- はじめに
- 道具の準備 js-STARの使い方
- 第1章 スマホでできる!クイック・データ分析を使った学級経営
- (1) 実践事例@ 学年行事の登山を継続して実施するか?
- 5名全員が賛成意見というのは,どれくらいまれなことなのか?
- (2) 実践事例A授業づくり 今日の授業は,友だちと協力して学ぶことができたか?
- p値をコイン投げの原理で考える
- (3) 実践事例B授業づくり 昨年度と比較して学力は向上したのか?
- 統計的仮説検定とは?
- 有意な差があるかを判定する基準は?
- COLUMN1 仮説検証型と探索発見型の研究
- (4) 実践事例C授業づくり 補習の効果はあったのか?(再テスト法)
- 片側検定と両側検定
- 伸びを分析する
- COLUMN2 両側検定と片側検定
- (5) 実践事例D学年行事 学年行事はどちらにすべき?
- 統計的仮説検定の流れ
- (6) 実践事例E授業づくり 質問教室は役に立つか?(1)
- 母比率不等の分析
- 選択肢の併合
- (7) 実践事例F授業づくり 質問教室は役に立つか?(2)
- (8) 実践事例G児童生徒理解 わたしたちの相談を,ちゃんと聞いてくれる先生がいるか?
- (9) 実践事例H児童生徒理解 県平均と比べて肥満傾向の生徒が多いのか?
- 全国平均と自分のクラスを比較する
- (10) 実践事例I保護者対応 保護者からの信頼は得られているか?(保護者アンケート編)
- p値は差の大きさを表さない
- COLUMN3 ベイズファクタ(Bayes Factor)
- (11) 実践事例J保護者対応 学校の様子は保護者に伝わっているか?
- (12) 実践事例K集団づくり 否定的な回答,本当に増えたと言える?(児童アンケート編)
- (13) 実践事例L授業づくり 2つのクラスのテスト結果に違いはあるか
- 平均の差の検定
- (14) 実践事例M児童生徒理解 自然教室のレクリエーションは?
- カイ二乗値の求め方
- (15) 実践事例N家庭生活 スマートフォン利用時間は男女で差がある?
- (16) 実践事例O授業づくり 授業の進め方,子どもたちに合っている?
- 多重比較について
- (17) 実践事例P授業づくり 忘れ物は月曜日に多いのか?
- (18) 実践事例Q授業づくり 校内研究で何に力を入れる?
- (19) 実践事例R集団づくり 振り返り記述の結果は「見た目」よりも「中身」が大事!
- (20) 実践事例S集団づくり 学級アンケートを分析する
- COLUMN4 教育活動の質保証
- 第2章 学級経営に統計学の思考を
- 1 1人でも不満を持つ子がいたらあなたの学級経営は失敗だったのか?
- 2 学級経営に長期計画よりも戦略計画を
- (1) クラスの理想像が実現しにくい理由
- @ 教師の理想と現実の乖離
- A スキルの不足
- (2) 長期計画と戦略の違い
- @ 目的と焦点
- A 柔軟性と調整
- B 実施と評価
- 3 情は誤るが,数字は誤らない,しかし,数字だけでは人は付いてこない
- おわりに
- 謝辞
はじめに
社会の高度化に伴って,学校教育に求められる役割はどんどん増え続けています。
平成19年に学校評価の実施と公表が義務化されたことにより,教育現場にそれまで以上に客観的な評価が求められるようになりました。それにより,アンケート調査などが増えたことで, 教育現場はたくさんのデータ処理に翻弄されることになりました。それと同時に増えたのは,曖昧な客観的評価です。
達成目標に数%足りないことが職員会議で問題となり,新しい取組や改善策を求められるようになりました。
達成目標を80%と設定したアンケートで,肯定的な回答をした児童が20人中15人であれば達成率は75%です。目標よりも5%低いことになります。
しかし,20人中16人つまり1人多ければ,目標が達成されることになります。たった1人の違いで改善策を考え,今までの取組を変更することが本当に必要なのでしょうか。こういったことが,学校現場を忙しく感じさせている一因なのではないかと思います。
「どうして,あの先生の学級は子どもたちが生き生きとしているのだろう」と経験豊かな先輩教師を見習いたいと思う若手教師のみなさんも多いことでしょう。しかし,そんな経験豊かな教師のクラスであっても,学級経営が思うようにいかないことも増えてきています。世の中の価値観が多様化,複雑化し,今までの経験や勘が通用しない事態がまさに現場で起きています。
教師は,子どもたちの学力や人間関係力の向上に向けて,日々様々な工夫をしながら実践を積み上げています。そして,日々変化する子どもの状況を的確に把握し,素早く判断してアクションを起こす必要があります。
ここで言う,アクションを起こすということは,何か新しいことをすることだけを指していません。現状把握がきちんとできれば,今までの取組を自信をもって継続するという判断もまた,正しいアクションと考えます。
本書は,データサイエンス(統計分析)という観点から,学級経営を捉え直し,よりよい実践を支援するものです。
学級経営が扱う内容は,授業づくり,集団づくり,組織づくり,児童生徒理解,地域・保護者との連携など多岐にわたります。教育現場における様々な事例をもとに,状況を把握する事例と取組の成果を評価する事例について,具体的な考え方や分析方法について説明します。
データサイエンスというと難しい,わからないと考える方も多いと思いますが,数式はほとんど出てきませんし,データ分析はアプリがすべて行ってくれます。教師はデータを集め,数値をアプリに入力して計算ボタンを押し,出力した結果から次のアクションを考えればよいのです。
面倒なデータ処理は全てアプリがやってくれると言っても,学級担任として子どもたちのどのような状況をどのようにデータ化するのか,そして,出力された結果をどう解釈するかが,実は一番重要なのです。
今回,学級づくりや授業づくりに熱心に取り組んでいる先生方から協力していただき,様々な「学校現場あるある」場面を事例として取り上げることができました。
これらの事例を参考にしながら,みなさんも学級経営×データ分析にチャレンジしてみましょう。
2025年 研究室より霊峰米山を望みて 春 /中野 博幸
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- 明治図書
- js-starによる分析は経験があるが、説明をうまくできないところがあるのを、本書を読むことで簡潔な説明と、まさにスマホでできるアプリで試行できる点が簡潔でいい。職場に一冊置きながら、アンケートや校内の事例に対して使いながら身につけられそう。2025/3/940代・小学校教員