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この度、先生は数ある実践の中から国語教育に的を絞った『大森修国語教育著作集』を12巻、発刊されました。
国語の力の低下です。『国語の力』という本が出版されているくらいなのですが、若い人にはなじみがない言葉かも知れません。読解力も作文力も低下していますね。思考力で言えば、論理的な思考が低下しています。論理的な思考が出来なければ、コミュニケーションの力も低下するわけです。コミュニケーションでは、要約する力が必要なわけですが、これもまた、低下していますね。向山型国語を目指す教師がこれらの力を子どもにつけるために奮闘しているのが望みですね。
発問の定石という名称の名付け親は、樋口雅子編集長です。だれがしても、一定の範囲で子どもの考えが同じくなる発問のことです。
向山洋一さんが登場するまで、考えられなかったことです。向山さんの発問を追試して分かったことです。言葉を検討させるから同じになるんですね。検討するということは、言葉の意味の精密コードをつくることなので、同じくなるわけです。ということは、それまでの国語の授業は、何をしていたのかということになりますから、反響が大きかったですね。
定石化を目指すということは、二つの意義があります。ひとつは、先ほども述べたように、国語の力を子どもにつけることになるということです。もうひとつは、指導法を教師の共有財産にすることができるということです。発問の定石化は、向山さんの実践から生まれていますから、授業の組み立てまで含まれています。授業技量検定でいうとC表のレベルということになります。これは黒帯ですよね。
授業技量検定で有段者の方の授業は定石化されていると考えても間違いではないですね。こうした意味で、授業技量検定を目指している多くの教師がいることはまさに、希望の星ですね。
西郷先生は国語教育誌で連載をされていました。私が向山さんと出会うまでは、西郷さんの理論が一番納得の行くものでした。授業は違和感がありましたが、理論には学ぶべきことが多かったですね。特に、視点論は目から鱗でした。
大西先生は、国語ではなく集団作りで影響を受けていましたね。後で、知るのですが江部満相談役が全生研の事務局長をしていたのだと知って驚きました。それからですね、大西さんの国語教育に関心を持ったのは。特に、説明文の指導で悩んでいたのでそちらを集中的に勉強しました。「ひとつの花」の分析にも驚かされましたね。
宇佐美先生の著書を読んで猛反発したのです。パリの日本人学校から帰国したときのことです。その際に、親友から「おかしいのは、お前の方だ」といわれたので、「そうかな」と思ったのです。新潟大学の斉藤勉さんがサークルをしていたので、参加をさせていただきました。そこで『授業にとって「理論」とは何か』を輪読したのです。それ以来、宇佐美先生の著書を手当たり次第に読みまくりました。はまったのですね。いまでも、宇佐美先生の著書は座右の本です。若い教師には、最近出版されている問題意識集をぜひとも読破してほしいと思っています。教師の国語の力を鍛えてくれる絶好の著作集ですからね。
向山さんの著作集は、宝の山です。なぜ、宝の山でしょうか。教育実践が総体として提示されているからです。ですから、あらゆる切込みができるのです。
その際に、是非とも考えてほしいのが、読書量です。向山さんのように読めるようには絶対なりません。断言できます。ですが、何を読んだのかの一端は示されているのです。向山さんが情報として、最近読んだ本を紹介してくれます。これがまた、すごい。自分では探せ出せないような本ばかりです。読んで見るとこれがまた、すごい。世界が変わりますね。
勉強は一生という意味が、実感として理解できますね。
ありがとうございました。