- はじめに
- 第1章 事例で学ぶ! 支援が必要な子どものサポートガイド
- 01 視覚障害のある子ども
- [事例1] 先天性盲と肢体不自由等を伴う重複障害のAくん
- [事例2] 自分から動けない弱視のBさん
- 視覚障害のある子どもの理解と支援
- 02 聴覚障害のある子ども
- [事例3] 聞こえない大人として立派に育ててほしい聴覚障害の子どもたち
- 聴覚障害のある子どもの理解と支援
- 03 ダウン症の子ども
- [事例4] 合併症がなく,元気で明るい頑固なDさん
- [事例5] 合併症を発症した人懐っこくて,やさしいEさん
- [事例6] 歌と踊りが大好きな明るいFくん
- ダウン症の子どもの理解と支援
- 04 筋ジストロフィー症の子ども
- [事例7] 地域の小学校から支援学校中学部へ入学してきたGくん
- 筋ジストロフィー症の子どもの理解と支援
- 05 医療的ケアの必要な子ども
- [事例8] 医療的ケア等の配慮が必要な発達初期段階のHさん−自立活動の指導から−
- [事例9] 医療的ケアが必要なIくん
- 医療的ケアの必要な子どもの理解と支援
- 06 てんかん発作のある子ども
- [事例10] てんかん発作のあるJくんとの出会い
- てんかん発作のある子どもの理解と支援
- 07 レット症候群の子ども
- [事例11] レット症候群のKさん
- レット症候群の子どもの理解と支援
- 08 知的障害のある子ども
- [事例12] 家庭環境が複雑だったLくん
- [事例13] 他傷傾向のあるMくんの行動理解に向けて
- 知的障害のある子どもの理解と支援
- 09 肢体不自由の子ども
- [事例14] 待つことの大事さを教えてくれた中途障害のNさん
- [事例15] 重度脳性まひのOさんとコミュニケーション
- [事例16] 脳性まひのPさんと電動車いす
- 肢体不自由の子どもの理解と支援
- 10 病気の子ども
- [事例17] 「院内学級」に通う小学校1年生のQさん
- [事例18] 原籍校の卒業式に参加した小学校6年生のRさん
- [事例19] 高等学校進学のSさん
- 病気の子どもの理解と支援
- 11 遺伝性疾患のある子ども
- [事例20] プラダー・ウィリー症候群のTさん
- 遺伝性疾患のある子どもの理解と支援
- 12 不登校の子ども
- [事例21] 自閉症スペクトラム(ASD)の特性があるUさん
- 自閉症スペクトラム(ASD)の特性がある不登校の子どもの理解と支援
- [事例22] 起立性調節障害のVくん
- 不登校の子どもの理解と支援
- 13 学習障害(LD)のある子ども
- [事例23] ぺルテス病のほか,学習面の困難を抱えていたWさん
- [事例24] うまく話せない中学校1年生のXさん
- 学習障害(LD)のある子どもの理解と支援
- 14 アスペルガー症候群の子ども
- [事例25] 中学校2年生のアスペルガー症候群のYさん
- アスペルガー症候群の子どもの理解と支援
- 15 自閉症スペクトラム(ASD)の子ども
- [事例26] 行動面や対人面に課題のあるZさん
- 自閉症スペクトラム(ASD)の子どもの理解と支援
- 16 非行傾向のある子ども
- [事例27] 知的障害のある対人トラブルが絶えないaくん
- [事例28] 衝動性が高く対人トラブルを繰り返すbくん
- 支援が必要で非行傾向のある子どもの理解と支援
- [事例29] 自信喪失で不登校になった全日制高校生のcさん
- [事例30] 妊娠で進路変更した定時制高校生のdさん
- [事例31] 多くの非行を続けた専門学科高校生のeさん
- 非行傾向のある子どもの理解と支援
- 第2章 心によりそう! 保護者や兄弟姉妹のサポートガイド
- 01 支援を必要とする子どもをもつ保護者の心情と願い
- [事例32] 知的障害のあるfちゃんの保護者
- [事例33] 自閉症スペクトラムのあるgちゃんの保護者
- 02 兄弟姉妹の心情と支援について
- [事例34] アンジェルマン症候群のお兄さんとhさん
- 支援を必要とする子どもと兄弟姉妹の理解と支援
- 03 行政,関係機関,支援機関の役割について
- 執筆者紹介
はじめに
教師は長年,学校現場で教育に携わっているとさまざまな子どもたちとの出会いと別れがあります。その出会いと別れのなかで特に印象に残り,その教師にとってその後の教職を続ける際の人生観やその後の行動などに大きく影響を及ぼすことなどは私のつたない経験と多くの教師仲間から受けた印象です。
過去,勤務した学校園で何らかの支援を必要とする子どもや障害や病気のある子どもたちとの出会いのなかで,ある場面で障害そのものに対する偏見や無理解からくる差別的な事や指導のまちがいなどに遭遇したことがあります。このことを糺して理解と適切な支援や指導に向けていくことは障害のある子どもを教育する教師を目指す学生にとって必要です。今後のインクルーシブ教育を推進していく際にもすべての教育関係者に,つたない私たちの経験とそこで培ったノウハウを伝えたいという思いです。
現在,大学で教職を目指す学生の指導をするなかで思うことは,実際に障害のある子どもや不登校等を含め何らかの支援を必要とする子どもたちとの実際的なかかわりをもてている学生とそうでない学生に差が出てきていることでもあります。教師になるための介護体験実習や教育実習で初めて何らかの支援を必要とする子どもや障害のある子どもと出会う学生がいます。これらの体験はかつての小・中学校,高等学校という自分が置かれていた立場と違った視点で子どもたちとの接し方を経験する機会を得るのでありますが,そのことから学生にとって自分の今後の進路としてのキャリアをどうするかの岐路でもあるといえます。
現在の大学での講義科目では座学で多くのことを学びます。しかし,子どもたちの実際の生活や学校現場でのさまざまな成長発達に向けた教師の奮闘や保護者の悩みなどが浮かび上がることは少ないのです。学生はもとより教師になって初めて出会う子どもの障害名や指導に困惑し,子どもの理解に悩み,どのようなかかわりや指導をすることが適切なのかなど未知な部分が多く,戸惑いの様相を浮かべる者が多いのに気づきます。よく質問されることばに「どのように指導したらいいのか」「どのようにかかわったらいいのか」ということがあります。指導は教師にとって必要不可欠なことであることは言うまでもありませんが,目の前にした子どもとのかかわりは,まずその子どもの理解と支援を必要としている一人ひとりの子どもを知ることから始める必要があります。本書では,先人や先輩,同僚たちが出会った子どものなかから理解と指導に当たって孤軍奮闘した内容を紹介できればと思います。単に文献上だけの理解に留まることなく,直接かかわった先生の奮闘事例によって生きた人間教育の証しなどを抽出できれば,今後の教育活動に生かされるのではないかと考えます。
近年,学校教育現場においては世代交代が大きく動いています。団塊世代以降の経験者の大量退職や初任者をはじめとする経験の浅い教員の大量採用時期を迎え,障害のある子どもへの教育に対しては,従来から培ってきたノウハウや指導の在り方などを次世代につないでいくことの重要性が叫ばれています。筆者はこの間,いくつかの著書を発刊させていただきましたが,今後インクルーシブ教育システムをどう構築していくかという命題に対して,すべての教師に改めて一人ひとりに応じた個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成による指導・支援の在り方,カリキュラムマネジメントの在り方,授業の工夫や指導展開の方法などが重要視されてきていると思います。
特別支援教育を推進していく際に重要となる,障害のある子どもの理解を深められること,教育実践における子どもの特性や,実践においての成功例や失敗例などから学びを深めること,授業の工夫や改善の在り方に資すること,障害のある子どもをもつ保護者や兄弟姉妹への支援の在り方にも視点を当てた内容から,障害児者の人権,障害の理解,指導・支援の方策を学んでいただけたら幸いです。
平成30年7月 編著者代表 /須田 正信
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- 明治図書
- 教室にいる児童が目に浮かび、具体的な内容でわかりやすい。2018/9/1660代・小学校管理職