- はじめに
- 序章 ドン底から立ち上がる!失敗して傷ついた心のリカバリー法
- 1章 学級開き、スタートダッシュならず…
- 1 春休み期の3月にアップデートを図ろう
- 2 板書中心の授業を見直そう
- 3 忘れがちなことは事前に予防しておこう
- 4 自分の間違いは素直に謝ろう
- 5 さりげなく周りを助けている子をほめるようにしよう
- 6 「…しない」というだけでなく置き換え行動を指導しよう
- 7 大失敗になる前にこまめに失敗指導を改善しよう
- 2章 模範的でない自分は、教師失格かも…
- 1 グチをこぼすのではなくハッピー循環で突破しよう
- 2 「おかしい」とかみつく前に学校モニタリングを行おう
- 3 年齢によって抱える悩みが異なることを知ろう
- 4 心を落ち着ける呼吸法を試してみよう
- 5 学校での何気ないトークを、バイアスに気づくきっかけにしよう
- 6 悪い噂を立てられている先生にアプローチしよう
- 3章 先生の声だけが、むなしく響く授業…
- 1 子どもの実態把握をする中で指導の問題点を見つけよう
- 2 「できない」と文句を言うのは一学期までと決めよう
- 3 「前任校は…」「前の先生は…」と比べるのをやめよう
- 4 塾の先生とは異なる、学校の先生の強みを見つめよう
- 5 禁止令は使わず、実況中継で行動改善を促そう
- 6 予想外の授業展開にズレない仕組みづくりをしよう
- 4章 とっておきの決めゼリフが、子どもの心に響かない…
- 1 子どもの話を親身に聴くことから始めよう
- 2 子どもの本音から目を逸らさず、先生の方から引き出していこう
- 3 声の大きさ・速さ・間・抑揚を意識してひきつけよう
- 4 決め技一本勝負ではなく、様々な方法を身につけよう
- 5 子どもに役割を与えることによる影響をよく分析しよう
- 6 子ども目線で分析して子ども主体の活動を増やそう
- 7 教科指導に限界を感じたら、別の方向を考えてみよう
- 5章 子どもとの関係が、悪化するばかり…
- 1 怒ってばかりの自分にサヨウナラをしよう
- 2 子どもの言葉にカチンときてしまう自分を受け入れよう
- 3 何気ない会話から始めて安心して話せる雰囲気を醸成しよう
- 4 いじめの構造を俯瞰的に眺め、介入策を考えよう
- 5 ダメな自分とつき合い、「モヤモヤ」を外に出そう
- 6 学級が落ち着いていても騒がしくても、安全教育は徹底しよう
- 6章 保護者にも同僚にも、助けてもらえない…
- 1 保護者からの意見や苦情には心の余裕に応じて対応しよう
- 2 助けてほしいという自分の気持ちに気づこう
- 3 ケガをした子の心の傷に向き合おう
- 4 退勤後は仕事の続きをいったん切り離そう
- 5 周りの言うことを聞くだけでなく、思いきってチャレンジしよう
- 6 挑戦しないことが一番の失敗 全ての経験を生かそう
- おわりに
- 参考・引用文献
はじめに
○学校の失敗でこんなことはありませんか?
1.帰宅後、欠席した子への連絡を忘れていたことに気づいた。
2.教材研究のために教科書を家に持ち帰った。しかし、一度も開かず週明け学校に持っていった。
○笑い話にされるような失敗をしたことはありませんか?
3.子どもの名前を間違えて呼び、漢字の書き順を間違えた。翌日は遠足の道に迷った。
お昼にお弁当を食べていた女子の会話
「次は先生、何を間違えるのかな」
「生き方じゃない」
○想像するだけで背筋がゾッとする失敗をしたことはありませんか?
4.土曜参観があることをすっかり忘れていて、お昼前に気づいた。
5.つい感情的に子どもを叱ったが、その子どもは関係がなかった。
6.つい周りの先生のよくない話を他の人に話したところ、たまたまその先生が通りがかり話を聞かれた。
これらの失敗についての背景や考え方は本書に詳しく記しますが、解決を短くまとめると以下の通りです。
1.忘れないための仕掛けをつくりましょう。
2.教科書で筋トレですね。自分の疲れと頑張りたいという思いにズレが出てきた危ない状態です。バーンアウトまでいかないように対策しましょう。
3.小話です。続けて失敗しないための対処や、自分の失敗をユーモアで伝える技術が必要です。
4.背筋がゾッとしますね。もう取り返せない失敗。その後どうするかを考えます。
5.先生失格! の認知(考え)が失敗です。ひょっとしたら、完璧主義かもしれません。怒りのコントロール法を考えましょう。
6.この失敗は、気まずいですね。逆転の発想(例外の誇張とウィンザー効果)で解決できます。
全部大丈夫な失敗です。
本書を手に取った人は、これらが失敗だと気づいているはずです(認知)。気づくことから、改善の行動は始まります。これら全ての失敗を行動経済学、臨床心理学、教育社会学などの学問の知見をもとに、背景の把握を行うことで新たな成長につなげましょう。ハロー効果、マシュマロ実験、ミルグラム実験、バイアスといった大学で聞いた用語が、学校現場で実際どう活用できるかまで、具体的に誤解を恐れずに(論文では、相関であって因果関係まで言えなくても、指導アイデアの素として)踏み込んでいます。
失敗学において一番気をつけることは、失敗によってあなたが心身の不調や悩みを抱えることです。あなたの心身が一番大切です。常にあなたを一番に考えてください。体調を崩すと、失敗に対して何もできなくなります。また、心が落ち込みすぎると、完全に治すことは難しく、長らく引きずることになります。本書で紹介するイギリス元首相のチャーチルのように、抱えることもあります。長く抱えることになったときの対処法も記しています。
次に、本書の内容を学校現場で試してみることで、学校現場での失敗からアップデートされた自分に変わる仕掛けとなる定石を示しました。本書を手に取り、ときおり読み直すことで、想像以上の力に変わっていくことでしょう。まずは、試してみることで、今まで何となく避けてきた理論と実践のかみ合わせがよくなります。
論文は、条件の違いなどでそのまま実行しても効果が薄いことがあります。このことから、本書では論文の内容の理解を損ねすぎない程度に、わかりやすく学校現場でかみ合うようにしている部分もあります。本書で紹介する事例はあくまで架空のものです。また、私の複数の専門分野(臨床心理学、学校教育学)と経験をベースに他領域の学問分野を学校現場に適した多元主義的に取り入れています。学校現場に適した多元主義的とは、分野のいいところどりではなく、学校現場で最もよいと思われる理論を、私の視点で選択しています。
有名論文や理論をベースにしながらも、学校の先生が現実的に行える方法やツールを、多数紹介しています。手軽に取り組めるように、例えばクリッカーというトレーニングツールはカスタネットで代用するといったように、取り組むまでのハードルを下げています。興味のある内容から取り組み、まずは効果を実感してみてください。
/村上 仁志
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- 明治図書
- 失敗から立ち直るのが苦手な自分にとって、あたたかく丁寧に具体的に解説していただけて非常に参考になった。2022/4/1030代・小学校教員