- まえがき
- 1章 「個別最適な学び」,「協働的な学び」という観点から,理科授業を捉え直す
- 1 学習指導要領のポイントを理解する
- 重要キーワード@資質・能力
- 重要キーワードA主体的・対話的で深い学び
- 重要キーワードB見方・考え方
- 2 理科の学びとは?
- 自然の事物・現象を対象とした学び
- 問題解決
- 問題を科学的に解決する
- 学んで得たことを,日常生活等に当てはめる
- 3 「個別最適な学び」「協働的な学び」とは
- いつ出てきたのか?
- 「個別最適な学び」
- 「協働的な学び」
- 学習指導要領と「個別最適な学び」「協働的な学び」との関連
- 「個別最適な学び」「協働的な学び」と「主体的・対話的で深い学び」との関連
- 4 理科の単元展開のTYPE
- 「個別最適な学び」から見つめ直す
- 「協働的な学び」から見つめ直す
- 理科の単元展開の在り方を見つめ直す
- TYPE1 共通の問題を同じ検証方法で追究する
- TYPE2 共通の問題を異なる検証方法で追究する
- TYPE3 共通の問題を予想ごとにみんなで追究する
- TYPE4 複数の問題をみんなで順番に追究する
- TYPE5 全体の問題を設定し,個別の問題ごとに追究し,全体の問題に戻る
- TYPE6 共通の問題をみんなで追究した後に個別の問題を追究する
- TYPE7 個別の問題を個別に追究する
- 2章 「個別最適な学び」,「協働的な学び」の観点で授業づくりを捉え直す
- 1 小学校理科の2区分の特性を踏まえた「個別最適な学び」「協働的な学び」の授業づくり
- 2 区分の特性から,考える
- A区分の特性を踏まえた授業づくり
- B区分の特性を踏まえた授業づくり
- 3 学習内容の理解の仕方から,考える
- 単元構成の考え方
- A区分の単元構成例
- B区分の単元構成例
- 4 子供が働かせる「理科の見方・考え方」から,考える
- A区分の特性を踏まえた理科の見方・考え方
- B区分の特性を踏まえた理科の見方・考え方
- 5 子供の発達の段階から,考える
- A区分における子供の発達の段階を考えた学び
- B区分における子供の発達の段階を考えた学び
- 6 ICT端末の活用から,考える
- A区分におけるICTの効果的な活用
- B区分におけるICTの効果的な活用
- 7 評価から,考える
- A区分における評価事例
- B区分における評価事例
- 3章 「個別最適な学び」,「協働的な学び」を意識した授業
- TYPE1 共通の問題を同じ検証方法で追究するTYPE
- TYPE2 共通の問題を異なる検証方法で追究するTYPE
- TYPE3 共通の問題を予想ごとにみんなで追究するTYPE
- TYPE4 複数の問題をみんなで順番に追究するTYPE
- TYPE5 全体の問題を設定し,個別の問題ごとに追究し,全体の問題に戻るTYPE
- TYPE6 共通の問題をみんなで追究した後に個別の問題を追究するTYPE
- TYPE7 個別の問題を個別に追究するTYPE
- あとがき
まえがき
今,私の脳裏には,ある日の授業風景が浮かんでいます。小学校第3学年「昆虫の育ち方」についての授業をしていたときのことです。どのような流れでそうなったのか,記憶が定かではないのですが,たぶん,ある子供が休み時間に,花壇でよく見かける,カブトムシの幼虫にそっくりな,コガネムシの幼虫を何匹か捕まえてきました。
「カブトムシの幼虫だ!」
「いや,カブトムシの幼虫は,こんなに小さくない!」
「これから大きくなるんだよ」
「どこにいたんだ。もっといるかもしれない」
ちょうど理科では,昆虫の育ち方の学習を進めていましたから,このエピソードを授業に組み込みたいと考えた私は,次の理科の時間に,本物のカブトムシの幼虫を子供に出合わせました。
「これがカブトムシの幼虫だよ。やっぱり大きさが全然違うよ」
「いや,これから大きくなるんだよ」
「あしは,どちらも6本だね」
子供たちは,両者を比較し始め,その共通点や差異点を明らかにして,解決したい問題にせまっていきました。その問題とは,もちろん,ある子供が休み時間に捕まえてきた生き物は,「カブトムシの幼虫なのか」です。
子供たちは,あしの数や体のつくり,大きさ,模様など,様々な視点から観察を行っていました。そこで,頃合いを見計らって,私は,このように言ったと思うのです。
「観察して分かったことを発表してください」と。
そしたら,広希くんが,こう言ったのです。このことは,はっきりと覚えています。
「先生,そっちでやってて!ぼくはもっと観察するから!」
小学校理科の学びは,「問題解決」です。これはこれまでも大切にされてきたことであり,これからも大切にしていくべきことです。しかしながら,問題解決の過程自体が硬直してはいないだろうかと思うのです。そういう私も,先の広希くんの発言に,どう対応したのかといえば,「みんなの結果を発表してもらうから,いったん観察をやめましょう」といった具合だったと思います。皆さんだったらどうしますか?
本書のテーマである「個別最適な学び」「協働的な学び」という観点から,理科の「問題解決」を見つめ直したとき,その過程にバリエーションや柔軟性が生まれたり,A区分とB区分の学び方の違いに気付いたりと,様々な視点から,問題解決の活動を捉え直すことができると思うのです。
本書が,少しでも,皆さんの日々の理科授業について考える際のヒントになるのであれば,こんなに嬉しいことはありません。
/鳴川 哲也
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- 明治図書
- もう少し文字を減らして図式的なものにすると内容が把握しやすい。2024/8/950代 小学校教諭