- はじめに
- 第1章 国語授業の「AさせたいならBと言え」
- 1 「AさせたいならB」で発問・指示をつくる
- 2 ゆれのないモノに注目
- 3 読解内容の5パターン
- 1 状況の読解〜時・場所・人物・物・亊・話者(語り手)
- 2 人物の読解〜行動・知覚物・心情・思考・人柄・人物像
- 3 場面の読解〜見出し・構造
- 4 全体の読解〜構造・要約・主題
- 5 メタ的理解〜意見・批評による作品理解
- 4 発問方法の5パターン
- 1 確認型発問
- 2 不思議型発問
- 3 ゆさぶり型発問
- 4 対比型発問
- 5 選択型発問
- 5 思考を引き出す指示の5パターン
- 1 作業指示
- 2 活動指示
- 3 条件指示
- 4 数指示
- 5 時間指示
- 6 図式 発問・指示のつくり方
- 第2章 定番物語教材の発問・指示のつくり方
- はなの みち
- 語り手という言葉を教える
- A 物語の基本の形を知らせたい
- B 「くまさんが…」と話しているのはだれですか
- 不思議ですねで思考させる
- A 物語の大事なことは文に書いてあると分からせたい
- B なぜ、遠くのりすさんのところに行ったの?
- 挿絵を比較して考えさせる
- A くまさんのおかげで花の道ができたと分からせたい
- B 二つの絵で違うところを見つけましょう
- ふきのとう
- 図を用いて言葉を検討させる
- A ふきのとうがなぜ困っているか考えさせたい
- B ふきのとうは、A、B、Cのどこにいるでしょう
- 対比と小見出しつけで人物の状況を理解させる
- A 雪と竹やぶがどのような関係になっているか分からせたい
- B 雪と竹やぶの違いを見つけ小見出しをつけましょう
- だれのおかげでどうなったかまとめる
- A 物語のクライマックスの面白さを味わわせたい
- B ふきのとうはだれのおかげでどうなったか書きましょう
- スイミー
- 数指示で理由を考えさせる
- A まぐろからにげたスイミーの行動と心情を考えさせたい
- B スイミーがにげることができた理由を三つ見つけましょう
- 間違いの提示で正しく読解させる
- A 面白いものを見て元気を取り戻すスイミーの心情を考えさせたい
- B スイミーはこんなにたくさんのものを見たのですね
- 思い浮かべたモノを考える
- A スイミーは何をうんと考えたのかを想像させたい
- B スイミーは何の姿を思い浮かべたのでしょう
- 行動理由をペアで相談筆記させる
- A 赤い魚たちがスイミーの言うことを聞いて行動したわけを考えたい
- B 赤い魚たちがスイミーの言うことを聞いた理由を三点書き出しましょう
- 主人公の変化をbefore〜afterでまとめる
- A スイミーはどのように変化したのか理解させたい
- B スイミーの変化をbefore〜きっかけ〜afterでまとめましょう
- お手紙
- 人柄が分かる行動を探させる
- A かえるくんのやさしい人柄を考えさせたい
- B 1・2の場面から、かえるくんのやさしさが分かる行動を四つ見つけましょう
- かえるくんとかたつむりくんの関係を理解させる
- A かえるくんが、かたつむりくんに手紙をたのんだ理由を考えさせたい
- B かたつむりくんに手紙をたのんだ理由を三つ考えましょう
- かえるくんの不思議な行動に着目させる
- A かえるくんのとんでもないやさしさを考えさせたい
- B かえるくんの不思議な行動を三つ考えてください
- 「なぜ質問」でなく「こと指示」で心情に迫る
- A がまくんとかえるくんの心情を考えさせたい
- B 二人は何がしあわせでしょうか。三つ考え「…こと」とまとめてください
- 手紙のやりとりで読解を深化させる
- A 登場人物の心情を想像させたい
- B 登場人物同士で手紙を書きましょう
- モチモチの木
- 主人公の思考したところを考えさせる
- A 豆太の心情の変化を考えさせたい
- B 自分は勇気があると豆太が思ったのはどこでしょう
- 行動からやさしさの実態を考えさせる
- A じさまの人柄を考えさせたい
- B じさまのやさしさが分かる「やらなきゃならねえ行動」を五つ見つけましょう
- 主題を選択させる
- A 主題を考えさせたい
- B この作品の主題を、次の三つから選びましょう
- 白いぼうし
- 行動から心情を考えさせる
- A 松井さんの思いを想像させたい
- B なぜ松井さんは運転席に一番大きな夏みかんを持ってきたのでしょう
- ネーミングで人物理解を深めさせる
- A 松井さんの人柄を考えさせたい
- B 松井さんを○○運転手とネーミングしましょう
- 登場人物の不思議な言動に着目させる
- A ファンタジー作品の面白さを味わわせたい
- B 女の子が、ちょうじゃないかというところを五つ探しましょう
- 条件を限定して筆記させる
- A 物語を創作させたい
- B 女の子のちょうは、松井さんに何を話すのでしょう
- 一つの花
- 図式化で理解させる
- A 戦争中のゆみ子とお母さんの姿を明らかにしたい
- B ゆみ子とお母さんのやりとりを図にしましょう
- 不思議な言動から心情を読解させる
- A お父さんの心情を考えさせたい
- B お父さんはなぜおにぎりがなくなったことに気づかないのでしょう
- 語り手の視点を考えさせる
- A 一つの花を見つめているお父さんの心情を考えさせたい
- B お父さんは、いつどこで一つの花を見ていたのでしょう
- 観点を決めた対比で読解を深化させる
- A 戦争中と戦争後の状況の違いを考えさせたい
- B 戦争中と戦争後の違いをできるだけたくさん探しましょう
- 詩の創作で作品を深く味わわせる
- A 「一つの花」では何を伝えたいか考えよう
- B 「一つの花」の詩を書くことで、ストーリーを振り返りましょう
- Column 「一つの花」と「すずかけ通り三丁目」と
- ごんぎつね
- ごんが知覚したものの順序を確認させる
- A ごんの行動と心情を形象化させたい
- B ごんが見たものを順序よく並び替えましょう
- ごんの行動と知覚物を図で確認させる
- A ごんの心情を明らかにしたい
- B ごんが見たもの・聞いたものを確認しましょう
- ネーミングでごんの人物像を考えさせる
- A ごんの人物像を明らかにしたい
- B ごんはどんなきつねか「◯◯きつね」とネーミングしましょう
- 図にすることでごんの言動を確認させる
- A ごんの言動を形象化させたい
- B ごんの行動を図に書いていきましょう
- 語り手の視点の違いから考えさせる
- A ごんと兵十の心情を理解させたい
- B かけよる兵十とうなずいたごんの思いを選択しましょう
- Column 二つのごんぎつねについて
- 大造じいさんとガン
- 二つの作戦を多様な観点で対比させる
- A 残雪の行動の仕方とじいさんの心情を明らかにしたい
- B ウナギつりばり作戦とタニシばらまき作戦を比べてみましょう
- 残雪に対する考え方を段落単位で検討させる
- A 残雪に対する大造じいさんの考え方はどう変わったのか知りたい
- B 残雪に対するじいさんの考え方が一番変化したのは、どこでしょう
- 語り手の視点の違いを考える
- A 語り手を意識して読ませたい
- B 語り手が残雪の側にある文を見つけましょう
- 情景描写に着目させる
- A 大造じいさんの心情を読み取りたい
- B 情景描写を探し、じいさんの心情との対応を考えましょう
- やまなし
- 観点を特定し対比させ形象化させる
- A やまなしの世界を形象化させ、読解を深化させたい
- B 五月と十二月を対比し、五月は…だけど十二月は…と書きましょう
- 共通項の検討から主題が見えてくる
- A 五月と十二月の両方に出てくるモノやコトを明らかにしたい
- B 五月と十二月の類比点を見つけましょう
- 主題を選択し検討させる
- A やまなしの主題は何か考えたい
- B やまなしの主題と思うものを一つ選択しましょう
- Column 「やまなし」と「いちょうの実」と
- 海の命
- おとうについて分かることを箇条書きにする
- A 太一のおとうの人物像をとらえたい
- B 太一のおとうについて分かることを箇条書きにしましょう
- 与吉じいさについてよく分からないことをまとめさせる
- A 与吉じいさの人物像をとらえたい
- B 与吉じいさについてよく分からないと思うことを考えましょう
- クエをうたなかったのはだれの影響か考える
- A クライマックスでの太一の心の変化を考えさせたい
- B 太一がクエをうたなかったのは、だれの影響でしょう
- あとがきの不思議なことを検討させる
- A 海の命で、あとがきに書かれた情報を読み取りたい
- B 最後の「あとがき」の不思議なところを検討しましょう
- サブタイトルから主題を考えさせる
- A 主題は何かを考えさせたい
- B 物語の「さいごに」の中の言葉を使ってつくったサブタイトル三つを検討しましょう
- おわりに
はじめに
イラスト版『AさせたいならBと言え』(『イラスト図解 AさせたいならBと言え―子どもが動く指示の言葉』明治図書)は、おかげさまで多くの方々に手に取っていただいている。
前半の「解説編」が読みごたえがあるというお声もいただいた。「AさせたいならB」は、子どもを思うように動かすためのものではなく、子どもに知が発動する言葉かけであることが、イラストつきの説明でよく分かったというお声も聞こえてきた。
令和のこの時代を視野に入れ、子ども達の心が動くBの言葉を、学級づくりと授業づくりに分け、現場から生まれた事例を紹介した。教室で、活用していただければうれしい。
一つ心残りがあった。
「AさせたいならBと言え」は、授業の発問・指示づくりに活用できると言いながら、教材名を示した発問・指示をほとんど紹介できなかったことである。教師になって五〇年が過ぎた。この二〇年あまりは、専科として、国語授業を担当してきた。「AさせたいならBと言え」をマインドセットしながら、国語授業のための発問・指示づくりに奔走してきた。
手元には、子どもの知と探究心が生まれ、読解が深化する発問・指示が蓄積してはいる。多くの学校でも、とっておきの発問・指示を紹介してきた。ところが、時々、
「岩下先生、自分でオリジナルの発問・指示をつくりたいのですが、どうしたら……」
という声も耳にする。ということは、このような先生の要求に、私は、十分に答えていないということなのだろう。
今回は、一つの発問・指示が、私の中で、どのような経緯をたどって誕生していくかを記していきたい。一言で言えば「発問・指示のつくり方」である。
「『AさせたいならB』による言葉づくりは、詩をつくる作業と似ている」という言葉もいただいた。確かに、この作業は、言葉でつくり出した映像が、他者の頭の中で再生されることを願う試みである。
言葉を精選し、発問・指示で組み立てた一群の指導の言葉が、一篇の詩であるかのように、まとめることができたらうれしい。
そのままの形で活用していただいてもいい。私の示す「つくり方」を参考に、教室の状況に応じて、オリジナルの「発問・指示」を、つくり出していただければ幸いである。
「個別最適な学び」「協働的な学び」が提唱されている。その一方で、「探究的な授業」や「教えない授業」も、話題にされている。
どんな形の国語授業も、自然には発生しない。教師による、何らかの「しかけ」は不可欠である。表面には見えなくても、直接、間接、あるいは暗黙の発問・指示は発動されている。発問・指示のない授業はないのである。
本書の執筆は、この当たり前のことを、具体的事例で確認していく作業にもなるだろう。
/岩下 修
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- 明治図書