- はじめに
- 第1章 志水流授業理論と和束小学校の成功から学ぶもの /志水 廣
- 1 志水流授業理論の根底
- 2 学ぶ楽しさを実感する授業
- 今一番のお勧めは/○つけ法について/復唱法について
- 3 和束小学校から学ぶもの
- 和束小学校とのきっかけ/あれから4年/先取り学習のすすめ/
- 数学的な考え方について/顧問校と私との連携/教職員の一体化
- 第2章 学力アップ大作戦!
- 1 学力テスト結果の変容分析
- 2 学力向上に向けて
- 「5点あげてください。」から始まった/「5点アップ」の秘策/授業診断その1/
- 授業が変わる/授業診断その2/授業以外で/おわりに
- 第3章 1人1人の学力アップ!
- 1 これがポイント
- 2 ○つけで1人1人を伸ばそう
- 1年 のこりはいくつ ちがいはいくつ
- ―全員○で,子ども生き生き!―
- 学習問題/授業場面とねらい/授業の流れ
- 3年 たし算とひき算の筆算
- ―全員○をめざして!―
- 6年 平均とその利用
- ―スモールステップの○つけ―
- 3 先取り学習で楽しい授業にしよう
- 5年 分数
- 学習問題/授業前/先取り学習/授業中/まとめ
- 6年 分数のたし算とひき算
- 4 事前テストを活用しよう
- 5 見やすいノートをつくろう
- 6 振り返る力を伸ばそう
- 第4章 学級全体の学力アップ!
- 1 これがポイント
- 2 解決のヒントに気付かせよう
- 5年 割合 ・104
- ―解決のヒントがいっぱい―
- 学習問題/授業場面とねらい/授業の流れ/おわりに
- 3 ○つけで1人1人を生かそう
- 2年 九九のひょう
- ―学習意欲と思考力を高める―
- 学習問題/授業場面とねらい/授業の流れ/おわりに
- 4年 わり算
- ―実態に合わせて進めよう―
- 5年 三角形・四角形の角
- ―いろいろな考え方を授業に生かそう―
- 4 子どもの言葉を授業に生かそう
- 1年 ひきざん(2)
- ―キーワードを合い言葉にして復唱しよう―
- 学習問題/授業場面とねらい/授業の流れ/キーワードを合言葉にして
- 4年 調べ方と整理の仕方
- ―キーポイントになる言葉や動作を復唱しよう―
- 5 学び合う子どもたちを育てよう
- 6年 6年のまとめ
- ―学び合う学習活動を目指して―
- 学習問題/授業場面とねらい/授業の流れ/算数環境コーナー
- 第5章 教師の授業力アップ!
- 1 これがポイント
- 教師にも能力差があることを知ろう/プロの教師になろう/
- 自分の授業を見つめ直そう
- 2 自分の授業力を見つめよう,高めよう
- 授業力を高めるための研修/授業診断を受けよう/ミニ指導案をつくろう
- 3 シミュレーション授業をしよう
- 役割分担/流れ/シミュレーション授業によって得られるもの
- おわりに
- 引用・参考文献
- 研究同人
はじめに
今日の変化の激しい社会を1人1人が主体的・創造的に生き抜いていくためには,子どもたちに,自ら学び,自ら考え,主体的に判断する力,個性を生かし自分らしく生きていく力を育成することが求められています。そのためには,その前提となるべき,基礎・基本の部分がきちんと身に付いていなければ,主体的・創造的な生き方も個性や能力を開花することも難しいものとなります。
4月当初,うれしそうに「〇〇高校へ入った。」とか,「△△の勉強をする。」と話していた卒業生が,5月半ばを過ぎた頃には,高校を中退したり,勉強を中座したりする姿を見るにつけ,4月のあの思いはどうしたのだろうかと,寂しさややりきれなさを感じていました。彼らにきちんとした学力を身に付けさせ,自分の意志で,自分に適した進路をしっかり考えて選ばせることができれば,高校中退も原級留置も減らせるのではないか,もっと自分に自信を持ち,目標に向かって生き生きとした生活を送れるのではないかと考えていました。
和束町には一小学校,一中学校しかありません。小学校できちんとした学力の基礎・基本を身に付けさせておくことは,取りも直さず,中学校での進路保障に大きく影響してくるはずです。
本校の学力実態は,5年前は大変厳しいものでした。京都府の基礎学力診断テストでは,国語科も算数科も府の平均点を大きく下回っていました。
ある会合の席で,「人員配置も十分にしているのに成果が上がっていないのではないか,結果がよくないのは,何故?」との疑問とも追及ともとれる声がありました。何とかしなければとの思いもあったので,「来年を見てください。」と言い切り,次の年の4月に全教職員に「今年度は学力診断テストを平均点で5点アップでいきます。」と宣言しました。先生方に「子どもたちに基礎・基本をきちんと身に付けさせてください。」と言うよりも具体的に点数を言った方が理解しやすいと思ったからです。5点という点数は子どもたち1人1人が今までよりも1問か2問多く正解すればいい点数だと先生方には説明しました。
アドバイザーを愛知教育大学の志水廣教授にお願いしました。大変お忙しい中,何とか,半ば強引にアドバイザーを引き受けていただきました。先生のパワー溢れるご指導を得ながら今日に至っています。
本校の子どもたちの学力は確実に向上してきました。算数科を中心にした取り組みですが,国語科の力も伸びてきています。
最近は本校の取り組みに関心を寄せてくださる学校からの問い合わせが多くなってきました。校内研修への講師要請もあり,本校の取り組み実践を報告をさせていただく機会が増えてきました。子どもたちの基礎・基本の定着や学力アップに効果があったことは,自分たちだけのものにせずできるだけ発信していこうと考え,研究発表会も毎年実施してきましたので,実践を知っていただくことは大変うれしいことと思っていました。そのような折り,志水先生から,これまでの取り組みをまとめたらどうかとのお声をかけていただき,今回,『算数科:学力アップ大作戦!』としてまとめることができました。本校の取り組みが他校の先生方のお役に少しでも役に立つことができれば幸いと思っています。出版のきっかけを作ってくださった志水先生,出版の許可と編集の助言をいただいた明治図書の石塚嘉典次長に,心より感謝申し上げます。
平成18年1月
京都府和束町立和束小学校長 /川下 眞由美
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- 明治図書