- まえがき
- 第1部 理論編 効果的な幼小連携活動を生み出すために
- @ 小1プロブレムとは何か/ A 問題の背景にある現代的課題/ B 幼稚園・保育所教育と小学校教育の違い/ C 幼小連携の充実を図る
- コラム 「楽しいと痛くなんかないんだよ」
- 第2部 実践編 効果的な幼小連携活動プラン
- @ 入学当初の支援・指導プラン8
- @ 問題の整理/ A 支援プラン/ B 支援・指導のポイント
- (1年生の困り感から)
- [1] どこに何があるかわからない―視覚で工夫を―
- [2] 何をしていいかわからない―絵カードと時計を使って―
- [3] 学校は疲れる―校内環境の工夫を―
- [4] 友だちとのかかわり方がわからない―入学当初は友だちづくりから―
- [5] 不安感が大きい―入学への期待感を―
- (教師の困り感から)
- [6] 教師の言葉が通じない―信頼関係を築きましょう・言葉の使い方に気をつけて―
- [7] 幼稚園・保育所の様子がわからない―話し合いシートの活用を―
- (保護者の困り感から)
- [8] 子どもと学校の様子がわからない―きめ細かな連絡・丁寧な対応を―
- A 年間計画プラン4
- @ 活動内容の紹介/ A 年間計画/ B 活動のポイント・配慮点
- [1] 生活科を核とした「協同的な学び」年間計画プラン―「協同的な学び」を幼稚園からつなぐために生活科年間計画を見直す―
- [2] 生活科と「他教科との関連」年間計画プラン―「他教科との関連」をふまえて生活科年間計画を見直す―
- [3] 幼小交流年間計画プラン
- [4] 幼小連携生活科年間計画プラン
- B 接続期に行う幼小連携活動・授業プラン7
- @ 活動内容の紹介/ A 活動のねらい/ B 幼小連携教育(移行期)における本時の位置づけ/ C 指導計画/ D 交流活動・授業案
- [1] 年長組(幼稚園)/12月〜3月ごろ
- わたしもやりたい! サッカーあそび
- [2] 年長組・1年生/10月
- いってみよう,やってみよう―おおね公園へいっしょにいこう―
- [3] 年長組(保育所)/11月
- 食育カルタであそぼう
- [4] 1年生/6月 【国語・算数】
- あいうえおであそぼう+いくつといくつ
- [5] 1年生/6月 【国語】
- おちた,おちた,何がおちた?
- [6] 1年生/6月 【生活】
- はなをそだてよう
- [7] 1年生/6月 【道徳】
- いっしょにあそぼう―友だちになるために―
- C 低・中・高学年で行う幼小連携の交流授業プラン12
- @ 活動内容の紹介/ A 活動のねらい/ B 幼小連携教育(移行期)における本時の位置づけ/ C 指導計画/ D 交流活動・授業案
- [1] 年中組・年長組・2年生/7月 【生活】
- ちびっこフェスティバルを楽しもう
- [2] 年長組・2年生/10月 【生活】
- さつまいもを掘ろう
- [3] 年長組・2年生/9〜10月 【国語・図工・体育】
- ダンスをおどろう
- [4] 年長組・3年生/6〜7月 【国語・音楽】
- ふしつきの読み聞かせを楽しもう
- [5] 年長組・3年生/7月 【図工】
- ダンボールランドにしょうたいしよう
- [6] 年長組・4年生/6月 【図工】
- えのぐであそぼう―みんなのギャラリー―
- [7] 年中組・年長組・5年生/9月 【総合的な学習の時間】
- プルタブを集めよう,車椅子を体験しよう
- [8] 年中組・年長組・5年生/5〜12月 【総合的な学習の時間】
- イネをそだてよう―ひと粒の種からお米パーティーまで―
- [9] 年中組・年長組・5年生/11月 【総合的な学習の時間】
- ミニコンサートでなかよくなろう
- [10] 年中組・年長組・6年生/6月 【総合的な学習の時間】
- 6年生といっしょにあそぼう
- [11] 年中組・年長組・5年生・6年生/6月 【特別活動】
- お話のせかいを楽しもう
- [12] 年中組・年長組・全学年/7月 【特別活動】
- ボール送りゲームをやってみよう
- あとがき
まえがき
「小1問題」「小1プロブレム」なる言葉が登場しておよそ10年になります。真新しい大きなランドセルを揺らしながら登校する小学1年生の目の輝きは,今も昔も変わらぬものと思います。ところが校舎内での生活や教室での授業が始まる中で,子どもたちの様子にしばしば「異変」がおこっていくようです。
授業中でもかまわず席を離れて歩きまわる子
無言のうちに絵本を寝ころびながら読み始める子
教師の話には興味も示さず,ノートへの落書きに夢中になる子
友だちから貸してもらった消しゴムを平気で投げ返したり投げ捨てたりする子
「いやだ。やりたくない!」と大きな声で叫ぶ子
急に「ばかっ!」と言いながら隣の子に手を出す子…
担任教師はそれぞれの子どもへの対応に追われ,授業どころではなくなってしまいます。もちろん,ふだんから学級生活上の大事なルールについて根気強く説明し,必要なときはしっかりと注意も繰り返しているというのですが,一向に効き目はありません。こうした状態が連日のように続く中,教師もやがては疲れ果ててしまうといいます。
しかし,こうした状況が生まれることを「子どもが変わった」と嘆いたり,「自由保育」や「家庭の教育力低下」のせいだと非難したりしてみても,なんら問題の解決にはなりません。しかも,そうしたとらえ方は事実とも異なり,かえって問題の本質から目を背けることにもなりかねません。なぜ,「小1プロブレム」が生まれるのか。どのようにしていけば,子どもの姿が変わるのか。私たちはこうした問題状況を冷静に受け止め,むしろ幼小の保育・教育のとらえ直しと両者の連携を進める好機として,子どもと保護者と教師という三者の立場をふまえながら,原因の究明と問題解決に通じる具体策を考案していく必要があります。
本書は,日ごろから前向きに幼小連携の実践研究をされてきた先生方とともに,この問題に対する真の対応を図るための具体的な方法について紹介した本です。しかも連携活動プラン集として,子どもたちの思いとともに教師の願いも大切に汲みながら,理念ばかりに終始しない,明日の実践に生かすことのできる具体的な交流・授業事例を紹介することを通じて,日々実践現場で奮闘されている先生方への「支援の書」となることを目指して編集されています。
今,教育実践の場は多忙さを増すばかりです。そうした状況にあって,多くの先生方が日々子どもたちとともに落ち着いて安心できる関係を築き合い,保育や授業・学級づくりにもっと専念したいと願っておられます。そうした思いをもつ先生方のもとで,本書が幼小交流連携活動を通して生まれる,穏やかで確かな保育・教育の実現に役立つことを願っています。
編著者 早稲田大学教育・総合科学学術院教授 /小林 宏己
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- 明治図書