著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
幼小連携活動で豊かな人間関係の構築を!
早稲田大学教育・総合科学学術院教授小林 宏己
2009/6/12 掲載
  • 著者インタビュー
  • 学習指導要領・教育課程

小林 宏己こばやし ひろみ

教育方法学(授業研究論、教師教育論)。東京学芸大学大学院教育学研究科修了。国公立小学校教諭、東京学芸大学助教授、教授を経て現在早稲田大学教育・総合科学学術院教授。各地の教育委員会や研究指定校と共同して、幼・保から小・中の連携・一貫教育の推進にあたっている。多数の著書があるほか、小学校社会科及び生活科の教科書(教育出版)編集委員等も務める。

―本書では小1プロブレムを克服する幼小連携活動プランが紹介されていますが、そもそも小1プロブレムはどのような原因で生まれるものなのでしょうか?

 家庭や地域の教育力の低下、特に子育て環境が悪化し、周囲の人々と豊かな関係を築いていく経験などが不足するなかで、親子ともども不安感やストレスを抱えざるをえない社会背景があるようです。もちろんこうした子どもたちを柔軟に受けとめきれない、保育所・幼稚園の保育と小学校の教育の間にある環境・文化・制度の段差も大きな問題ですね。

―そのような小1プロブレムに対して、幼小連携の活動はどのような効果があるのでしょうか。

 連携交流活動を経験しながら、幼保園の子どもたちは小学生に憧れや信頼を寄せ、小学生は相手への慈しみを示すとともに自らの自信も深めるようです。本来あるべき豊かな人間関係が築き直されるなかで、安心感や生きる前向きさが生まれていくのではないでしょうか。

―小1プロブレムが生まれる時期である入学当初の支援にはどのような観点が必要ですか?

 先生方にはまずなによりも子ども目線で考えてほしいのです。幼保園から小学校に入学してくる子どもたちに、小学校の教育環境がどう映るかということです。空間の構成、時間の流れ、先生方の雰囲気等、子どもたちは安心して、落ち着いて過ごすことができるようになっているかという観点です。

―幼小連携活動を実施する際の年間指導計画プランは、どのようなことをポイントにして作成すればよいでしょうか?

 幼稚園教育要領と小学校学習指導要領の双方で連携の大切さが述べられています。具体的には、定期的に幼保園と小学校の先生方がよく相談しあい、小学校生活科を軸にしながら、他教科・領域と合科・関連的に柔軟な指導計画を構想してほしいですね。すでに行ってきている地域との交流活動があれば、それらを上手に活用することもよいでしょう。

―最後に、全国で幼小連携活動に取り組まれている先生方に、一言お願いします。

 まず子どもの側に立って発想・構想することが大事です。次に周囲の教職員、保護者や地域の方々との連携を図るということ。協働の精神です。そして最後に、こうした取り組みを進めるなかで、教師としてのあり方、生き方を柔軟に、より穏やかに変化させ、その視野と見通しを広く豊かにしていくということ。あわてず、あせらず、じっくりと取り組んでほしいと思います。教師自身にも安心と自信が生まれるように。

(構成:湯浅)

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