- まえがき
- 第1章 子どもの育ちにとって大切なこと
- 1 障害児の育ちをサポートする8つの柱
- 1 身体を意識する力を育てる
- 2 目と身体を使う力を育てる
- 3 耳と身体を使う力を育てる
- 4 記憶する力を育てる
- 5 模倣する力を育てる
- 6 イメージする力を育てる
- 7 概念形成の力を育てる
- ・文字の学習を行う前に育てておきたい力
- ・数の学習を行う前に育てておきたい力
- 8 協調性・社会性の力を育てる
- 2 子どもが活動に向かうために必要な9つの配慮事項
- 1 しゃべり過ぎない
- 2 子どもの行動を予測する
- 3 楽しい雰囲気を演出する
- 4 子どもの力を信じる
- 5 表現者になる
- 6 リズム感を大切にする
- 7 息抜き場面を設ける
- 8 寄り沿いつつ,ときに対決する
- 9 記録をとる習慣を身につける
- 【参考・引用文献】
- 第2章 子どもの育ちをサポートする遊び63
- 1 身体を意識する力を育てる
- 1 ふわふわ!ぬるぬる?素材に触れよう!
- 2 楽器に触れよう!音を感じよう!
- 3 手は不思議!手で遊ぼう!
- 4 吹いて音を楽しもう!
- 5 背中のキャンバス,描いてあてよう!
- 2 目と身体を使う力を育てる
- 6 つまんで入るか?ビー玉・ようじ
- 7 はさんで楽しい!パンダ洗濯バサミ
- 8 はじいて跳ばす!はじいて演奏!
- 9 すべらせば不思議な音色!いろいろな楽器
- 10 チョキチョキ!短冊切り
- 11 重ねよう!並べよう!形作ろう「積み木」遊び
- 12 重ねよう!並べよう!形作ろう「ブロック」遊び
- 13 楽しい工具「ナットとボルト」
- 14 まねっこお絵描き
- 15 のぼっておりて,楽しい音積み木階段演奏
- 16 パズルマットをお散歩しよう
- 17 なぞってつないで,何が描けるかな?
- 3 耳と身体を使う力を育てる
- 18 ビートにのって♪ハンドドラム叩き
- 19 トライアングル遊び〜消え入る音を大切に〜
- 20 『しあわせなら手をたたこう』で動きを作ろう
- 21 好きな歌がどんどん増える!曲のリクエスト
- 22 交代で歌うと楽しさ倍増!歌のこだま遊び
- 23 楽器でコミュニケーション!楽器のこだま遊び
- 24 次は何の音かな?音のしりとり遊び
- 4 記憶する力を育てる
- 25 きいて!きいて!何の楽器かな?
- 26 きいて!きいて!何の曲かな?
- 27 コップのおもちゃを探そう
- 28 ボックスのおもちゃを探そう
- 29 動物絵あわせカードゲーム
- 30 うさぎはピョン!ことばの置き換え遊び
- 5 模倣する力を育てる
- 31 机叩き ト・トン・トトン♪
- 32 旗上げ遊び「赤あげて〜」
- 33 体全体を使ったまねっこ遊び
- 34 体が楽器!楽しいボディパーカッション
- 6 イメージする力を育てる
- 35 袋の中身は…?ドキドキ,触ってあてようゲーム
- 36 絵をちょこっと見てあてよう!何かな?
- 37 グニャグニャ棒で何作ろう?
- 38 絵描き歌「まーるさんかくしかーくー」
- 39 動作をあてよう!ジェスチャーゲーム
- 7 概念形成の力を育てる
- 40 ことばのリズム「た・ぬ・き」(ポン ポン ポン)
- 41 トントントン…何回叩いたかな?
- 42 いろいろ・いろ・かたち・かるた
- 43 みんなでしりとり遊び
- 44 バラバラもじでことばを作っちゃおう!
- 45 集まれ!仲間たち
- 46 お話のとおりに模型を操作しよう
- 47 お話の順に絵を並べよう
- 48 形容詞を豊かに!「長いしっぽ,短いしっぽ」
- 49 パン屋さんにあるものはなあに?
- 50 説明しよう!「りんごは赤い,丸い,果物」
- 51 「大きい!小さい!」反対ことば遊び
- 52 主人公になりきり!劇遊び
- 8 協調性・社会性の力を育てる
- 53 あんたがたどこ「さ」遊び
- 54 さあ勝つぞ〜!じゃんけん遊び
- 55 折り紙相撲ではっけよい!
- 56 ひらひらクラゲを追いかけよう!
- 57 棒でバランスゲーム
- 58 おとなりへ!おとなりへ!ボール回し遊び
- 59 跳んで!走って!フープで競争
- 60 2人,3人,4人,集まろう!
- 61 みんなで演奏!ミュージックベルでリンリンリン
- 62 みんなで楽しく合奏しよう!
- 63 手押し相撲ではっけよい!
- 資料 活動内容一覧
まえがき
障害児の療育や教育の関係者と話をすると,多くの先生方が悩みを抱えていることがわかります。
・子どものどの部分に注目すればよいのか
・なぜ自分がかかわろうとすると子どもは離れていくのか
・なぜ自分がしゃべりかけると子どもは落ち着きがなくなるのか
・どうすれば子どもを惹きつけられるのか
・発達レベルに差がある子に対し,どのように対応すればよいのか
・なぜ自分がリーダーのとき他の指導者がうまく動いてくれないのか
・なぜ大人ばかりが盛り上がり子どもは活動に向かわないのか
・明日の活動(具体的な授業内容)をどうすればよいのか
・一生懸命説明してもどうして保護者は理解してくれないのか
これらのことから,現場の先生方が子どもたちをどう理解し,関係を作り,課題を提供すればよいのか,保護者とどのように関係を作っていけばよいのか,日々悩んでいることが伺われます。
悩むことは大切です。さして悩みもせずに自信たっぷりに子どもとかかわっていることの方が,子どもの専門家として余程不適切でしょう。しかし子どもを目の前にして,悩んでばかりはいられません。
私が臨床を始めて以来,先生方や保護者の方からよく耳にする悩みとして「指導者の持ちネタが少ない」というものが挙げられます。活動が限られていると,結局は数少ない活動を繰り返し子どもに提供することになってしまいます。繰り返し学習は一見有効なようであっても,単純に行うだけでは子どもにパターンを覚えさせることになってしまいます。そのことが,子どもの育ちにとって有効でないということは多くの専門家が指摘するところです。
つまり,いくら子どもを一生懸命理解しても,1人ひとりに合った課題を臨機応変に提供できないのであれば,子どもとの関係性や保護者との関係性に影響することは必至なのです。本当の意味で,子どもの育ちをサポートするためには,指導者が行うべき課題は質・量ともに豊かでなければならないのです。指導者は日々そのための引き出し作りに全力を尽くしていく必要があるでしょう。
本著はこのような考えをもとに作られています。中でも,子どもの発達レベルに合ったプログラムを,幅広く経験させることを大切にしています。幅広くというのは,今まで行っていたものとほんの少し違う課題(=よく似た課題)をまんべんなく行う,ということを意味します。そのことが,子どもの発達にとっては不可欠であると考えるからです。そしてそれを,年間を通してまんべんなく提供できることが指導者の大きな役割と言えるでしょう。
本著の第2章で挙げている63のプログラムは,発達支援教室ビリーブの臨床で大切にしている8つの柱に基づいて提案したものです。
<子どもの育ちに必要な8つの柱>(発達支援教室ビリーブ編)
@ 身体を意識する力
A 目と身体を使う力(視覚−運動系)
B 耳と身体を使う力(聴覚−運動系)
C 記憶する力
D 模倣する力
E イメージする力
F 概念形成の力
G 協調性・社会性の力
実際には,子どもたちのためにもっと多くの課題を準備する必要があるでしょう。本著の例を参考にしながら,指導者の皆さん自身が1人ひとりの子どもに合わせた課題を発案していただければ幸いです。
さらに,本著では特に以下の点に力を入れています。
1.どの課題も段階的に行えるよう配慮をすることで,障害の程度や種類にとらわれず,どのようなタイプの子どもにも使えるようにした。
2.できるだけ身近で手に入る(あるいは,作成可能な)教材を用い,すぐに取り組めるようにした。
3.他著ではあまり取り上げられていないが,子どもの育ちをサポートするのにとても有効である「聴覚―運動系」の課題を積極的に設けた。
4.「課題ができるようになればよい」という狭い考えではなく,子どもと指導者が共にプログラムを行う中で成功体験を積み重ね,感動を共有しながら,互いの関係性が育っていくという視点を重視した。
最後に,前著『子どもの豊かな世界と音楽療法』『子どもの世界をよみとく音楽療法』(共に明治図書出版)に引き続き,執筆にあたり貴重なアドバイスをいただいた発達支援教室ビリーブ副代表の藤江美香さん,ならびに執筆を支えてくれたビリーブのスタッフに心よりお礼申し上げます。
また,本著の出版を勧め,温かく熱意あるご援助をくださった明治図書出版の佐藤智恵さんに心から感謝の意を表します。
2008年11月 /加藤 博之
しかも、ステップアップとして、同じ課題でもこうすると難易度があがる、といった紹介があるのがいいです。
遅れのある子どもはひとつのことができるようになるのに時間もかかるので、似たプログラムの中で少しずつ変化させて(難易度をあげて)力をつけさせたいので…。