- はじめに
- /宮田 純也
- Introduction
- SCHOOL SHIFT概論─日本の学校教育の成り立ちと未来
- /宮田 純也
- Chapter1 「教育活動」のSHIFT─学校DX
- 理論編
- 学校DXに向けて
- /赤堀 侃司
- 実践編
- ネクスト・GIGAは学校DX─学校DXの実践を進めるポイント
- /平井 聡一郎
- Chapter2 「学び方・教え方」のSHIFT─探究学習とPBL
- 理論編
- 学校教育のシフトを牽引するPBL
- /田中 茂範
- 実践編
- 探究する学びのレシピ─二つのPBL実践例を添えて
- /齋藤 亮次
- Chapter3 「学び方・教え方」のSHIFT─これからのキャリア教育
- 理論編
- AIロボット社会×人生100年時代のキャリア教育─『10年後、君に仕事はあるのか?』
- /藤原 和博
- 実践編
- 人生100年時代のキャリア教育の実践
- /内田 雅和
- Chapter4 「学校組織」のSHIFT─変わる組織、学ぶ組織
- 理論編
- 『変わりたくない』組織の変え方─私たちが動き始めた時、学校は変わり始める
- /住田 昌治
- 実践編
- 対話を通して「学習する組織」になる学校
- /赤司 展子
- Chapter5 「教師」のSHIFT─新たなキャリアデザイン
- 理論編
- 教師のキャリア観をSHIFTする
- /宮田 純也
- 実践編
- 教師の新たなキャリア観の創造に向けて
- /石川 一郎
- おわりに
- /宮田 純也
- 執筆者一覧
はじめに
本書は、タイトルの通り学校教育のシフトに貢献する目的で制作されました。私たちは、農業社会、そして産業革命に次ぐ第3の革命期(情報革命)に生きていると言われています。例えば、スマートフォンなしでの生活は成り立つでしょうか? 生きてはいけると思いますが、様々な不便を我慢して生活を送ることになります。そして、SNSの台頭は私たち個人をメディア化し、従来のマスメディアよりも社会に影響を与える個人(YouTuberなどのインフルエンサー)の登場やSNSが中心となってアラブの春のような社会革命まで引き起こすことになりました。これは、テクノロジーの進歩が大きな役割を果たしていると言えるでしょう。テクノロジーの進歩は情報機器のみならず、医療やインフラなど多くの領域で変化をもたらしています。「人生100年時代」という言葉にもあるように、テクノロジーによって私たちの寿命が延び、人生設計の在り方、つまり個人が生まれてから死ぬまでの生き方にまで影響を与えています。このような事態は、たった数十年間の出来事です。
ハンナ・アレントは、「すべての自然環境と際立って異なる物の『人工的世界』を作り出す」ことを「仕事」と呼びました。私たちは社会における主体として、高度な情報を創り出し、受発信を行い、日々の活動によって「人工的世界」を創り出していると言えます。そしてそれは、サイバー空間上に地理的な障壁を取り払って日々拡張しています。このような社会の根本的なシフトは、私たちの社会・生活そのものを大きく変えているとはよく言われることでしょう。
この文脈において、学校教育の問題は多くの方々に指摘されています。今日私たちが経験している学校教育は、日本においては明治時代の近代において創り出された産物であり、決して新しいものではありません。それは、明治維新後生まれた「近代学校教育制度」から続いてきたものであり、もともと工業社会に貢献する産業人の育成(「読み書き算数」という学力の養成)と国民国家における「国民」の育成を目的とした「公教育」として量的に整備されたものと言われています。この点で、人類第2の革命期(産業革命)に対応して創り出された社会の産物と言えるのではないでしょうか。近代学校教育における問題は、産業革命に対応した学校教育が、情報革命によって生み出されている新しい社会に対応できていないことによってもたらされている側面があるように思います。学校教育とそれを取り巻く過去・現在・未来については、Introductionで詳しく触れます。
私自身は、2017年より未来の先生フォーラム(未来の先生展)という、学校教育を取り巻く様々な実践や知見、人々が集まり学び合う取り組みを行っています。そこに集まる多くの実践や知見は、近代学校教育を乗り越えて、新しい学校教育を描こうとするシフトの動きのように感じ、同時に新たな学校教育の胎動が聞こえるような気がしています。2017年以来取り組んできている中で、このシフトの動きが年を経るごとに大きくなっているように感じています。さらに、新型コロナウイルスの社会的インパクトは新しい社会秩序を生み出す大きな転機になったように感じています。日本のみならず、世界中の人々が当事者として行動・思考の変容を求められることになったためです。今までは、変わりたい人が変わっていました。しかし、この社会状況では望まないにもかかわらず、変わらざるを得なかった人も多いのではないでしょうか。もはや情報社会の進展、テクノロジーの進展を止めることはできません。社会も新たな時代に向かって日々進んでいくことでしょう。そのような中で、学校とはどのような場所で何をする場所なのかという根本的な議論も聞こえてきています。まさに、スクール・シフトに向けて動き出しているという胎動を感じるところです。今回、スクール・シフトという題で本書を執筆しようということになったのは、このシフトの動きに対して、普段の私自身の取り組みに加えて、何らかの形で貢献したいと考えるようになったからです。本書は、スクール・シフトを成し遂げるために役立つ概念や考え方・観点を五つの要素から抽出しています。
読者のみなさまにとって何か少しでも学び・参考になる部分があり、学校現場に少しでも貢献することができればこの上ない喜びです。そして各章をご担当いただきました先生方にこの場を借りて改めて御礼申し上げます。
2023年6月 /宮田 純也
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- 明治図書
- 理論と実践で分けて書かれており理解が進みやすかったです。2024/2/1140代・公務員
- わくわくする内容だった。早くこの本の中の内容が教育者の当たり前になって欲しいと強く願う。2023/10/1なっちゃん
- 気になるテーマについて概要がわかりやすくまとまっていました。2023/10/130代・小学校管理職
- オンライン参加良かったです2023/8/1940代・中学校教員
- これからの教育動向を考えることができました。2023/8/1150代・教委