- はじめに
- 第1章 国語授業 指導の心得
- 1 指導スキルよりも大切なのは,教育哲学です
- 2 生徒の実態に応じて指導スキルの優先順位を決める
- 3 多くの実践家が重要視する指導スキルはこれです
- 第2章 国語授業の指導スキル80
- 授業づくり
- 1 授業づくり 基本スキル1
- 2 授業づくり 基本スキル2
- 3 発問スキル
- 4 説明スキル
- 5 指示スキル
- 6 机間指導スキル
- 7 指名スキル
- 8 板書スキル
- 9 個に応じた支援スキル
- 10 振り返り・まとめスキル
- 11 ノート指導スキル
- 12 国語辞典・漢和辞典の使い方指導スキル
- 13 ワークブック活用スキル
- 14 定期考査問題作成スキル
- 15 学習指導案作成スキル
- 16 授業環境づくりスキル
- 言葉・言語文化の指導
- 17 漢字の指導スキル
- 18 文法の指導スキル
- 19 語彙の指導スキル
- 20 敬語の指導スキル
- 21 読書の指導スキル
- 22 古文の指導スキル
- 23 和歌の指導スキル
- 24 漢文の指導スキル
- 25 書写の指導スキル
- 話すこと・聞くことの指導
- 26 話すこと・聞くことの指導 基本スキル
- 27 話合いの指導 基本スキル
- 28 紹介・報告の指導スキル
- 29 説明・提案の指導スキル
- 30 議論・討論の指導スキル
- 31 話すこと・聞くことの評価スキル
- 書くことの指導
- 32 書くことの指導 基本スキル
- 33 題材選定・情報収集・内容検討の指導スキル
- 34 構成検討の指導スキル
- 35 記述の指導スキル
- 36 推敲・共有の指導スキル
- 37 案内文・紹介文・報告文を書く指導スキル
- 38 意見文を書く指導スキル
- 39 批評文を書く指導スキル
- 40 詩・短歌・俳句の創作指導スキル
- 41 読書感想文を書く指導スキル
- 42 書くことの評価スキル
- 読むことの指導
- 43 読むことの指導 基本スキル
- 44 説明的文章 教材研究スキル
- 45 説明的文章 段落・構成の指導スキル
- 46 説明的文章 要点・要旨・要約の指導スキル
- 47 説明的文章 批評の指導スキル
- 48 文学的文章 教材研究スキル
- 49 文学的文章 設定の指導スキル
- 50 文学的文章 構造の指導スキル
- 51 文学的文章 表現の指導スキル
- 52 文学的文章 主題の指導スキル
- 53 詩歌(詩・短歌・俳句) 教材研究スキル
- 54 詩の指導スキル
- 55 短歌の指導スキル
- 56 俳句の指導スキル
- 57 音読・朗読・暗唱の指導スキル
- 58 読むことの評価スキル
- 情報活用
- 59 メディア・リテラシーの指導スキル
- 60 新聞活用スキル
- 61 学校図書館活用スキル
- ICT活用
- 62 デジタル教科書の活用スキル
- 63 1人1台端末を活用した調査の指導スキル
- 64 1人1台端末を活用した意見共有の指導スキル
- 65 生徒資料の保管スキル
- 主体的な学びに導く方略
- 66 問題意識を醸成させる指導スキル
- 67 問題意識を継続させる指導スキル
- 68 学びに向かう力を育てる指導スキル
- 対話的な学びに導く方略
- 69 様々なディスカッションの指導スキル
- 70 アイテムの活用スキル
- 71 ファシリテーションの指導スキル
- 72 スパイダー討論の指導スキル
- 深い学びに導く方略
- 73 経験と関連付ける指導スキル
- 74 概念を獲得させる指導スキル
- 75 学習の転移(学習の習得と活用)を図る指導スキル
- 思考力・判断力・表現力を培う方略
- 76 思考をメタ認知させる指導スキル
- 77 思考スキル活用の指導スキル
- 78 思考ツール活用の指導スキル
- 豊かな言語生活に導く方略
- 79 読書生活につなげるスキル
- 80 実生活につなげるスキル
- おわりに
はじめに
本著を編集するにあたり,編者である佐藤佐敏と門島伸佳は,編集部の意向を受けながら次のコンセプトを執筆者に伝えました。
1)読み手として第一に想定する対象は,教師経験の浅い先生方です。しかし,中堅の先生方やベテランの先生方が読まれても,新たな気付きのあるような内容としましょう。
2)抽象的かつ一般的な指導法にならないよう可能な限り明確な指導場面を設定し,具体的に述べましょう。
書名が『指導スキル大全』ですので,執筆いただく実践家のみなさまには様々な場面で取り扱う指導技術に焦点を合わせて記述していただきました。
しかしながら,項目によっては「指導スキル」というよりも,「指導哲学(教える際の教師の心構え)」や「指導アイデア」を執筆した箇所もあります。その場合でも,可能な限り授業の風景や生徒の姿が映像化できるように執筆していただきました。
すべからく技術というものは,哲学に裏付けされた上で使わないと間違った方向に世の中を導いてしまいます。教育現場の指導スキルであれば,誤った教育効果を生んでしまいます。どんなに熟達した指導スキルを駆使しても目指す方向が間違っていれば,それは誤った方向に効率よく生徒を誘導してしまうことになるわけです。大切なのは,目指す方向であり,その授業の目的を考える哲学です。村上春樹氏(1995:270)が次のように述べています。
「海の真ん中で遭難して方向を失ったときに,力のある熟達した漕ぎ手が揃っていても無意味」です。「効率よく間違った方向に進むのは,どこにも進まないより悪い」と。
そういった意味で我々が特に重要とした哲学は次の一言に集約されます。
制約のある学校の授業時間内で,生徒全員の国語のポテンシャルを最大化することを目標とする。
例えば,どの学級にも学習意欲の高くない生徒や国語を苦手としている生徒がいます。そういった生徒たちをどのように授業に参加させていけばよいでしょう。この書籍を手にしている先生方は中学校で国語を教えていらっしゃる先生方ですので,もともと相対的に国語を得意としていらっしゃることと拝察します。その子ども時代のみなさんが好きだった授業のイメージではなく,本著では居眠りしたり,授業中に私語をしたりする生徒を授業に引き込むことを最優先した指導スキルを挙げました。また,指導スキルにも上達のプロセスがあります。「ひとまず全員の生徒が教師の話をきちんと聞き,やるべき課題に取り組み,それぞれのポテンシャルに応じてそれ相応の結果を出すための指導スキル」を第一に意識しています。
このコンセプトに沿って,前半は「発問」「指示」という基本的な技術に関する要諦をまとめました。その後,平成29年告示の学習指導要領の指導事項に合わせた指導スキルを整理しています。そして最後は,今回の学習指導要領の鍵語である「主体性」「深い学び」「思考力・判断力・表現力等」といったテーマで重要視すべき指導方略(ストラテジー)を提示しました。
見開き2頁という限られた紙幅ですので,それぞれのポイントを絞り込みながら,具体的な指導場面を想定して明解に解説できるよう,執筆者には苦心していただいております。
本著を手にした先生方が,「早速明日の授業で,この指導スキルを使ってみよう」「次の単元ではこの指導スキルを試してみたい」といったポジティブな気持ちとなり,実際に指導スキルを駆使した結果,多くの生徒の資質・能力が向上することを私たちは心より願っています。
2022年4月 編者 /佐藤 佐敏
村上春樹 1995 『ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編』新潮社
内容が端的なので、自分の授業にどう組み込むかも考えやすく、非常に勉強になりました。
コメント一覧へ