- はじめに
- この本の使い方
- 第1章 ICTフル活用授業を始めるために知っておいてほしいこと
- 01 ICTは所詮手段なのか?
- 02 なぜICTを活用した授業を難しいと感じる教師が多いのか
- 03 ICTにはそんなに詳しくなくていい
- 04 苦手教科でこそICTを活用する
- 05 ICT活用で求められる我慢
- 06 様々なアプリに手を出す
- 07 端末使用を禁止するのは悪手
- 第2章 Before & AfterでわかるICTフル活用が当たり前になる授業
- 準備編 ICTフル活用授業を成立させるおすすめアプリ,サービス
- Pattern01 子供たちに授業の流れを配信
- 【活用ツール】Google Classroom/Microsoft Teams他
- Pattern02 写真の撮影
- 1年 【生活科】あそびにいこうよ
- 校庭の遊び場で見つけた春を撮影する
- 【活用ツール】カメラアプリ/Padlet
- 3年 【理科】しぜんのかんさつ
- ヒマワリとホウセンカの比較を通して詳しく観察する
- 【活用ツール】カメラアプリ/Chrome描画キャンバス
- 5年 【家庭科】整理・整頓で快適に
- 前後の写真を撮影し,整理・整頓に取り組んでみての感想を書き込む
- 【活用ツール】Canva
- 6年 【算数】線対称
- 校内にある線対称な図形を探して撮影する
- 【活用ツール】Padlet/Wakelet
- 6年 【理科】てこのはたらき
- 校内の様々な「てこ」を探して撮影・分類する
- 【活用ツール】Padlet
- Pattern03 ワークシートのデジタル化
- 3年 【算数】わり算
- デジタルワークシートで数図ブロックを操作する
- 【活用ツール】Canva/Googleスライド/PowerPoint他
- 6年 【理科】人や動物の体(血液のはたらき)
- 他者参照しながらデジタルワークシートにまとめる
- 【活用ツール】Canva/Googleフォーム/Suno
- Pattern04 動画の撮影
- 5年 【国語】同じ読み方の漢字
- 漢字の意味を調べて動画にまとめ,共有する
- 【活用ツール】Canva/Padlet
- Pattern05 個別の作品づくり
- 3年 【社会】工場の仕事
- 工業製品の宣伝シールのデザインをつくる
- 【活用ツール】Googleスライド/Microsoft PowerPoint/Canva
- Pattern06 ファイルを共有して共同編集
- 3年 【社会】店ではたらく人
- 協働作業で新聞をつくる
- 【活用ツール】Canva
- 3年 【道徳】明るくなった友だち(友情,信頼)
- 共有された心情数直線に自分の考えを表す
- 【活用ツール】Canva他
- 6年 【国語】意見文を書こう
- 共有された考えから自分の考えを深める
- 【活用ツール】Canva他
- Pattern07 手書きのノートをデジタル化
- 3年 【国語】本で知ったことをクイズにしよう
- プレゼンテーションをつくってクイズを出し合う
- 【活用ツール】Googleスライド/PowerPoint/Canva
- Pattern08 地図サービスの活用
- 3年 【社会】火事からくらしをまもる
- ストリートビューで地域の消防施設・設備を探す
- 【活用ツール】Google Earth
- 6年 【算数】およその形と大きさ
- 地図アプリで調べたい場所を探して,およその面積を求める
- 【活用ツール】Googleマップ/Google Earth
- Pattern09 オンラインミーティングツールを教室で活用
- 3年 【道徳】絵葉書と切手
- オンラインミーティングツールでメンバーを入れ替えて話す
- 【活用ツール】Google Meet
- Pattern10 クイズアプリの活用
- 5年 【国語】和語・漢語・外来語
- 和語・漢語・外来語を探して文章をつくり,クイズにする
- 【活用ツール】Kahoot!
- 2年 【算数】九九のカード練習
- 九九のクイズに取り組み,苦手を克服する
- 【活用ツール】Quizlet
- Pattern11 音楽の作成
- 4年 【音楽】「さくら さくら」の音階で旋律づくり
- DAW(Digital Audio Workstation)で旋律をつくる
- 【活用ツール】カトカトーン
- 2年 【算数】九九の歌づくり
- 7の段のオリジナルソングをつくって繰り返し歌う
- 【活用ツール】Suno/生成AI(ChatGPT,Gemini,Canvaなど)
- 5年 【算数】整数のまとめ
- まとめと振り返りの文章からオリジナルソングを生成する
- 【活用ツール】Suno/生成AI(ChatGPT,Gemini,Canvaなど)
- Pattern12 生成AIの活用
- 4年 【社会】立佞武多の秘密を探ろう
- 意見や考え・振り返りをAIで整理する
- 【活用ツール】Canva/Suno
- 6年 【理科】てこのしくみとはたらき
- 生成AIが応答するフォームで思考の壁打ちをする
- 【活用ツール】Googleフォーム/Gemini
- Pattern13 振り返りをデジタル化
- 【活用ツール】ふきだしくん/フォームアプリ/Padlet他
- Column 低学年の導入初期に役立つ小技
- おわりに
- 索引
はじめに
先日参加した教育イベントで,「誰ひとり取り残さない授業は本当に実現できているのか」という問いに直面し,深く考える機会を得ました。結論として,残念ながら「まだ実現できていない」というのが私の答えです。
「誰ひとり取り残さない授業」は,長年にわたり多くの教師が目指してきた理想です。しかし何十年もずっと飾られ続けた「絵に描いた餅」であることも否定できないと思います。特に公立小学校では,多様な特性のある数十名の子供たちが集う学級で,担任の力だけで誰ひとり取り残さないのは困難です。
しかし近年,ようやくその理想を追求できる環境が整いつつあります。GIGAスクール構想により,子供たち一人ひとりに端末が配付され,教室にはWi-Fiが設置されました。すべての子供たちがネットワークに接続できるこの環境こそ,「誰ひとり取り残さない授業」を実現するための土台となります。
私は初任の頃から30年以上にわたり,ICTの教育活用に取り組んできました。当時は,教室や職員室でネットを使うために,管理職と協力して床に穴を開けたり,廊下にケーブルを這わせたりと,手探りでネットワークを構築していました。それが今では,ICT機器は鉛筆や消しゴムのように当たり前の道具となりました。
本書では,ICTを日常的に活用し,「誰ひとり取り残さない授業」を目指すための具体的な方法と実践例を紹介しています。ただし,「見方・考え方を働かせる」や「資質・能力の育成」についての具体的な言及はしておりません。これらのテーマについては,私よりも深く研究されている方々の著書をお読みいただければ幸いです。
私がずっと取り組んできたのは,「ICT機器を活用して授業を効率良く進め,時間を生み出す」という点です。ICTを効果的に活用することで,授業中の様々な時間が短縮されます。その生み出した時間で,子供たちがじっくりと見方・考え方を働かせ,資質・能力を育成する授業に取り組んでほしいと願っています。
ICTの操作に不慣れな方でも安心して取り組めるよう,詳しい手順や図解を用意しています。また,特設サイトでは操作動画を提供し,スムーズなスタートをサポートします。
すでにICTを日常的に使用している先生も,本書から新たなヒントやアイデアを得ることができるでしょう。より効率的な授業運営や,子供たちの深い学びを促す方法など,さらなる深みへと踏み込むことができます。
「これらはすでにすべて実践している」「お前なんかより私のほうが進んでいる」という方は,ぜひその取り組みを世の中にシェアしてください。
子供たちの未来に橋をかけるために,最新のテクノロジーを取り入れ,より効率的で効果的な授業を実現する一助として,本書がお役に立てることを心より願っています。
2024年12月 /前多 昌顕
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- 明治図書