- はじめに
- 「時間泥棒」から「教育の質向上」へ─私が挑んだDX
- 校務DX
- 職員ポータルサイトで情報共有
- Google KeepとGoogle Chatで職員連絡をスマート化
- 共有ドライブで職員会議をペーパーレス化
- ―印刷コスト削減と業務の効率化
- 2種類のアカウントでセキュリティレベルを高めよう
- 職員室のWindows PCもGoogleで管理しよう
- Googleエンドポイント管理で実現する,安全で柔軟な校務環境
- 情報発信DX
- 学校サイトと保護者サイトを使い分けよう
- 保護者サイトへのおたより掲載1
- ―GoogleサイトとBloggerで学年通信をデジタル化
- 保護者サイトへのおたより掲載2
- ―GASによる自動公開で業務効率化とセキュリティ向上
- 学校情報を発信する
- ―フォームとGASでWebサイトへの自動公開を実現
- 保護者説明会をYouTube Liveで
- 教務DX
- 年間行事・月行事・週行事の予定表をGoogleスプレッドシートで一括作成
- 年間予定をGoogleカレンダーでスマートに表示
- 時間割の手間を削減
- 養護教諭DX
- フォームで健康観察を入力し,自己管理能力を育もう
- 欠席連絡の一元化
- 生徒指導DX
- 困ったときにはヘルプスタンプ!緊急時の生徒指導に対応
- Googleカレンダーで教育相談予約をスマート化
- 特別活動DX
- 集合連絡を見える化しよう
- 自治会活動も部活動も,自分たちでつくる活動に
- ―サイトとClassroomで情報共有をスムーズに
- Googleサイトで学級連絡をスマート化
- 入部届もデジタルに
- 落とし物連絡をしなくても自分で気づく仕組みづくり
- 学習指導DX
- 学習の振り返りを蓄積してさらなる学びにつなげよう
- 小テスト・単元テスト・定期テストの概念を変えよう
- 学びを継続させよう
- ―卒業時のデータの取扱い
- 道徳DX
- 道徳ポートフォリオをデジタル化
- ―生徒の学びを深め,教員の生徒理解を促進
- 道徳の教材研究をみんなでやろう Let’s Do Talk!
- 附属DX
- Google Meetのブレイクアウトセッションで校内研修を活性化
- 教育実習生もGIGAスクール!教育実習DX
- おわりに
はじめに
「時間泥棒」から「教育の質向上」へ―私が挑んだDX
春は桜,夏はねぷた,秋は紅葉,冬は雪燈籠と,四季折々の風情が楽しめる観光地として名高い青森県弘前市。その中心部に位置するのが,弘前大学教育学部附属中学校です。
中等普通教育を施すことに加え,教員志望者を育てる教育実習と地域の教育に貢献するモデル校としての教育実践研究を主眼に,日々教育活動に取り組む本校は,2016年,学校ホームページ運営の効率化という課題解決をきっかけに,Google Workspace for Education(当時はGoogle Apps for Education)を導入しました。
当時,ホームページ管理は外部業者に委託しており,お知らせのPDFファイル1つ掲載するだけでも業者に依頼する必要があり,そのたびに費用が発生していました。
「自分たちでホームページを運営できれば,もっと自由にお知らせを発信できるし,コスト削減にもつながるのでは?」
そう考えた私は,無料で利用でき,HTMLなどの専門知識がなくても使えるホームページ作成ツールを探しました。そして見つけたのが,Googleサイト(TM)だったのです。
Googleサイトで叶えた,自由で効率的な情報発信
Googleサイトを導入したことで,本校はいつでも簡単にホームページを更新できるようになりました。さらに,Googleドライブ(TM)と連携することで,作成した資料をスムーズにホームページに掲載することも可能になりました。
しかし,私はGoogleサイトの活用を学校ホームページの運営にとどめませんでした。当時の朝の打ち合わせはすべて口頭で行われ,時期によっては生徒に伝える情報が多すぎて,打ち合わせに15分以上かかることもありました。
「この時間をもっと有効活用できないか?」
そう考えた私は,職員用のポータルサイトを作成しました。
当時,Googleサイトには掲示板機能やカウントダウンカレンダーなどの機能がついていたので,職員の朝の打ち合わせのときに活用してもらうように働きかけました。ポータルサイト導入によって,生徒の集合場所や伝達事項が可視化され,打ち合わせ時間は3分程度に短縮されました。生まれた余暇は,生徒の自治的な活動や対話の時間として活用されています。
1人1台端末で実現した,見える化による情報格差の解消
GIGAスクール構想で1人1台端末が導入された現在,本校ではクラスごとのポータルサイトで,子どもたちも見える化された情報にいつでもアクセスできるようになりました。視覚優位の生徒にとっても,見える化されたことで安心して情報に接することができるようになりました。
働き方改革から生まれた,教育の質向上という副産物
このように,本校ではGoogle Workspace for Educationを様々な形で活用し,働き方改革を進めてきました。
当初は,業務効率化やコスト削減を目的とした取り組みでしたが,結果的に教育の質向上にもつながるという副産物が生まれました。
具体的には,「教員の情報共有がスムーズになり,より効果的な授業づくりが可能になった」「生徒一人ひとりに寄り添った学習環境を構築することができた」「保護者とのコミュニケーションが活性化し,学校への理解や信頼関係が深まった」といった成果があげられます。
弘前大学教育学部附属中学校のDXは,DXのための取り組みではなく,働き方改革の一環として取り組んできた校務改革が結果的に教育の質を高めるものになったという点がポイントです。
この事例が,みなさんの学校の教育改革のヒントになれば幸いです。
2024年11月 /佐々木 篤史
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