- はじめに
- /木村 明憲
- 第1部 子どもの「学び」と主体性
- 子どもたちが主体性を発揮して学ぶには /木村 明憲
- 主体性をどう捉えるか
- 主体性についての議論
- 主体性を育むことについての世界的潮流
- 我が国における主体性
- 主体性と「学びに向かう力、人間性等」
- 主体性を発揮して学ぶ学習プロセスとスキル
- 子どもたちの学ぶ「過程」に注目する /若松 俊介
- 主体性とは何か
- 子どもたちの主体性を奪っていないか
- 主体性を意識すること
- 子どもの「問い」と主体性
- 授業では誰が一番主体であればよいか /佐藤 和紀
- GIGAスクールで分かれた明暗
- その空間で忙しそうなのは誰か
- 先生がいなくとも学習に取り組むことができるか
- その学習は誰が決めたものなのか
- 一人で取り組むための学び方
- 一人で取り組むための学習過程と学び方の関係
- 協働は起きるのか
- 子どもが主体である状態
- 主体的な学びを目指して
- コラム1 「子どもに任せる」の失敗から先へ /若松 俊介
- 第2部 子どもの「学び」と教師の力
- 子どもたちの学びを支える教師 /若松 俊介
- 「学ぶ」とは?
- 個別最適な学び
- 個別最適じゃない学びって?
- 学びを支える教師の役割
- 子どもたちのことを知ろうとする教師
- 子どもの学びを支える教師の成長
- どのような教師が成長できるのか /佐藤 和紀
- 教師の成長
- 教員養成で何を教えるか
- GIGAスクールの授業を見たことはあるか、許してもらえるか
- いい授業を見ているか、許してもらえるか
- 子どもの学びと教師の姿
- 子どもの学びを支える教師の力とは /木村 明憲
- 「教師の力」は時代や場所で異なる?
- それでも「同じ」こと
- 主体的・対話的で深い学びを実現するための教師の力
- 深い学びの視点を生かした授業の構想
- 情報活用能力の重要性
- 情報活用能力の「知識及び技能」を高める教師の力
- 情報活用能力の「思考力、判断力、表現力等」を高める教師の力
- シンキングツール活用の土台を育む指導
- シンキングツールの助走段階
- シンキングツールの習得段階
- シンキングツールの活用段階
- 情報活用能力の「学びに向かう力、人間性等」を高める教師の力
- 二つの重要な力
- コラム2 「教師の成長」を後押しする /若松 俊介
- 第3部 子どもの「学び」とICT
- 子どもの学びを支えるICT /佐藤 和紀
- 子どもがICTを学びに使うために
- 学びの中のICT
- 情報活用能力という考え方
- 子どもはICTスキルをどのように習得するか
- これからの学びの中のICT
- 資質・能力の三本柱とICT活用を結びつける /木村 明憲
- 授業でのICT活用を整理する
- 授業におけるICT活用の枠組み
- 子どもがICTを活用して探究できる授業・単元をつくる
- ICT活用の枠組みと単元縦断型プロセス
- ICT活用で可能性を広げる /若松 俊介
- これまで大事にしてきたこと×ICT
- ICTを活用しようとすること
- 「ICTは金属バット」なのか
- 子どもの学びに注目して考える
- 10年後にはどんな議論になっているだろう
- 鼎談 これからの「学び」の話をしよう
- /木村 明憲×佐藤 和紀×若松 俊介
- おわりに
- /佐藤 和紀
はじめに
本書を執筆するきっかけは、明治図書で教育書を編集されている大江文武氏からの突然のメールでした。私は、このメールを帰宅途中の駐輪場で受け取ったことを鮮明に覚えています。なぜ、そのことが鮮やかに心に残ったのかを考えると、その時に私が感じていた問題意識と、大江氏から送信いただいた本書の趣旨の大部分が一致していたからではないでしょうか。
以下が、大江氏から頂いた企画趣旨の一部です。
GIGAスクールの2年目に入り、学校現場では「ICT活用」に関する授業実践が本格化しております。また、中教審答申において「令和の日本型学校教育」「個別最適な学び・協働的な学び」といった新たなキーワードも示されました。
しかしながら、ともすると教育現場・実践研究の場では、「ICTをどう活用させようか?」「どうすれば個別最適≠ノなるか?」…そんな、ある種の与えられた問い≠ェ、「子どもたちの学び」という本質を追究する教師の眼を、曇らせているということはないかと懸念しております。また逆に、そうした「新しさ」「未知」への心理的距離感が、「子どもたちの学び」の可能性の芽を摘んでいるということはないでしょうか。
「新しさ」のみに踊らされることなく、様々な視点から、今、本当に必要な「子どもの学び」の在り方を見極めた先にこそ、教育のDX(デジタルトランスフォーメーション)―すなわち、変容・再定義の必要性を真に理解し、実現していくことができるのではないかと感じます。
そこで今回、「子どもの学び」という軸をもって、(中略)本当に必要なこれからの学びの在り方、教師の力について考えを深められる本を企画できればと考えました。
メールの中で、強く共感した部分を太字にしています。(太字省略)
私は、このメールを受け取る以前から、ぼんやりと以下のようなことを自問自答していました。
授業等で子どもたちがICTを活用することはとても大切なこと。また、子どもたち一人一人に最適な授業を構築することもとても重要。しかし、学校現場において、それらの言葉の本質を語り合い吟味することが、様々な制約の中で可能な状況なのだろうか。言葉の本質が追究されずに表面的なICT活用や個別最適化、協働学習に留まってはならない。今後の未来を創造していく子どもたちに、身につけていってほしい力は何なのか、それらの力をどのようにして育成すればよいのか、また、どのようにすればその力を発揮しながら学ぶことができるようになるのかが明らかにされるべきではないのか。
そんなときに大江氏からメールを受け取り、私の心の中で『これまで我が国が大切にしてきた「子どもの学び」、これからの時代を生きる上で大切にしていくべき「子どもの学び」、そして、今・未来をよりよく生きるための「子どもの学び」の在り方について考える必要がある』という一つの結論に行き着いたのです。
加えて、大江氏のメールには、続きがありました。それは、これらの「子どもの学び」を佐藤和紀氏、若松俊介氏の3名で議論を交わしながらまとめていきたいということでした。この提案に私はとても心が踊りました。私一人では、到底深められない、そして、表現しきれない「問い」を、これまで様々な分野で活動を共にしてきた両氏と考えを共有しながら表現することができることに大きな希望を感じたのです。
実際の執筆では、我々3名が「子どもの『学び』と主体性」「子どもの『学び』と教師の力」「子どもの『学び』とICT」の3部をリレー形式で書き進め、それぞれが考える『本質』を追究していきました。また、執筆を終えた後に行った鼎談においても、それぞれが執筆したことを土台に、さらに『本質』を深める議論を行いました。
私は、本書の原稿を執筆したり、鼎談で議論を交わしたりすることを通して自らの考えを発信するとともに、佐藤氏、若松氏の教育に対する見方・考え方を受け取ることができました。そして、両氏の見方・考え方に触れることで、自らの「子どもの学び」に対する見方・考え方が変化し、一層深まったと感じています。
この本を手に取っていただいた読者の皆様は、どのような問題意識で、もしくはどのような興味で本書を手に取っていただいているのでしょうか。そこには、今後の授業実践、学校運営、児童生徒理解など様々なテーマがあることを想像します。そのような、問題意識や興味を軸に、まず、我々が一つ一つのテーマである「子どもの学び」をどのように捉えているのか? また、それぞれの見方・考え方が重なる部分、相反する部分は何なのか? といった視点を問いにして読み進めていただけたらと思います。
そして、これまで我が国が大切にしてきた「子どもの学び」、これからの時代を生きる上で大切にしていくべき「子どもの学び」、今・未来をよりよく生きるための「子どもの学び」の在り方を考え、読者の方々なりの教育の『本質』を形成していただくことにつながればと思います。
本書の内容が、読者の皆様の「子どもの学び」を改めて考えるきっかけになれば幸いです。
2023年4月 /木村 明憲
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- 明治図書
- 今すぐ仕事にどうというよりは、自己の研鑽のためにという感じです。大きな視点で見るのにというきっかけにはよいと思います。2024/3/940代・小学校教員
- 最高です。2023/9/1830代・小学校教員
- これからの学びについて学ぶことができた。2023/8/2760代・中学校管理職
- これからを生きる子どもたちのために、教師がいなくても学べるようにする授業とは、ICTの役割とは、がよく分かった。2023/8/1730代・小学校教員
- 理論や考え方がわかりやすくまとめられている。2023/7/950代・小学校教員