- はじめに
- 第1章 社会科主任の仕事とは
- 01 何を創り出し,何を削るかを検討する
- 02 地域の社会科研究会に出席する
- 03 校内に向けて発信する
- 04 行政を知る@文部科学省・国立教育政策研究所
- 05 行政を知るA教育委員会
- コラム 他の分掌との連携が大切
- 第2章 新年度を迎えるにあたっての準備
- 06 年度当初の教科会で大切にしたいことを提示する
- 07 教員の学年配当は「負担の平均化」で考える
- 08 年間指導計画作成は理想と現実を分けて考える
- 09 授業場面を想定して副教材を選ぶ
- 10 周到な準備に基づいて教材費を決定する
- 11 新着任者が安心できる情報共有を行う
- 12 教材,問いの共有フォルダをつくる
- 13 社会科の教員養成プログラムを提案する
- 14 初任者や新着任者の立場に立つ@適切な時期に教え,苦労の再生産をさせない
- 15 初任者や新着任者の立場に立つA「この人に聞けば大丈夫」という存在になる
- コラム “仕事ができる”は次に同じ仕事をする人が決める
- 第3章 社会科主任の実務
- 16 日常的に教科会を行う
- 17 社会科の授業だからこそ見える生徒の姿を共有する
- 18 単元ベースの授業づくりについて共有を図る
- 19 1時間の授業づくりについて共有を図る
- 20 授業参観を積極的に行う@ 見る側として
- 21 授業参観を積極的に行うA 見せる側として
- 22 フィールドワークを行う環境をつくる
- 23 外部機関との連携による授業をマネジメントする
- 24 生徒が参加できる取組を企画する
- 25 何でも社会科で引き受けない
- コラム 学年の動きと教科の動き
- 第4章 授業づくりと評価計画
- 26 授業づくり・授業改善の取り組み方を共有する
- 27 地理的分野の授業づくりのポイントを押さえる
- 28 歴史的分野の授業づくりのポイントを押さえる
- 29 公民的分野の授業づくりのポイントを押さえる
- 30 考察,構想する授業のイメージを共有する
- 31 授業と表裏一体でテスト問題を検討する
- 32 テスト問題を確認する
- 33 評価方法を確認,共有する@ 知識・技能
- 34 評価方法を確認,共有するA 思考・判断・表現
- 35 評価方法を確認,共有するB 主体的に学習に取り組む態度
- コラム 授業づくりの悩みに耳を傾ける
- 第5章 よりよい授業のために
- 36 出張に積極的に出られる環境をつくる
- 37 研究大会に参加する@ 授業研究
- 38 研究大会に参加するA 実践報告
- 39 研究大会に参加するB 理論研究
- 40 研究大会で得たものを自校に還元する
- 41 研究授業を行う@ 社会科主任の役割
- 42 研究授業を行うA 教科としての挑戦
- 43 研究授業を行うB 成果と課題の発信
- 44 書籍を通して学ぶ環境をつくる@ 社会科教育
- 45 書籍を通して学ぶ環境をつくるA 教科の背景学問(教科内容)
- コラム 他者の授業のよいところを探す
- 第6章 教育実習生の指導教員になったら
- 46 教育実習生のための授業計画を組む
- 47 定時退勤できるように指導を行う
- 48 教育実習生の視点に立って指導を行う
- 49 教育実習生の研究授業を教科全体でサポートする
- 50 教育実習が一生の財産になるような指導を行う
- コラム 教員養成に携わることで指導教員も成長する
- 第7章 次年度に向けた準備
- 51 年間指導計画の見直しを行う
- 52 次年度に購入する備品を検討する
- 53 1年間で増えたものの処分と入れ替えを行う
- 54 実践をだれでも使えるように残す
- 55 次年度に挑戦したいことを明確化する
はじめに
「社会科主任の仕事とは?」と問われたらどのように答えたらよいでしょうか。社会科主任という分掌は,おそらくどの学校にも設置されていると思いますが,その役割や求められている仕事に明確な規則はありません。社会科主任になった先生方それぞれの仕事術,時には管理職や教務主任,研究主任等の意向によって,それぞれの学校の社会科主任の仕事があると思います。
中学校の社会科教員は,勤務時間の多くが社会科に関することで占められている……はずです。仮に勤務校の社会科教員が1名で,全学年が1学級編成だったとしても,週当たりの授業時数は10時間(3+3+4)になります。授業の準備や評価も含めると,週40時間の勤務時間の半分以上は社会科に関する仕事で占められている……はずです。と,言葉が詰まってしまうほど,学校現場の業務は多岐にわたっています。しかし,社会科とそれ以外の業務,と考えるのではなく,社会科の仕事を通して勤務環境を整え,社会科の授業で生徒理解を深める,これを実現したいと考えます。
そこで,筆者は社会科主任の仕事を,「勤務校や地域の社会科教育を理論と実践からマネジメントすること,教職員の働きやすい環境を整えること,これらを通して生徒にとってよりよい指導と評価を行うこと」と考えました。本書はこのような考えに基づいて,各章や55の心得を構成しています。
正直に申し上げて,筆者は本書を執筆するまで,社会科主任の仕事を体系的には考えられていませんでした。本書の企画をいただいた際は,「そもそも社会科主任とは何だろうか? 55も心得が書けるのだろうか?」と思ったものでした。最初は,自分がこれまで勤務してきた学校での経験を振り返り,社会科主任として行った仕事を整理することから始めました。しかし次第に,自分を指導してくださった方々の姿や言葉が思い出され,55ではとても足りないと思うほどでした。心構えから実務に至るまで,これまで出会った多くの仕事術を,筆者自身の言葉として,再構成したものが本書です。
本書は,教科主任,学校経営の視点から次の3点を意識して執筆しました。
@社会科主任が行う仕事を時系列,目的別に整理し,その時々にやるべきこと,意識することで業務改善につながる実務を具体的に示す。
A現在社会科主任である先生,これから社会科主任になる先生が,学校現場で直面している課題にどのように向き合い,解決できるかを示す。
B多忙化する教育現場において,勇気をもって削減する心得を示す。
本書は,タイトルこそ『社会科主任の仕事術』となっており,事例も社会科に関することを中心に扱っていますが,教科や主任であるか否かを問わずお読みいただける内容にすることを大切にしました。「新年度に着任したばかりの先生が働きやすい環境にするには」「評価問題に関する質問を受けたら」「教育実習生はどのように指導をしたらよいのか」「年度末の物品整理,引き継ぎはどのように行うと次の担当者が楽に仕事ができるか」など,どのような立場であれ「あるある」と思っていただける場面を集めました。また,社会科主任の立場から,1年間の流れに沿った章立てをしていますが,読んでいただく際には,必要と思われる事例から読んでいただいて構いません。
また,本書には「心得」という厳しさを連想するような言葉が入っておりますが,決して筆者の経験から「こうあるべき」という提言をするものではありません。筆者自身にとっても「こうであったらよい」と思う職場を実現させるための内容になっています。特に強調しているのは「苦労の再生産をさせない,持続可能な職場環境」です。ぜひ,共感的にお読みいただければ幸いです。そして,本書を通して,先生方が気持ちよく働けること,生徒・保護者にとってもよりよい学校になっていくことを心から願っています。
最後になりますが,日頃の生活を支えてくれている妻と3人の娘たち,本書を企画してくださった明治図書出版の矢口郁雄氏に厚く御礼申し上げます。
2025年2月 /内藤 圭太
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- 明治図書