- はじめに
- Chapter1 研究主任にかかせない仕事スキルのポイント
- 1 研究主任の仕事とは
- 2 自分の成長が実感できる取組にするための心得
- 3 短時間で効果的な取組にするための心得
- 4 当たり前を見直し,意味と目的を問い直す
- Chapter2 研究主任の仕事スキル50
- 年度はじめ
- 1 印象に残るキャッチフレーズ作成スキル
- 2 ぱっと見て分かるグランドデザインのまとめ方スキル
- 3 バランスのよい各学年の授業者の決め方スキル
- 4 全員参加の協議システム構築スキル
- 5 参加者全員に一貫した授業改善の視点をもたせるスキル
- 6 コストパフォーマンスの高い指導案作成スキル
- 7 研究主任が一人で仕事を抱え込まない体制構築スキル
- 8 持続可能な研究のために副主任との連携スキル
- 9 持続可能な研究のために仕事を細分化・分担するスキル
- 10 時間を上手に活用するための年間計画づくりスキル
- 日常生活
- 11 授業を見合い語り合うための掲示板活用スキル
- 12 気軽に授業を見合える雰囲気づくりスキル
- 13 若手教員との良好な関係づくりスキル
- 14 管理職との連携・報連相スキル
- 15 保護者や地域に研究成果を効果的に伝えるホームページ活用スキル
- 16 全員一丸となる研究推進だより作成スキル@
- 17 全員一丸となる研究推進だより作成スキルA
- 研究授業前
- 18 授業者の指導案作成を支えるスキル
- 19 効率的な指導案検討の体制構築スキル
- 20 研究授業前日の授業者の準備を支えるスキル
- 21 当日の時程などを確実に伝えるスキル
- 22 お互いの意思疎通をスムーズにする講師との事前のやり取りスキル
- 研究授業当日
- 23 研究授業前に授業の見どころを講師に漏れなく伝えるスキル
- 24 研究授業開始までに参観者を間に合わせるスキル
- 25 研究授業中に参観者の様子を見取るスキル
- 26 協議の論点をスムーズに明確にするスキル
- 27 協議会までの講師との時間の有効活用スキル
- 28 効率的・充実の協議進行スキル
- 29 参観者全員が楽しい協議会になる協議システム構築スキル
- 30 協議の雰囲気を盛り上げるスキル
- 研究授業後
- 31 研究推進だよりで授業・協議のやりっぱなしを防ぐスキル
- 32 参加者全員の成長につなげる協議会振り返りスキル
- 33 研究主任として講師へのお礼の気持ちを伝えるスキル
- 34 ボトムアップで意見を吸い上げ協議方法を改善するスキル
- 研究発表会
- 35 斬新なアイデアを吸い上げるスキル
- 36 三者に意味のある当日の構成を練るスキル
- 37 各教員に公開授業の創意工夫を促すスキル
- 38 発表会の充実のための担当指導主事との連携スキル
- 39 参観者の興味・関心を高めるチラシ作成スキル
- 40 QRコードを生かしたリーフレット作成スキル
- 41 参会者を増やすための広報スキル
- 42 研究内容を確実に伝えるプレゼンテーションスキル
- 43 参会者のスムーズな動きを促す環境設定スキル
- 44 直前に慌てないための教室環境の確認スキル
- 45 授業の見方を深めるシンポジウムのファシリテーションスキル
- 年度末
- 46 意味のある年度末振り返りスキル
- 47 活用しやすい研究紀要まとめ方スキル
- 48 気持ちを伝える講師への連絡スキル
- 49 学校の実態に合った講師の選定・交渉スキル
- 50 次年度のビジョンとテーマの作成スキル
- おわりに
はじめに
研究主任は,自由度が大きく,リーダーシップとマネジメントの両方を発揮することのできる面白い役職だと思います。それゆえに,初めて研究主任になった方は,何をどこから始めればよいのか分からないこともあるかもしれません。そのような方に向けて,研究主任として私がこれまで取り組んできたことの全てを本書にまとめてみました。
平成29年の小学校学習指導要領改訂は,校内研究に力強い追い風をもたらしました。「育成を目指す資質・能力の明確化」や「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の推進」が目玉となった今次改訂の衝撃は大きく,多くの学校では校内研究が活発化したはずです。本校も例外ではなく,新しい考え方への期待感から授業改善への機運が高まりました。
一方で「働き方改革」は,校内研究には向かい風となっています。校内研究は,取り組まなければ学校運営が成り立たないという性質のものではありません。その上,これまでの慣習として,勤務時間を過ぎても延々と続けられる指導案検討や,楽しさや学びを実感できない協議といった実態が少なからずあり,「そういった研究こそ,まずはスクラップすべき」という雰囲気につながっていきました。しかし,本当にそれでよいのでしょうか。私たちの仕事の中心は,学習指導であるはずです。その力を高めるための校内研究が,働き方改革の名の下でないがしろにされてよいとは思いません。校内研究をやめるのではなく,やり方の見直しが必要なだけではないでしょうか。
学校という場所は,慣例や慣習が大きな力をもっています。何かを変えるためには学び直しの手間や時には自己変革という痛みを必要とするので,多くの人にとってはウェルカムではありません。変えようとする側にとっては,一筋縄ではいかない難儀な仕事。そう考えると,変えるチャンスは今です。小学校学習指導要領改訂という追い風は授業を変えることを推進し,働き方改革という向かい風もまた校内研究の従来のやり方を変えるという変革のうねりをもたらしているとも捉えることができるからです。
つまり,「ピンチはチャンス」です。この言葉は,勤務校の前校長が事あるたびにおっしゃっていました。私が失敗してうろたえていると,「ピンチはチャンス!」と言ってどんなことでも面白がりながら助けてくださいました。今のこの状況を嘆いていても仕方ありません。もしかしたら,一発逆転の大チャンスかもしれないのです。働き方改革の時代においても充実した校内研究を実現させ,同僚とともに授業力を高めていくことができれば,今後の取組の一つのモデルとなっていきます。校内研究の先頭に立つ研究主任こそそのような気概をもって,今このときを乗り越えていきたいものです。
自分の授業力を高めることも難しいですが,研究主任として学校全体の授業力を高めることの方が遥かに難しいです。組織として取り組むときには,様々な困難が立ちはだかります。しかし,それを同僚とともに解決していき,自分ではない誰かが確かに授業力を高め,そのクラスの児童の笑顔が増えたときには,言葉では言い表せない喜びや嬉しさを味わうことができます。本書を手に取ってくださった方にもこの感覚をぜひ味わってほしいと思います。本書がその一助となれば幸いです。
2021年1月 東京都大田区立松仙小学校 /松村 英治
コメント一覧へ