ハッピー先生のとっておき授業レシピ
“この教科の授業はこうでなくちゃ…”と決めてませんか? ハッピー先生がそんなあなたの授業観を大転換!
ハッピー先生の授業レシピ(12・最終回)
教育の現場に絶対という方法はない
ゆったりとした気持ちで指導に当たる
大阪市立千本小学校教諭金大竜
2013/5/25 掲載
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 そうしているうちに、両手で「ありがとうございます」と言いながら受け取る子が出てきます。そこですかさず、「すばらしいねぇ!」と言います。しかし、その子が後ろに渡すとき、片手や無言で渡していたら、残念ながら没収です。「後ろの子にも、『どうぞ』がいるよね。残念…」。こんなふうに楽しみながらプリントを配ります。
 こういうことを楽しみながらやっているうちに、プリントの配り方、受け取り方も変わっていきます。もちろん、掃除道具やハサミなど何か他のものを渡すときにも両手で渡すようにします。

ゆったりとした気持ちで

 他にも、子どものいすが出しっぱなしだったり、靴がきっちりそろっていなかったりしたら没収し、その子が気付いたら、「えっ、あぁ、出しっぱなしやったから、もういらんのかと思ってさ」と言って返してあげます。
 このように、しかるのではなくちょっと楽しみながらやっていれば、子どもたちもだんだんと自分でできるようになっていきます。廊下を走っている子がいたら、「へぇ〜、廊下走らしたら日本一やなぁ!」と言ったり、ポケットに手を突っ込んでいたら、「うわぁ〜、ポケットに手入れんのうまいなぁ!」と言ったりすれば、わざわざ大きな声を出してしからなくても、子どもたちはそのことを意識するようになります。
 こんなふうに、できるだけ事を構えず、ゆったりとした気持ちで子どもたちと向き合って指導に当たりたいなあといつも思っています。

揺るぎない思い

 子どもたちと向き合うと言えば、学校生活には本当に山ほど子どもたちを指導できる場面があります。それらを一つひとつ取り上げていたらキリがありません。だから、目の前の子どもたちの状態を見て、まず何からできるかを常に考えながら実践していくことが大切だと思います。
 また、教育の現場に絶対という方法はないと僕は思います。人間の歴史が始まってもう何万年も経つのに、そうしたものは見つかっていません。それなのに、教師生活10年ちょっとの僕がそんなものを見つけられるとは到底思えません。
 僕は、子どもたちによくこのように話します。
 「もし、あなたがこれをやれば絶対伸びる、倖せになるという方法を先生が知ってるのなら、迷わずそれをします。でも、そんなものはこの世にはない。だから、先生もあなたのおうちの人も、どうすればあなたがすてきな人になっていくのか、どうすればよいのかと迷いながら教育しています。だから間違うこともあります。失敗することもあります。そんなときは謝ります。でも、1つだけ揺るぎない思いがあります。それは、先生がみんなのことを心から愛しているということです
 教師だって、迷いながら、時には不安な思いを抱いてやっています。万人に通用する完璧な指導方法もありません。でも、だからこそ、いろんなことを学び、少しでも完璧に近づくように自分磨きをしていく必要があるはずです。

金大竜きむ てりょん

1980年生まれ。
「日本一ハッピーな学校をつくる」ことを夢みる、教師歴11年目の大阪市小学校教員。周囲からは“ハッピー先生”と呼ばれている。
教育サークル「教育会」代表。「明日の教室」をはじめ、各地のセミナーで講師を務める。
また、「あいさつ自動販売機」など、型にとらわれない個性的な実践が注目を集め、様々なメディアで取り上げられている。
ブログ「日本一ハッピーな学校をつくろう」において、日々の学級での出来事や実践を配信中。
2012年4月に、『日本一ハッピーなクラスのつくり方』(明治図書)を刊行。

(構成:矢口)