- はじめに〜子どもたちに言葉の力を
- T 知っておきたい国語科「発問」の基礎基本
- 1 発問とは
- 2 国語科の授業における発問の特質
- 3 良い発問・良くない発問
- 4 発問づくりの周辺
- U 発問づくりの基礎基本
- ─低学年の場合
- 1 低学年における発問
- [1] 言葉のキャッチボール型発問
- [2] イメージと身体表現とを結びつけた発問
- [3] きめ細かな補助発問
- 2 「おおきなかぶ」を例に
- A 読み合いによる読みの深まりや広がりに重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @お話には誰が出てきましたか
- Aおじいさんはかぶのたねをまいてからどんなふうに世話をしたのでしょうか
- Bおじいさんは何と言っておばあさんをよんできたのでしょうか
- Cよばれたおばあさんはどんなことを思ったでしょうか
- Dかぶをひっぱるときの「うんとこしょ、どっこいしょ」を動作で表しましょう
- Eまごは犬、犬は猫、猫はねずみをよんできたのは、どうしてですか
- Fかぶがぬけたとき、おじいさんたちはどんなことを言ったでしょう
- G様子や気持ちが分かるように音読しましょう
- Hおじいさん、おばあさん、まご、犬、猫、ねずみになって劇をしましょう
- I好きな場面を絵に描き、感想を書きましょう
- [3] 各発問の背景
- B 言語事項を押さえ読む技能に重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @お話には誰が出てきて何をしましたか
- A「あまい、あまいかぶになれ。おおきな、おおきなかぶになれ」はどのように読んだらいいですか
- B「とてつもなくおおきなかぶ」はどうしてできたのですか
- C「うんとこしょ、どっこいしょ」はどのように読んだらいいですか
- D「ところが」を違う言葉に言い換えてみましょう
- E「まだまだ」「まだまだ、まだまだ」「それでも」はどう違いますか
- F「やっとかぶはぬけました」の「やっと」にはどんな気持ちが込められていますか
- Gこのお話のあらすじを書きましょう
- H六人の登場人物を新しく考えて、自分だけの「おおきなかぶ」をつくりましょう
- Iお話発表会をしましょう
- [3] 各発問の背景
- 3 「たんぽぽのちえ」を例に
- A 読み合いによる読みの深まりや広がりに重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @「たんぽぽのちえ」と聞いてどんなことを思い浮かべますか
- A挿絵を並べかえて、たんぽぽが変わっていく様子を話しましょう
- B意味の分からない言葉や、使い方が難しいと思う言葉を見つけましょう
- C読んで初めて知ったこと(!)、不思議だと思ったこと(?)は何ですか
- Dたんぽぽは、たねを太らせるために、どんな工夫をしているのでしょうか
- Eなぜ、たんぽぽはたねを太らせるのでしょう
- F花が枯れてからのたんぽぽはどんな様子ですか
- Gたんぽぽは、どのようにしてたねを遠くまでとばす工夫をしているのでしょう
- Hなぜ、「たんぽぽのちえ」という題名なのでしょう
- I「たんぽぽのちえ絵本」をつくりましょう
- [3] 各発問の背景
- B 言語事項を押さえ読む技能に重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @挿絵を見て気づいたことを発表しましょう
- A挿絵を見たときに予想したことと比べながら読んで、感想を書きましょう
- Bいつのことか分かる言葉を見つけて、順番に並べましょう
- Cたんぽぽの様子の分かる言葉を見つけて、順番に並べましょう
- D「しぼむ」と「すぼむ」、「ぐったりと」と「ふわふわと」の違いを考えましょう
- E「らっかさんのように」「せのびをするように」の言葉からどんなことが分かりますか
- F文の終わり方で、ほかと違うところを見つけましょう
- Gわけをたずねる文と、わけを書いている文を見つけましょう
- Hたんぽぽのちえと、ちえをはたらかせるわけをまとめましょう
- I好きな植物や動物について調べて、「たんぽぽのちえ」のような説明文を書いて絵本をつくりましょう
- [3] 各発問の背景
- (コラム こんな発問をしてみたい) 「お手がみ」
- V 発問づくりの基礎基本
- ─中学年の場合
- 1 中学年における発問
- [1] 安心して発言できる発問、多様な意見を出し合える発問
- [2] 発問を多様に組み合わせる
- 2 「ごんぎつね」を例に
- A 読み合いによる読みの深まりや広がりに重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @「ごんぎつね」を読んで、どの場面のどんなところが印象に残りましたか
- Aごんはどんなきつねだと思いましたか
- Bごんが見たものやごんが思ったことを地図にしながらまとめてみましょう
- Cごんの思ったことがどのように書かれているか調べて、つぐないをするごんの気持ちについて考えてみましょう
- Dどうしてごんは兵十と加助の後をつけていったのでしょうか
- E兵十のかげぼうしをふみふみ行くごんの様子を想像して、どう思いますか
- Fごんはなぜ「その明くる日も」兵十の家に出かけたのでしょうか
- G「ごん、おまいだったのか、いつも、くりをくれたのは」と言ったときの兵十の気持ちを考えてみましょう
- Hお話の最後が「青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました」で終わっているのはどうしてだと思いますか
- I「ごんぎつね」のお話の中で、一番心に残ったところはどこですか。また、それはなぜですか
- [3] 各発問の背景
- B 言語事項を押さえ読む技能に重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @「ごんぎつね」という題名からどんなことが思い浮かびますか
- Aごんぎつねはどんなきつねでしょうか。また、どんないたずらをしたのでしょうか
- Bごんは兵十にどんないたずらをしましたか。いたずらをしているときのごんの動きを表す言葉を探しましょう
- C二場面を読んで、ごんが見たものや聞いた音を探してみましょう
- D「おれと同じ、ひとりぼっちの兵十か」とごんはどこから兵十を見てそう思ったのでしょうか。なぜ、そこから見ていたのでしょうか
- Eごんは兵十のためにどんなつぐないをしましたか。どうして、そのつぐないを続けようとしたのでしょうか
- F四場面と五場面とを比べて読み、ごんの行動の同じところと違うところを調べてみましょう
- Gどうしてごんは「うちのうら口から、こっそり中へ」入ったのでしょうか
- H兵十が見たこと、したこと、思ったことを順番にまとめてみましょう
- I「目につく」「目を落とす」という言い方は、どのように言い換えることができますか。また、その他の慣用句を国語辞典を使って集めてみましょう
- [3] 各発問の背景
- 3 「花を見つける手がかり」を例に
- A 読み合いによる読みの深まりや広がりに重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @題名からどんなことを想像しますか
- A文章全体を段落番号を振りながら音読して、だいたいの内容を読み取りましょう
- B文章を読んで、初めて知ったことや感心したこと、ほかに知りたくなったことなどをノートに書きましょう
- C一番めの実験に使うために、どうしてたくさんのもんしろちょうを用意したのでしょうか。また、どうして「生まれてから花を見たことのないもんしろちょう」を放したのでしょうか
- D二番めの実験では、どうしてプラスチックの造花を使うことにしたのでしょうか
- E三番めの実験では、どうして四角い色紙を使ったのでしょうか。また、どうしてもんしろちょうは「赤い花は見えないらしい」と日高先生たちは考えたのでしょうか
- F「もんしろちょうは色によって花を見つける」ということが、どうして日高先生たちは分かったのでしょうか。一番めから三番めまでの実験の進め方をそれぞれ短くまとめて説明してみましょう
- G一番めから三番めまでの実験は、実験する順番を入れ替えられるでしょうか
- H「考え方のすじ道を立てて」実験や観察をしたことはありますか。また、こんな実験や観察をしてさぐってみたいことはありますか
- Iこの文章の学習を終えて、一番心に残った文はどこですか。それは、なぜですか
- [3] 各発問の背景
- B 言語事項を押さえ読む技能に重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @文章全体はいくつの段落からできていますか。番号をつけながら読んでみましょう
- A「疑問」(問いかけ)の文はどれでしょうか。何段落にありますか
- B日高先生たちはいくつの実験をしましたか。また、それぞれの実験は何段落から何段落に書かれていますか
- C一つめの実験でどんなことを調べたのでしょうか。次のことを読み取ってノートにまとめてみましょう。また、この実験に名前をつけてみましょう
- D一番めの実験のまとめを参考にして、二番めの実験についても次のことを読み取ってノートにまとめましょう。また、この実験に名前をつけてみましょう
- E一番めの実験や二番めの実験のまとめを参考に、三番めの実験についても次のことを読み取ってノートにまとめましょう。また、この実験に名前をつけてみましょう
- F筆者の主張は何段落に書かれていますか。また、筆者の主張を短い文で表してみましょう
- G文章全体の構造を図に表しながら考えてみましょう
- H「とぶ/とんでいく」や「集まる/集まってくる」の表現効果の違いを考えてみましょう
- I「花を見つける手がかり」の文章全体を次のように短くまとめて紹介することにしました。これまでの勉強を生かして、( )に入る言葉を考えましょう
- [3] 各発問の背景
- (コラム こんな発問をしてみたい) 「おにたのぼうし」
- W 発問づくりの基礎基本
- ─高学年の場合
- 1 高学年における発問
- [1] より深く考えさせる
- [2] 議論を生み出す
- 2 「大造じいさんとがん」を例に
- A 読み合いによる読みの深まりや広がりに重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @題名から分かることや想像できることは何ですか
- A残雪と大造じいさんはそれぞれ冒頭部分でどのように語られていますか
- B「今年も」から始まって何年間のことが書かれていますか
- Cそれぞれの年の大造じいさんの作戦とそれにかける思いをまとめましょう
- D印象的な場面の描写を理由とともに抜き出して発表しましょう
- Eそれぞれの場面で大造じいさんは残雪にどのような思いを持ったでしょう
- F大造じいさんはなぜ残雪をねらっていたじゅうを下ろしてしまったのでしょう
- G作品のはじめとおわりでは大造じいさんの残雪に対しての思いはどのように変わりましたか
- H最後の言葉と残雪を見守る姿から大造じいさんの心情を想像しましょう
- Iこの作品に対する感想をまとめましょう
- [3] 各発問の背景
- B 言語事項を押さえ読む技能に重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @「大造じいさんとがん」という題名からどのようなお話を想像しますか
- A冒頭部分の四段落を読み、残雪と大造じいさんについて書かれていることをまとめましょう
- B今年、その次の年、また次の年のそれぞれの年の大造じいさんの作戦とその結果をまとめましょう
- C場面の様子や大造じいさんの心情が想像できる情景描写を抜き出しましょう
- Dオノマトペや色などの表現が使われている部分を見つけて、その効果を考えましょう
- Eはやぶさとの戦いの場面で残雪はどのような鳥として語られているのかまとめましょう
- F大造じいさんは何にどうして心を強くうたれたのでしょう。自分の考えをまとめましょう
- G最後の大造じいさんの言葉はどのような気持ちを込めてどのように音読すればよいでしょう
- H残雪を見守る大造じいさんの気持ちを言葉にして書いてみましょう
- Iこの作品に対する感想をまとめましょう
- [3] 各発問の背景
- 3 「平和のとりでを築く」を例に
- A 読み合いによる読みの深まりや広がりに重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @全文を読んで一番印象に残ったことを発表し合いましょう
- A原爆ドームについて知っていることを出し合いましょう
- B冒頭部で語られる「わたし」の思いは何でしょうか
- C写真を見ながら物産陳列館についての感想を出し合いましょう
- D写真を参考にしながら原爆の被害について書かれていることや知っていることについて出し合いましょう
- E原爆ドーム保存反対の人たちの気持ちを考えてみましょう
- F原爆ドームが保存され、世界遺産に登録されるようになった経緯についてまとめましょう
- G結論部分と関連させながら題名に込められた筆者の思いとは何か考えましょう
- H筆者は被爆者なのでしょうか
- Iこの文章を読んでもっと知りたいことがあれば調べてみましょう
- [3] 各発問の背景
- B 言語事項を押さえ読む技能に重点をおいた発問構成
- [1] 主発問10
- [2] 主発問10の解説
- @原爆ドーム、あるいは原子爆弾について知っていることを発表し合いましょう
- A形式段落に番号をつけながら全文を読み、感想を簡単にまとめましょう
- B原爆ドームが建設されて現代に至るまでの歴史をまとめましょう
- C二つの写真を見て感じたことを出し合いましょう
- D原爆の被害について書かれていることをまとめましょう
- E原爆ドームが世界遺産となったことの意義を考えましょう
- F形式段落を六つの大きな段落に分けましょう
- G題名や結論部分などを中心にして筆者が読者に強く訴えたかったことを考えましょう
- H筆者の様々な表現の工夫を発見しましょう
- I筆者の訴えに応えるようにしてまとめの作文を書きましょう
- [3] 各発問の背景
- (コラム こんな発問をしてみたい) 「注文の多い料理店」
- X 子ども・授業・発問をめぐって
- あとがき
はじめに〜子どもたちに言葉の力を
授業の主人公は、いうまでもなく学習主体である子どもたちである。だが、子どもたちだけで授業が成立するかといえばそのようなことはない。自明のことである。子どもたちがいて、子どもたちを指導する教師がいて、そして、子どもたちが学ぶ材料すなわち教材(学習材)がなければならない。
いや、この三者はたいていすでに揃っているはずである。問題はその先だ。
子ども、教師、教材、この三つがぽんと教室に存在しても何も動き出さない。動き出すこと、すなわち学習活動が始まるきっかけがなければならない。そのきっかけをつくるのは教室という空間に集められた子どもでもなく、物質としての教材でもない。教師である。
教師が何らかの行動を起こすことによって教室において授業が動き出す。子どもの教材を媒介とした学習が始まる。そのとき教師が起こす言語的行動が指示であり発問である。
もちろん子どもがある教材に接することによって自然と活動を始めるということがないわけではないが、それとてその教材と子どもを触れ合わせるのは教師の役目である。
何を今さら当たり前のことをと思われるかもしれないが、この基本的な授業の前提がおろそかになってはいないだろうか。教師の言葉で子どもたちは学びを始めるのである。その「ことば」を例えば忙しさにかまけてよく考えず授業に臨んではいないだろうか。
角度を変えてみよう。確かに何か言えば子どもはそれなりに動く。しかし、その動きが本当に学習になっているだろうか。言い換えれば、その動きは動きのための動き、活動のための活動でしかなくなっているのではないか。そこでは、教師は指示のみを与え、動くことそのものにこれぞ主体的な活動であると満足していないか。
いくつかの乱暴な問いではあるが、自分自身の授業を振り返るときこのような反省が浮かぶ。
では、子どもたちのための教師の「ことば」すなわち発問をどう考えればよいのか。考えるとはつくり出すことである。発問が教師の授業の言葉全てではないにせよ、発問をどうつくるかは授業構想の柱である。
授業を国語科に絞ってみよう。国語科の授業は何のためにあるのか。学習指導要領には目標が示されている。また、時代状況によって様々な要求が出されてもくる。しかし、それらの「揺れ」をひとまず横において一言で言ってしまうならば、子どもたちが「ことば」(日本語)を学ぶためにあるのだ。言葉の力をつけていくためにあるのだ。言葉の力をつけるとは、まさに人格の形成に資することである。
そのための国語科の授業で、はたして子どもたちは言葉を学んでいるのだろうか。言葉の力をつけているのだろうか。
授業に対する先のいくつかの問いを国語科という教科に向けるならば、このような問いになってくるだろう。
国語科における発問とは何なのか、有効な発問はどのようにつくり出していけばよいのだろうか。そして、それを考えることはすなわち子どもたちのより豊かな日本語の力を育むことにつながるはずである。このような思いで企画編集したのが本書である。
初任者を意識した書名ではあるけれども、経験年数には関係なく、これから新たに授業に臨むための、よりよい発問をつくっていくための、一つの材料となれば幸いである。
/木下 ひさし
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- 明治図書