌のどれかは毎週お金関係の特集をしているといっても過言ではありません(余談ですが,相続,「終活」の特集も多いですね。こちらもわたしの守備範囲です)。これだけお金の話が流行しているのだから,学校で子どもたちの話題にもなるでしょう。そんなとき,現場の先生方はどんな話をされるのだろうか,また,そもそも先生方ご自身がお金についてどのように考えておられるのか……。
もしもお金のことを勉強しようと思ったときに,税金,投資,保険など各分野に限定せず,横断的に概観できる本があれば便利かもしれない。そう思ったのがこの本を書くきっかけです。各項目は,原則として見開き2ページ構成ですので,スキマ時間にでも少しずつ読み進めていただけると思います。
以下,この本の内容を説明させて下さい。
本書は,単に手持ちの現金が増えることを目的とするのではなく,「お金」に関する知識,スキルが身につくことを目的として書かれています。昔ながらの教育論で言うならば,「釣った魚を渡すのではなく,魚の釣り方を伝える」ということです。10年,20年と役に立つベーシックな知識をお伝えしたいと考えています。
次に,「教科書」という意味ですが,これは,
(1)初心者が読んで,基本的で重要なことがわかる
(2)とりあえず,主流派の意見を採用する
(3)困ったときに方針の決定ができる
という意味を込めています。
(1) 教科書は,初学者が最初に手に取るものです。その意味で,平易な読み物として通読できるものを目指しました。
(2) お金,特に投資のスタンスに関しては色々な考え方があります。本書は,一攫千金的な投機ではなく,「分散」「長期」「積立」を軸とする資産運用を第一に考えています。
(3) 教科書にある原理原則は,初学者だけのものではありません。むしろ,原理原則はこじれた状況を打破したり,選択に迷ったときに役に立ちます。
とはいえ,お金について詳しくなっても,自分のお金が少ないままでは意味がありません。第1章で概観したあと,第2章で支出を減らし,第3章で収入を増やす方法を理解して,第4章で年代別の運用方針について説明します。
一般書では,数式が出てくるたびに読者の数が減っていく,と言われていますが,本書では,あえて税率や料率など,なるべく具体的な数字を上げることを心がけました。お金の話は,具体的な数字で考えないと実感がわかないからです。できれば,税金の計算や複利の計算などは自分で電卓を叩いて数字を確かめてください。数字は嘘をつきません。いい意味でも悪い意味でも,現実を知ることができます。
最後になりましたが,わたしは,先生方がお金の世界について詳しくなることは特別な意味があると思っています。学校の先生の何気ない一言や考え方,何かの折に紹介してくれた本は,生徒に大きな影響を与えるものです。30年以上前に先生から褒められた言葉や注意された言葉,わたしは今でもはっきりと覚えています。
お金の話題をタブーとするのでなく,モノの値段の相場や最低賃金,平均年収などの一般的なお金のことを適度に話題にして,子どもからのお金の質問にも気軽に答えてあげてください。現場に立たれる先生方のお金に対する考えが深まれば,その影響で,子どもたちもお金の世界に興味をもって,将来のことを考えるようになるかもしれません。その結果,お金に対して偏見のないまま社会人としてスタートできて,お金のことでムダに悩まなくて済むかもしれません。この本が,将来お金のことで苦しむ人を一人でも減らすきっかけになるのならば,これ以上うれしいことはありません。わたしは,かなり本気でそう思っています。
それでは,一生役に立つお金の勉強を始めましょう!
2022年6月 /佐藤 龍
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- 明治図書
- お金に関する基本的なことから学べ、疑問や不安に寄り添ってくれるような一冊です。2022/8/21iroirotomaton