川端裕介の中学校社会科授業 協働的な学びにつなげる対話スキル50

川端裕介の中学校社会科授業 協働的な学びにつなげる対話スキル50

対話で「学びのピント」を合わせよう

「協働的な学び」につなげる対話の基礎・基本から、目的別・相手別・学習場面別の対話のポイントと支援の方法、地・歴・公各単元の展開に応じた対話例まで、図解や豊富な対話モデルで解説。「フィールドワーク型の学び」を目指す社会科の新しい実践的授業論第3弾。


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PDF
ISBN:
978-4-18-453934-1
ジャンル:
社会
刊行:
対象:
中学校
仕様:
A5判 168頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年12月4日

Contents

もくじの詳細表示

まえがき
第1章 「協働的な学び」につなげる中学校社会科の対話デザイン
1 対話によって学びのピントを合わせる
2 対話によって見えない世界が照らされる
3 4つの「共」のある対話にする
4 社会問題の解決には対話が鍵となる
5 対話では学びのベクトルを意識する
6 対話のルール・マナー・モラルを共有する
Column ICTは対話を促進するのか?
第2章 「協働的な学び」につなげる中学校社会科の対話スキル50
基礎・基本の対話スキル
1 気付きを促すきっかけをつくる
2 安定した土台と的確なしかけで対話を促進する
3 対話の形ではなく枠組みをつくる
4 問いが対話のエネルギーになる
5 見方・考え方で論点のピント合わせをする
6 見方・考え方で相手の意見をチューニングする
7 意見に対する価値判断は公正さを基準にする
8 引っかかりをメモにする
9 言葉をつなげて概念と出会う
10 「最適なデッキ」を編成するために問い直す
11 対話による変容を振り返る
目的別の対話スキル
12 [キャッチボール型]意見を交わしながらつながりを太くする
13 [バレーボール型]意見を戦わせながらつながりを強くする
14 [玉入れ型]ねらいに向けて試行錯誤しながら考えを積み重ねる
15 [パズル型]条件を基に試行錯誤しながら整合性のある答えを探る
16 [砂場型]協力して答えを自由に想像する
17 [拡張型]狭いつながりを広げていく
18 [収束型]広がっているつながりを束ねていく
19 [道路型]途切れているつながりを補修したり新設したりしていく
20 [多面型]注目する面を変えた状態で対話する
21 [多角型]立場の違いを強調して対話する
相手別の対話スキル
22 [縦の1対1]教師の立ち位置を下げてキャッチボールする
23 [縦の1対多]楽しみながら核心を突くようにする
24 [横の1対1]比較の視点を強く働かせる
25 [横の1対多]「本日の主役」をプロデュースする
26 [横の多対多]聞く耳を育てて学びのピントを合わせる
27 [内側]言葉にして思考を可視化する
28 [外側]普段と違う「学びのピント」の合わせ方をする
29 [過去]残された資料から意図を読み取る
30 [未来]未来予測の精度を上げる
学習展開別の対話スキル
31 [課題発見]子どもたちの世界と社会問題をつなぐ
32 [問いづくり]問いの内容と順序を見直し続ける
33 [見通し]わからなさの解像度を上げる
34 [予想]簡単に妥協せずに予想を吟味する
35 [情報収集・情報処理]情報と価値観の関係に目を向ける
36 [考察]気付きや引っかかりを「だから」と「でも」でつなげる
37 [解決案の提示]「本当にこれで良いか」と問い続ける
38 [発表]場に合わせて「最適なデッキ」を展開する
39 [まとめ]学習のキーワードを対話で共有する
40 [振り返り]自分を客観視して無自覚な価値に目を向ける
41 [発展]ワクワク感と学びをつなげる
困った場面の対話スキル
42 [会話(雑談)になる]教材についての対話を促す
43 [沈黙が生まれる]わからないことから対話を始める
44 [言い合いになる]論破ではなく意見を磨き上げる
45 [ほめ合いになる]肯定する理由に注目する
46 [一方通行になる]双方向の発言を促すしかけをつくる
47 [堂々巡りになる]論証の流れを見直して主張を磨き上げる
48 [生徒が孤立する]接続詞を使いこなして関係性をつくる
49 [生徒が孤独になる]質問者や評価者の役割を託す
50 [脱線する]脱線を生かして学びのピントを合わせる
Column 対話に「正解」はあるのか?
第3章 スキルを活用した単元別対話モデル
地理的分野
事例1 対話によって最適解を模索する
[世界と日本の地域構成][地域構成]
事例2 わからないことを持ち寄って課題解決をする
[世界の様々な地域][世界の諸地域(北アメリカ州)]
事例3 対話を通して心のシャッターを開く
[日本の様々な地域][日本の諸地域(北海道地方)]
歴史的分野
事例1 対話によって立場を意識する
[近世までの日本とアジア][古代までの日本(日本列島における国家形成)]
事例2 対話によって論証の精度を上げる
[近世までの日本とアジア][近世の日本(江戸幕府の成立と対外関係)]
事例3 心に残る学びを対話で実現する
[近現代の日本と世界][現代の日本と世界(冷戦の終結とグローバル化する世界)]
公民的分野
事例1 言葉をつなげて重要な概念にたどり着く
[私たちと政治][人間の尊重と日本国憲法の基本的原則(憲法が保障する基本的人権)]
事例2 議論の拡散と収束を使い分ける
[私たちと経済][市場の働きと経済(働く意義と労働条件の改善)]
事例3 対話で他者を巻き込む
[私たちと国際社会の諸課題][よりよい社会を目指して]
あとがき
参考文献

まえがき

 本書のテーマは,対話です。私が最も伝えたいのは,次のことです。


 対話によって「学びのピント」が合う。対話による他者とのつながりが知識や思考をつなげ,一人ではたどり着けない世界が見えてくる。


 学習での対話に関わって,私は大きく3つの課題があると考えます。1点目は,対話をしても学びが深まらない場合があることです。グループで話し合うように促すと,「できる生徒」の答えを写して終わり,残りは雑談の時間となる…といった経験はないでしょうか? 私は何度もあります。

 2点目は,対話にはエネルギーを使うことです。対話を嫌がる生徒もいます。たしかに,対話は難しくて疲れるので,面倒くさく感じる気持ちはわかります。目的の見えない対話は,生徒にとって苦痛な時間です。

 3点目は,教師が対話をコントロールしたり,評価したりするのが難しいと感じて敬遠することです。たしかに,対話の時間が放任になってしまうと,うまくいきません。「それなら講義型の一斉授業の方がマシ」と思う先生もいるかもしれません。しかし,聞くだけでは生徒の頭には入っていきません。

 それでも,対話は学びに必要です。なぜなら,対話によって新しい世界が開けるからです。一人で考えることには,限界があります。対話によって他者の視点を取り入れることで,思考が拡張し,成熟します。最初は面倒に感じていた生徒が,対話を終えると考える喜びを実感し,充実した表情を浮かべている姿を何度も目にしてきました。また,令和3年1月の中央教育審議会答申以降,学校現場では「個別最適な学び」と「協働的な学び」がトレンドになっていますが,「協働的な学び」を実現する鍵になるのが対話です。

 そのような学びのある対話を実現するためには,学習をデザインする上で対話のゴールを明確に位置付け,対話の方法を確立し,生徒が対話を進めることができる環境づくりが大切です。生徒が対話の意味を見出し,伸び伸びと意見を出し合えるようにしましょう。そのような対話を進めると,ぼんやりとしていた新たな世界が輪郭を帯び,生徒の目に映るようになり,新たな発見につながります。生徒による対話は不完全であり,余白があります。だからこそ対話には面白さがあり,他者とつながる意味があります。

 本書の第1章では,「協働的な学び」を実現するための対話を組み込んだ学習デザインの原則について論じます。社会科に限らず,対話全般に通じる内容だと思います。学習デザインのキーワードは,「学びのピント」の他に,「見えない世界を照らす」「共聴・共感・共鳴・共生」「対話による社会問題の解決」「対話の2つのベクトル」「対話のルール・マナー・モラル」です。

 第2章では,協働的な学びを実現するための対話の技や,生徒に対話を促す環境づくりのポイントについて扱います。基礎・基本の対話スキル,目的別の対話スキル,相手別の対話スキル,学習展開別の対話スキル,困った場面の対話スキルに分けて,理論と対話例を合わせて紹介します。

 第3章では,地理・歴史・公民の3分野での対話例を紹介します。1章で示した原則と,2章で紹介したスキルを実際に活用した内容です。

 なお,本書はフィールドワーク型の学びを提唱した『発問スキル』,「学びのGPS」としての評価の役割を示した『課題設定&評価スキル』に続く,「川端裕介の中学校社会科授業」の第3弾です。過去2冊と同様に,実践例の中に「単元を貫く学習課題」を示しています。今回は地理・歴史・公民のすべての単元について,単元を貫く学習課題を紹介することができました。単元全体の学習デザインの参考になるはずです。

 対話によって見える世界は,一眼レフのカメラで撮影するように驚きと美しさに溢れています。対話を促進するためのスキルを磨き,生徒が学びの主人公として,学びの世界を力強く歩き出せるようにしましょう。


  2022年9月   /川端 裕介

著者紹介

川端 裕介(かわばた ゆうすけ)著書を検索»

現在,北海道函館市立亀田中学校に勤務。

1981年札幌市生まれ。北海道教育大学札幌校大学院教育学研究科修了(教育学修士)。函館市中学校社会科教育研究会研究部長。NIEアドバイザー。マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 社会科の授業に討論をはじめとする協働的な学びは大切な学習活動であるが、討論を深化させていくのは難しい。その中で、本書は討論を深化させ、深い学びにしていくためのヒントを与えてくれたと感じる。この内容を若手にも伝え、提案授業を行う際の参考になったようである。
      2023/2/540代・中学校管理職
    • 対話で深めていくのに悩んでいたので、実践に基づいて書かれていて参考になった。
      2022/12/1630代・中学校教員
    • このシリーズが好きです。
      2022/12/1030代・小学校教員
    • 対話、に興味があったのでよかった
      2022/10/1420代・中学校教員
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